短編 | ナノ


▼ 穴があったら入りたい?!

それは新学期が始まる前のこと。

朝の鍛錬を終えた私は、ホグワーツの中を探検しようと思い立った。だって広いし。探検するにはもってこいだ。
おじいちゃんは何だか忙しそうだしね。たぶん私のことで魔法省と交渉しているんだろう。ごめん、おじいちゃん。
スネイプ教授も、新学期の準備で忙しそうだしさぁ。
私は肖像画の夫人と話したり、ホグワーツに住んでいるゴーストたちと交流したり、あちこちを歩きまわって探検した。



やがて動く階段の前にやってきた。ふわ〜、これが例の動く階段か。映画とそっくりだな。登ったり降りたり、何だか複雑…。
階段を登って色々な場所を見に行った。
本当に広いなホグワーツって。掃除とかどうしてんだろう。そんなことを思いながらあちこちと見てまわったけど、探検しすぎてお腹が空いて来た。そろそろ夕食の時間だ。もう帰らないと。スネイプ教授が部屋に迎えに来るんだった。
急いで階段を降りていたその時!ふっと浮遊感を感じあれって思ったら私の身体が、階段に埋まった…?


え、なんで?ここって階段のはずなのに。
両足とも嵌まってしまって何とか抜けようとしたけど抜けない…。ま、間抜けすぎる…。


『うわ〜ん!どうしよう抜けないよぉ!誰か助けてよ!!』


思わず日本語で叫んだが当然誰も通らない。だって学期前だし。
今このホグワーツに居るのは教授他先生だけ。じたばたしてみたけど、抜けないものは抜けない。


や ば い 


これって地味にピンチなのでは?
まだ大ボスと対面していないのにもうゲームオーバー?私は必死になってもがいた。


…教授、助けて〜!




*****




机に向かって書類を書いていたのだが、ふと、誰かに呼ばれたような気がして我輩は手を止めた。

「何だ?」

時計を見ると夕食の時間が差し迫ってきているのがわかった。
我輩は一旦羽ペンを置くと部屋を出て、カンザキの部屋へと向かった。部屋をノックするが返事がない。扉を開けるが中にカンザキはいなかった。
どこへ行ったのだ?まだ一人では大広間にも行けぬはず。ホグワーツは広いからな。まさか探検などと言って迷子にでもなっているのではなかろうか。

…あいつならやりかねん。

我輩はため息をつくと、カンザキを探しに行った。肖像画の夫人にカンザキを見なかったかと声をかけてみると、案の定見かけたと言っていた。
ホグワーツを探検していると言ったらしい…後で憶えておれ。



*****




何とか一人で抜けないかともがいているうちに、ズボンが脱げてきてしまった。やばい、今ひょっとして私半ケツ状態?教授に助けてほしいけど、今来られると困る〜!
この穴深いみたいで、腰の上まで埋まっちゃってるんだもん、中々抜け出せないのだ。
しかし、こんな所で死にたくはない。
もう、全部ズボンが脱げようがどうだっていい。必死になって抜け出そうとしていたその時、

「……このような場所で何をしているのだね?」

スネイプ教授の静かな声が聞こえてきた。私は下を向いていたので教授が近づいてきたことに気づかなかったのだ。

「あ、スネイプ教授良かった〜!実は暇だったのでホグワーツを探検しようと思ったら穴に嵌っちゃって抜けなくなっちゃったんです」

てへって感じで教授に言ったら…教授、何でワナワナ震えてるの?

「こんの、大馬鹿者!!何をやっているのだ!ここは遊園地ではない。ホグワーツなのだぞ!大広間への行き方も分からないお前が探検などと…浅はかにも程がある!」

うわ〜ん怒鳴られちゃったようだって暇だったんだもん教授かまってくれないしさみしかったんだよとは言えない…私はしゅーんとしてしまった。
教授はは〜とため息をつくと手を差し出してきた。

「ほら、Mr,カンザキ捕まりたまえ」

ってどうしよう嬉しいんですが私今半ケツなんですぅ〜。ものっそ恥ずかしい。いくら今男の身体でも、半ケツは恥ずかしい。
私が赤くなってモジモジしているのを見て、不思議に思った教授が聞いてきた。

「どうしたのだね?」

恥ずかしいなぁ。でもちゃんと言わないとなぁ。

「…あの、実はもがいているうちにズボンが脱げてきちゃって…半分以上脱げかけてるんです。穴の中でよくわからないと思うんですけど…」

ひゃー恥ずかしい。
私が羞恥心に耐えながらそう言うと、何だか教授が固まっていた。え…教授?

「あの…教授?」

と声をかけると教授ははっと我に返ったようで、目線を彷徨わせていた。

「それは…困ったな。…では我輩は目をつぶっておるゆえそれでよかろう」

と言ってくれた。
教授、やっさしい!やっぱり英国紳士だね!

「ありがとうございます!ではお願いします」

そう言うと私は教授に腕を伸ばした。教授も手を差し出して、引っ張りあげてくれた。
すぽっと階段から身体が抜けて私は教授に倒れこんだ。教授がしっかりと支えてくれる。

「我輩は目をつぶっておるゆえ、早くズボンを穿け」

教授のその言葉に、私は慌ててズボンを上げると、教授を見た。
教授はちゃんと目をつぶっていてくれていた。目をつぶっている教授って、初めて見たかも。
いっつも目力がものすごいから目をつぶっていると不思議。何だか無防備で、教授の普段みれない脆さみたいなものが見えてきそう。
思わずじーっと見ていると、

「終わったのかね?」

と聞いてきた。
あわあわ私ったらそんなに見つめてた?

「はい、教授もういいですよ!」

と声をかけると教授が目を開けた。…いつもの教授だ。なんか残念。すごーく残念。
だからってもう一度半ケツになるつもりはないけど。

「さて、それでは夕食に向かうぞ。誰かさんのおかげで食いっぱぐれてはかなわんからな」

と言ってきた。うう、すいません。




夕食のあと、部屋に戻ろうとした私は教授に捕まり罰則を受けることになってしまうのでした…って教授!まだ学期も始まってないし、私どこの寮かもまだ決まってないのに〜!!


(フン、我輩を心配させた罰だ!:スネイプ教授)


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