イブ 21時
レイをそっとソファーに下すと、スネイプはレイの足を真剣に見つめた。
レイはまだ夢の中。スネイプの腕の感触や、抱き上げられた時のあのほのかに香った薬草の香りにうっとりとしてしまっていたのだった。
スネイプは眉を顰める。レイの右足は、かなり腫れていたのだ。
「かなり、腫れているな…ここは痛いか?」
スネイプが右足の腫れている部分にそっと触れる。
「い、いたっ…」
あまりの痛みにレイの意識は現実へと引き戻された。
「ここは…?」
「そこも…ちょっと痛い…です……」
「ふむ……」
さりげなく足に触れながら、スネイプは考えていた。
(なんというなめらかな肌の感触なのだ……い、いかんいかん…)
スネイプは立ち上がると、歩き出した。
「少しそのままで待て」
(確か奥の部屋に、アレがあったはず……)
ぽつんと部屋に残されたレイは部屋の中を見渡した。
スネイプの部屋には、沢山の本が置いてあった。
天井まで届くほどの、大きな本棚に、沢山の本。
反対側には、天井から色々な薬草が吊るされていた。下の方には、様々な実験道具が置いてある。
いかにも薬学教授の私室、という感じだ。
(この部屋……スネイプ先生の匂いがする……)
恥ずかしそうに、頬を染めるレイ。
(足を怪我しちゃったけど、ピーブスには感謝しなくちゃいけないかも…。私だけだったら、先生の部屋の扉をノックすら、出来なかったかもしれないものね…)
そんなことを一人考えていたら、スネイプが手に何かを持って帰ってきた。
「足を見せたまえ。少し…冷たいだろうが……」
「大丈夫です……ひゃっ!」
「だから冷たいと言ったであろう」
「あ…痛みが少し引きました……。先生、これは…?」
「この薬草はメコントといってな…炎症を抑える効果があるのだ」
「そうなんですか…スネイプ先生、ありがとうございます」
「いや、礼には及ばん。……それにしても、一体何があったのだ?」
包帯を巻きながらスネイプが聞いてきた。レイは、説明した――ピーブスのことを。
「成程。その件については、我輩から校長に言っておこう」
「あ、ありがとうございます…」
「で、ときにMs,カンザキ……」
「はい、なんでしょう……?」
「我輩に用事とは、何かね?」
スネイプのその言葉に、レイの思考は凍りついた。
そう、先ほど説明した際、レイはスネイプにこう言ったのだ。
【スネイプに用事があって螺旋階段を歩いていたら、ピーブスに突き飛ばされた】
「Ms,カンザキ……?」
スネイプの言葉にはやや戸惑いがあった。
レイはゴクリと唾をのみ込んだ。やっぱり――やっぱり言わないと駄目……?
「あ、あの…っ…わ、私―――」
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