短編 *裏 | ナノ

7 夜はこれから



美味しいディナーに舌鼓を打ちつつ、勧め上手なアランに乗せられて、いつもより飲みすぎてしまった。
さらに、デッキでアランとダンスをしたのが悪かったみたいで…あっという間に酔いが回ってしまった。


気が付くと、私はアランの腕の中。波の音と、アランの胸の鼓動が重なって……とっても心地良い。


「幸せだわ…」

「ああ、幸せだね……」

微笑み合いながら、再びキスをする。ワインの味のするキスは、私の官能を高めた。
淫らな音をさせながら熱く、深く絡まる二人の舌。私の弱い場所を忘れていないアランは、そこばかりを責める。
そんなことをしないでよアラン……私、キスだけでイってしまいそう……。

「……ぁ…ンンッ」

アランの手が私のむきだしの肩を撫でる。その手つきがちょっぴりいやらしいのは…アランがソノ気だってことよね?

でも待って。ちょっと待ってよ……。

「…あ…は…っ…待ってよアラン……人が見てるから…」

給仕さんとかいたでしょ?恥ずかしいから…こんな場所でそんなことをしないで…。
流されてしまいそうな感情を押し殺して、やっとのことで言った私の言葉に、アランは妖しく微笑んできた。

「見ている人なんていないよ、レイ。彼らには船を降りてもらった……」

そう言いながら、私の首筋に舌を這わせるアラン。ああ…すっごく気持ちいい…ってちょっと待って?

“彼らには船を降りてもらった……?”

それってつまり―――。

「そうだよ…私達二人だけだ。ここで、この船の上で……私達二人だけ……」

首筋に何度もキスを繰り返しながら、アランが囁く。

「パパラッチもいない…この海の上で…レイ……君を一晩中愛してあげよう…」

アランはそう言うと、私を抱き上げてきた。

「許して欲しい…今夜は、紳士ではいられそうもない。君への愛しさで……壊れそうなんだ」

アランのその台詞に、私の胸は妖しくざわめいた。壊れそうなくらいに私を思ってくれているなんて…女として、これ以上嬉しい言葉はなかったから。
だから私も言ってしまった。抑えられない気持ちのまま。

「今夜は、紳士じゃないアランで良いから……私だって、アラン…あなたへの愛しさで壊れちゃいそう……」

「レイ……」

「アラン……愛して?今夜は沢山…数えきれないくらいに。離れていた分…私を愛してよ……」

するとアランは苦笑してきた。とってもセクシーなその笑い方に、私の胸の鼓動は壊れちゃいそうなくらい鳴っている。

「君って人は…いけないレディだね。私を煽る言葉ばかり並べて……」

「あなただっていけない紳士でしょ?私を刺激するような言葉ばかり言うんだもの……」

お互いそう言い合って、笑いあう。


「夜はこれからだよ……」


アランはそう囁くと、今度は私を官能の世界へエスコートしてくれたのだった。


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