アラン・映画夢 | ナノ

8 本当に欲しいもの



君がここに居合わせることはわかっていた。

そして、その命を危険にさらすことも。


だが……私はテロリストのボス。目的のためには手段を選ばない人間。
例外など、つくれるはずもない…。





冷静な顔をして、犯行声明文を読み上げる。

目は、高木社長を探しながら、頭は、君のことを考えている。



いつもの、あのお堅いスーツを着てきているだろうか。

朝は、いつも通りあのカフェでコーヒーを買ったのだろうか。




今日は、あの男は居なかっただろう?
いいや、2〜3日前から見かけなかったはずだ。君の隣にいつも座る忌々しい男は。


あの男は永遠に君の側には来られない。





何故なら、今頃、河に浮いている筈だからな……。




高木社長と友好的な話が出来ればすぐに終わるが……おそらく、そうはならないだろう。

そうなった時、君と……もっと深く知り合わなくてはならない。
もっと、もっと深く……。



部下達が君を狙わないように目を光らせなくては、な。

酷く、魅力的な君だ。部下の中には手の早い奴もいる。


普段はそんな事、気にも留めないが……もしもメイ、君に手を出したりしたら…私は自分がどうなってしまうのか、心配だ。




正直、金などどうでも良い。
今は、金では手に入らないものが欲しい。




欲情に染まった君の瞳……あの甘い喘ぎ声をもう一度聞きたい。いや、何度でも聞きたい……。



何故君は、高木社長の姪なのだ?
どうして私達は、こんな場所で出逢わなければならない?



洒落たレストランなどではなく、犯罪現場で、など……ロマンの欠片もないではないか。


銃声と怒号、悲鳴と暴力の中でしか、君と居られないとは、な。



本当は、君とはもっとロマンチックな関係でいたかった。




そんなことを考える自分を嘲笑う。ハンス、しっかりしろ。今は女だけに現を抜かしている暇はないはずだ。


そう、計画を成功させることを第一に考えなくてはならないのだからな。

計画はあくまでも計画。上手くいかないことや、計画通りにならないことも出てくるはずだ。
部下もきちんと統率しなければならない。



私は無事に計画を遂行できるだろうか。

そして…願わくば君を、手に入れられるだろうか、メイ………。


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