短編 *裏 | ナノ

6 ナイトクルージング



私達が船上の人になるとすぐ、クルーザーは港を出発した。
夜の海の中、マンハッタンの夜景が美しく輝いている。全てが幻想的で、私はうっとりとしてしまう。

「綺麗だろう?今日は二人きりで…ナイトクルージングだよ」

「素敵ねアラン…ありがとう!」

「フフ……どういたしまして」


微笑み合い、どちらからともなくキスをする。長い間離れ離れだったから、軽いキスは、どんどん深いキスに変わった。

「ん…っ……」

いつになく情熱的なアランのキスに、私の方が先にギブアップしてしまいそう。縋るようにアランを抱きしめると、彼はキスを止め、私の額に彼の額をくっつけ、甘く囁いてくる。

「君の唇……この感触、久しぶりだ……」

「アラン…」

吐息が頬にかかる。アランの瞳が、キラキラと輝いていて……私の胸はさらにときめく。

「ずっとこうしていたいけれど……まずはディナーといこうか。君にイブニングドレスを着てもらったし、ね…」

アランはいたずらっぽい顔でそう言うと、私の手を引いてテーブルまでエスコートしてくれた。


「そのドレス、凄く素敵だね…勿論、中身はもっと素敵だけど!」

席に着くとそんな台詞をいう彼に、私は嬉しさと恥ずかしさで爆発しそう。

「アランだって…とっても素敵!タキシードなんて、授賞式以外で着てるの見るの初めて……カッコイイ…王子様みたい…」

頑張って、思っていたことを告白すると、アランは恥ずかしそうに笑ってきた。

「もうオジサンだよ…私は……」

「私には王子様だもの」

「レイ……君って人は……」

アランが手遊びを始めた。あれって、照れている証拠なのよ?ふふ…可愛いんだからッ
二人で微笑み合っていると、給仕が前菜と飲み物を運んできた。
アランがグラスを取ると囁いた。


「二人の再会に……乾杯」

チリン、とグラスの音が響く。


大好きな人と海の上で二人きり。
ドキドキのナイトクルージングが始まったのでした。


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