2 辿り着いた先
誰かの呼ぶ声が聞こえる。
何だろう。とても、懐かしい…。その声を、私は知っているような気がした。
その低い声を―――。
「―――い、おい、起きたまえ」
「……ぅ………ん……」
徐々に、意識が戻ってくる。
どうやら私は誰かに、身体を揺さぶられているみたい。気遣うように身体を揺らしてくれているみたいだけど…。
私は目を開けた。
すると正面に、よーく見知った顔があった。
…………えーと、これは一体、どういうことで?
誰か現状を説明してください。
「目覚めたのか……良かった。しかし何故君は、あのような場所で寝ていたのかね?ミス―――」
生きてる。しゃべってる。
その低い艶のある声も、少し乱れた黒髪も、眉間のシワも、まとう雰囲気も全部同じ。
あなたはスネイプ教授……?
いやだってこれは有り得ないって!!!
私がぽかーんとした顔をしていたら、教授は眉をひそめてきた。そうしてふいに、私の額に手を当ててきたではありませんか!
ななななな?!
彫像のように固まる私に、全く気がつかない教授は、フム、と一人で勝手に納得するとしゃべり出した。
「熱は……ないな。ということはやはり、落ちたのであろうな…。まったく、君はいつもいつも…。薬を調合するので、しばし待ちたまえ…」
そう言うと教授は、私から離れてどこかへと行ってしまう。
私は大混乱だ。
だって今の台詞の中には、聞き捨てならない言葉が沢山あったよ絶対に!!
そう、それはね、以下の二点です。
@“落ちたのであろう”
A“君はいつもいつも…”
あなたは二次元のはずでしょうに。しかも面識なんてある訳ないに決まってる。
これじゃあまるで、知り合いみたいじゃないですか。
いや、できれば教授とは激しく知り合いたいけどさー。
まさか…まさかねぇ。これってあれじゃない?ほらあれ!
“トリップ”
「ははは………はぁ〜…」
笑えないってこの状況。私は頭を抱えたのだった。
(H22,11,19)