短編 | ナノ


▼ 医務室のある1日〜マダムの考察



わたくしはマダムポンプリー。医務室で生徒の怪我の治療に当たっております。
今日も朝から怪我をする生徒が多くて医務室は大忙しですわ。


午前中、まだ授業も始まっていないのに、早速怪我をした子達がやってきました。医務室では常連ですが、ウィーズリー兄弟ですわ。この子達はいたずらばっかりするんですの。
医務室の常連さんなんて褒められたものではないのですよ?足を怪我したみたいですが、これくらいならすぐに治るでしょう。わたくしは足に薬を塗ると、授業に出るように言いました。
双子って怪我をする所まで一緒ですのね。どこまで仲が良いのでしょうか。

「マダム、でもこの怪我では授業に出ることは無理だよ」

双子が嬉しそうに聞いてきますが、そうは問屋が下ろしませんよ!わたくしはきっぱりと言いました。

「いいえ、これくらいの怪我なら、わたくしの薬ですぐに良くなります!授業を休みたいからって口実にしてはいけませんよ!」

と言い、双子を医務室から追い出しました。
…まったく、怪我を休みの口実にするなど、とんでもないですわ!



その後、クィデッチで玉突き事故があったらしく、観客も巻き込み大勢の怪我人が出たようで、沢山の生徒が医務室にやってきました。皆傷を負っていて、骨折している子もおりましたからかなり薬を使ってしまいました。

痛み止めの薬が残り少なくなってきましたわね。わたくしも調合したいのですが、今日はそんな時間はなさそうですわ。困りましたわね。いつもですと、わたくしがたいていの薬を調合するのですが、生徒がこんなに沢山いては難しいですわ。せめて助手でもいれは良いのですけど。
しかたありませんわ、セブルスにお願いしてみましょう。今日は授業もないはずですから、彼なら何とかしてくれるでしょう。

昼食の時にセブルスに頼んでみましたが、しぶしぶといった感じで引き受けてくれました。この子は昔っから愛想がないんですのよ。
でも、良い子だということは知っております。いっつも眉間にシワを寄せて不機嫌そうにしているものですから、誤解されるのです。

けれど、あの子がこのホグワーツに来てからというもの、セブルスの以外な一面を見ることができましたわ。
そう、レイですわ。アジアから来たと聞きましたが、とても可愛らしい子で、何故かとってもセブルスになついているんですの。
あの子には彼の本当の優しさがわかるのですね。


この間なんて、血相を変えたセブルスが医務室にあの子を抱えてきたことがありました。
セブルスがグリフィンドール生を、しかも抱えてくるなんて本当に驚きましたわ。
でも本当に酷い怪我でしたから、彼が慌てるのも分かりました。
わたくしの薬では対応できなかったので、セブルスに調合を頼もうと思ったのですが、頼まなくても自ら調合してくれたのでわたくしは本当に驚きました。あの子のことをとても心配しておりましたしね。
高熱を出して寝込むあの子のそばにずっとついておりましたわ。心配そうな顔をして。
本当にあんなセブルスが見られるなんて、長生きはするものです。



午後はちょっと患者がすいたので、大好きなココアを飲みながらそんなことを思い出していましたら、また怪我をした生徒がやってきました。
マダムフーチにつれられて、ネビル・ロングボトムがやって来ました。それと、レイも。
あんなに酷い怪我が治ったばかりだというのにまた怪我をして!わたくしはカンカンに怒ってしまいました。レイもしゅんとしておりましたが…。一応反省はするのですね。

ネビルの方は手首の骨折だったので、薬を飲ませて杖を振れば後は安静にしていれば良くなります。ロングボトムに今日1日は安静にするように言って寮に戻らせました。
問題はレイの怪我ですわ。診察してみたところ、脱臼しているようです。話を聞くと箒から落ちたネビルを助けようとして、あんなに重い子を片手で捕まえようとしたというではありませんか!なんて無茶をするのでしょう、しかも初めての飛行訓練の授業で!わたくしは呆れてしまいました。助けたいという勇敢さは汲んだとしても、無茶ですわ。

しかし困ってしまいましたわ。先程ネビルに医務室にあった最後の痛み止めを飲ませてしまいましたから、痛み止めはもうここにはないのです。この子ったら痛がらないものですから、こんなに酷い怪我をしていたなんて気が付きませんでした。
セブルス、薬を作ってくれているでしょうか。さきほどお願いしたばかりですからね。
ふくろうを呼び寄せて手紙を送りましたところ、暖炉からセブルスがやって来ました。
…煙突ネットワークを使うなんて、よっぽどこの子のことが心配ですのね。




セブルスはちゃんと痛み止めを作ってくれたようで、さっそくレイに飲ませてくれました。
仲が良さそうですわね、セブルスがスリザリンではない生徒とこんなに親しげに話をするのを始めて見ましたわ。わたくしは笑ってしまいました。もちろん嬉しくてですわよ?
そのあとセブルスに整復を手伝ってもらいましたが、痛み止めを飲んだとはいえ、やはり痛むのでしょう、レイはセブルスに縋りついて泣いてしまいました。
まあ、セブルスったら背中を撫でていますわ!驚きですわね。
そしてそっと、壊れ物のようにベットに寝かせると涙をぬぐっておりました。


…信じられませんわ!わたくし、夢でもみているのでしょうか?


「しばらく痛むだろうから、勝手とはいえ薬の中に少量の眠り薬を配合したのだが…事前に言うべきでしたな」

とあの子の寝顔を見ながらセブルスはわたくしに言ってきました。

「そのようなこと、お気になさらずとも良いのですよ。それよりもお薬の調合ありがとうございました。セブルスが本当にこの子を大切に思っているのがよく分かりましたわ」

と言うとセブルスはちょっと顔色が良くなっていましたわね。こういう時は照れているのです。わたくしにはわかります。

「我輩は、ただこやつの保護者であるダンブルドア校長に頼まれておりますゆえ仕方なく…」

と言い訳を言っておりましたが。

「はいはい、そういうことにしておきましょうか」

と返事をするとセブルスは面白くない顔をしておりました。



それからセブルスはしばらく心配そうに医務室におりましたが、痛み止めの薬の調合をしなければならないため部屋に戻って行きました。
わたくしはこの子の保護者であるダンブルドア校長にふくろう便で手紙を送っておきました。
前回この子が怪我をした時は、校長は魔法省に行っておりましたが今回はホグワーツにおりますからね。知らせるべきでしょう。


しかしそれにしても先程のセブルスの行動には驚きましたわ。きっと彼は無意識に行動しているのでしょうが…。わたくしには隠してもバレバレですわよ。
セブルス、わたくしは偏見などございませんわ。あなたが本当に大切に思える人と巡り合った事に…わたくしは本当にうれしく思っておりますのよ。
このことはぜひ校長に言わなくてはなりませんわね。すやすやと眠るレイを見ながら、わたくしはとっても嬉しい気持ちで一杯になりました。


この子が何処からやってきたにせよ、きっと神様の思し召しに違いありませんわ。


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