短編 | ナノ


▼ バレンタインの誘惑


もうすぐバレンタインだ。元の世界にいる時は、恥ずかしながら恋人なんかいなかったし、好きな人はセブルスだったからチョコを渡す相手もいなかった。

でも今年はね、恋人ができたんだもんね!これは是非渡さなくっちゃなるまい!何にしようかな。今年は絶対、教授に私のありったけの愛を込めて作ってあげるんだもん。私はある夜、寮の部屋で勉強を終えた後、ノートを取り出してリストを作った。

当たり前だけど本命はセブルス!それから、いつもお世話になっている人にはチョコをあげよう。ハリーとかロンとか…おじいちゃんも!それからそれから、どんなチョコにするか、デザインはどうするかで私は夜遅くまでノートとにらめっこしたのでした。



次の日、やっとリストを作り終えた私は、ふくろう通販でチョコを大量に購入。ラッピングセットもね。夕食の頃には例によってヨタヨタとふくろうが私の元へ飛んできた。もう届いたんだ。ふくろう通販エクスプレスって早!私は包みを受け取ると寮に持ち帰った。中身を確認しないと。
中身はちゃんと注文した通りのチョコの塊だった。ラッピングはここに置いといてチョコの塊をバックに忍ばせて厨房へと向かう。早くしないと。固める時間とかも考えてもう今日作った方がいいかもしれないもんね。


 
厨房に着くと屋敷しもべ妖精が忙しく働いていた。君達いつ休んでるの?私はこの間、クリスマスのプレゼントの準備の時にお世話になったしもべ妖精が働いているのを見かけた。そう言えば名前、聞かなかったな。何て言うんだろ?私は近くにいたしもべ妖精に尋ねた。

「ねえ、ちょっといい?仕事中にごめんね。あそこで働いているピンクのエプロンを付けている子って、お名前何て言うのかな?」

するとしもべ妖精はきゃっと言って物陰に隠れると、そっと頭を出してきて小さな声で答えてくれた。

「ミアでございます、ご主人様!」

いやあのご主人様って…何だそれ。私は苦笑すると、

「そうなんだありがとう。僕の名前はレイっていうんだ。ご主人様じゃなくって次からはレイって呼んでね!」

私がそう言うとまたきゃっ!と叫んで物陰に隠れてしまった。いやだからさ私は野獣じゃないっての。も〜しょうがないな。私はミアに向かって歩いていった。

「ミア、お仕事中にごめんね。またちょっとお料理したくって、ここの厨房を少し貸して欲しいんだけど…だめかな?」

私がそう言うとミアは恥ずかしそうにしていたが、

「もちろんですご主人様!どうぞお使いになってください!」

と言ってくれた。…いやだからご主人様じゃなくってちゃんと名前で呼んでくれ。どっかの喫茶店かここは。
私は苦笑するとさっきのしもべ妖精へ伝えたことをもう一度伝えるのだった…。



よっし作るぞう!私は腕まくりをすると、チョコを刻み出した。しもべ妖精達が何事かと遠巻きに見ている。もっと近くに来ればいいのに。

「どうしたの?もし良かったらもっと側に来てよ。今、バレンタインのチョコを作ってるんだ」

私はそう言いながらチョコを刻んだ。するとミアを初め数人のしもべ妖精達がやって来て、珍しそうに見ている。

結構長い時間をかけてチョコを刻み終えると、次は湯せんで溶かす作業に入る。おっとその前に型を準備しとかないとね。私は急いで型を並べると湯せんでチョコを溶かした。う〜んいい香り♪焦がさないように溶かすと、型に流し込む。型にはアーモンドを入れてある。これが旨いんだよ。全ての型にチョコを流し込むと、冷蔵庫のような食料を冷やす場所が厨房にあったので(あれは冷蔵庫というのだろうか?よくわからないが)そこに入れさせてもらう。

さ〜て次はね、大本命の教授のチョコだよ〜!
教授ってば甘い物は苦手みたいだから(前回クリスマス編で調査済み)またビターチョコにしたのだ!私の気持ちみたく、大きなチョコにしょっかなあ〜と思ってるんだけど、う〜ん実はまだ悩んでるんだよね。
私はふと思い立って、ミアに意見を聞いてみることにした。

「ねえミア?実はさ、甘い物が苦手な人にチョコをあげようと思ってるんだ。一応ビターチョコを買ってきたんだけど、何かいいアイデアないかな?」

ミアは意見を求められたことに驚いているようだった。でももう叫んで物陰に隠れたりはしなくなっていた。きっと少しは慣れてくれたんだろう。

「あ、あの…甘い物が苦手な方でしたら……チョコにお酒を入れるのはどうでしょう?」

おずおずとだけど教えてくれた。あ〜ウイスキーボンボンみたいな?

「ああ、ウイスキーボンボンみたいなやつ?でも僕、リキュール系は買ってないんだよね…」

そのアイデアはいいな、と思ったけど、リキュールがないんじゃあどうしようもないよ。残念、という思いを滲ませてミアに言うと、ミアはにっこりと笑って、

「大丈夫でございますよレイ様!ここは厨房です!リキュールなど沢山ございます!ちょっとお待ち下さい!」

そう言うとミアは風のようにどこかへ行ってしまった。そしてすぐに戻ってきた。リキュールを持って。って早!
それからミアにウイスキーボンボンの作り方を教えてもらいながら仕上げていった。教授のチョコを作ることでしもべ妖精達ととっても仲良くなる事ができた。良かった。それに教授…このチョコ、喜んでくれるかな?次の日ラッピングをしながら、私はニコニコしていたのだった。




そしてバレンタイン当日。日本のようにうかれ野郎はいない。こっちの方では女性が男性に贈るっていうんじゃないんだもんね。どっちかってゆーと男性が女性に贈るっていうか、お世話になっている人に贈るっていうか、贈り物もチョコに限られてはいないし。
でもいいんだもん!そこに愛はあるのさ〜!私は1日うきうきしていた。そんな私を見て皆は不思議そうにしていた。ハリーが聞いてくる。

「ねえ、レイ、どうしてそんなに機嫌がいいの?」

あ、わかっちゃった?ではまずはハリーから。よーし、君に決めた!

「あのね…これ、よかったら受け取って?昨日作ったんだ!今日はバレンタインデーだろ?いっつもお世話になってるもんね!」

笑顔付きでチョコレートを手渡す。ハリーはびっくりしてるみたいだった。

「あ、ありがとう、驚いたよ…」

受け取ってくれたよ。嬉しいな。側にロンもいたのでロンにも渡す。ロンもとても喜んでくれた。うん、子供は皆チョコが大好きだもんな。あれ?ハーマイオニーは?聞くと部屋に行ってしまったらしい。そーですか。では届けに行きましょう。

談話室へ行くと、そこにはハーマイオニーと同室のラベンダーが丁度いた。あ、良かった。私今男だから、女の子の部屋にはいけないもんね。呼び出してもらおう。

 「あ、ラベンダーちょっといい? あのさ、ハーマイオニーを呼んでくれないかな?部屋にいるって聞いたから…」

私がそう言うと、ラベンダーはちょっと驚いていたがハーマイオニーを呼びに行ってくれた。するとハーマイオニーが階段から降りてきた。

「どうしたのレイ?何か用事があるって聞いたけど…」

ハーマイオニーはハテナって顔をしてる。
私はチョコを取り出すと、

「これ、良かったら貰ってくれない?今日はバレンタインデーだろ?日頃お世話になっている人にあげてるんだけど…ハーマイオニーにもぜひ受け取って欲しいんだ」

僕の手作りだけど、と言いつつ渡すと、ハーマイオニーは顔をほんのり赤らめていた。可愛いなぁ、ハーマイオニーってば。

「まあ、レイありがとう!とっても嬉しいわ!」

そういって受け取ってくれた。うん、良かった!



その後色んな相手にチョコを配って歩いた。もちろん校長先生にもね!おじいちゃんは髭をゆらして喜んでくれた。マクゴナガル教授や、ハグリットも。そしてそして私の一番大好きな人…セブルスにはこれから届けに行く所だ。あ〜ん緊張してきたよぅ。

「甘い物は好かん」

とかいって受け取ってくんなかったりして。

はは、もしそうだったら私立ち直れない…。

教授の部屋へ行ったのは夜になってからだった。だって万が一誰かに見られたら困っちゃうもんね。ま、地下室はいっつも誰も居ないけど。
教授の部屋に行くと、教授はいつものように机に向かって書類を書いていた。

「レイ、どうしたのだね?」

私が教授の近くに行くと、筆を休めて聞いてくる。ああ、初めて大好きな人にあげるんだよ、緊張してきた。胸がどきどきする。私が頬を染めて両手を後ろにしているので、教授はどうしたのだ?って顔をしている。もう、教授わかんないの?

「セブルス、今日は何の日でしょう?」

どきどきしながら聞いてみる。
教授は眉間にシワをよせて考えていたが、

「今日はハッフルパフのレポートの提出期限の日だ。…ちなみにもう締め切ったので受付は不可だが」

と言ってきた。な〜んて色気のない返事。もしかして本当に判ってないのかも。もう、しょうがない人。でも私はそんな貴方が大好き。
私は苦笑すると、

「今日はバレンタインデーですよう!セブルスまさか、本当に忘れていたんですか?」

と言うと、教授ははっとした表情をしていた。やっぱ忘れてたのね。まあいいけど。
私は後ろ手で持っていたチョコを教授の目の前に差し出した。

「じゃーん!これ僕からセブルスに…手作りですから、型はちょっと不恰好かもしれませんけど、気持ちはしっかりばっちり込めてきました!」

教授は驚いていたみたいだけど、受け取ってくれた。ああ、良かった拒否られたらどうしようと思っていたんだよね。

「我輩にか?…すまんな、いただこう」

そう言うと教授は私に、

「開けても良いか?」

と聞き、私が笑顔でもちろん!と言うとそっと包みを開けた。中にはミアと一緒に作ったボンボンが入っている。ううう、どきどきの瞬間。

「ほう、ボンボンか」

そう言うと教授は杖を振って紅茶を出してくれた。

「飲んでいきたまえ」

そう言うとボンボンの包装を外してチョコを食べた……。表情が読めない。ひょっとして美味しくないのかな。

 「……甘さ控えめですな。我輩の好きな味だ」

教授がそう言ってくれる。本当?う、嬉しいかも!良かったミアのアドバイスを聞いておいて。私はえへへと笑うと紅茶を飲んだ。ああ、教授の紅茶は今日も美味しい。

「良かったです。僕ほらお酒に弱いから…味見ほとんど出来なかったんです。だから、お酒が強すぎないか、甘すぎないか心配だったんですよ」

そう言って教授を見ると、教授はボンボンを手にとって眺めながら言ってきた。

「…レイも味見するかね?」

「駄目ですよ。それはセブルスに食べてほしくってあげた物なんですから。セブルスが食べてくれないと意味がないんですよ?」

私は両手を振って教授に言ったけど…あれれ?どうして教授ってば私の隣に来るの?

「遠慮することはなかろう…とても良い出来だ。ぜひ味わいたまえ」

教授はそう言うとボンボンの包装を外して私の口に入れようとした。え?そう?じゃくれるんなら貰っとこう。そう思って口を開けたら……教授ってば自分の口に入れちゃったよ。え?教授ったらお子様ですかそんなお預けって…そう考えた私が甘かった。もー大甘。


教授は素早く私にキスしてきたのだ。


も〜教授!味見ってそっちかい!教授が私の歯を割って舌を絡めてくる。そして口の中一杯に広がるチョコレートとリキュール。もうチョコを味わうなんて余裕なんかないって。私は教授を押し返そうとするけど、教授はしっかりと私を抱きしめるとソファーに押し倒してきた。

「んんっ……はあっ……セブ…だめ…んっ…はあっ…もぉ……いいってば…ぁんっ」

何とか止めさせようとするんだけど、またもや延々とキスをされてしまう。もう口の中にはチョコなんてない。それなのにキスは終わらない。…も〜私酸欠になるってば。
やっと開放してもらった頃には、私はぐったりしてしまった。目はとろんとしている。これ、リキュール入りなんだよね。酔っちゃったかも。でもそれは教授のキスにかもしれない。
教授はもう一度ついばむようにキスをすると、ニヤリと笑い、

「お味はいかがな?」

と聞いてきた。もう、教授のエッチ。

「…すっごく甘いです、セブルス」

私はそう言うと教授の肩に手をまわした。見てろ〜!いっつもやられっぱなしじゃないんだから。

「もっと下さい…味見じゃ足りないです」

そう言って教授の唇を人差し指でなぞった。ふふん、私だってこれくらいできるもんね……ってあれ?どうして私を抱き上げるの?そして教授が私を抱えて向かう先には寝室が…。私はサーっと青ざめた。
私、もしかして煽っちゃった?

「ちょっとセブルスどこ行くんですか!」

焦って教授の腕から逃れようとするけど無理!しっかりと抱えられちゃって駄目〜!教授は不敵な笑みを浮かべながら、

「もちろん“もっとあげるため”に適した場所へ向かうのだ…」

私のおでこにキスをしながら教授はさらに言った。

「今日はバレンタインデー…愛を誓う日であろう?」



そんなあ〜!


その日レイは、一晩中セブルス・スネイプ教授の部屋に文字通り縛り付けられてしまうのでした。



(って教授!私まだお子様だって言ってるでしょお?!)
(…フン、お前があんな方法で誘惑してくるから悪いのだ!)


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