あなたに逢いたくて | ナノ


 1 強引なご招待



あなたに逢える日を毎晩夢見ていたけれど、まさか本当に逢えるなんて……。

俺様、とにかくグッジョブ!!




がやがやと、騒がしく人が大勢にぎわうここで、待ち合わせたのは間違いだったかしらね?
私はきょろきょろと辺りを見回した。こんなに大勢の人がいちゃ、どこに誰がいるかなんてわかんないわ、絶対…。




ここは映画館。

今日は、あの大人気映画、ハリーポッターの最新作が公開される日。私は休みを利用して、友人と待ち合わせて観に来ているのだけど…待てど暮らせどその友人が来ない。
まだ、開場時間まで余裕があるからいいけど。
私は携帯を取り出すと、メールがきていないか確認してみた。ひょっとしてひょっとしたらその待ち合わせをしている友達からメールでも来ているかも、と思ったのだけど。
メールは来ていなかった。


私は軽く溜め息をつくと携帯を閉じた。
私の正面には大画面。そこにはこれから観る予定の映画、ハリーポッターと死の秘法の予告編が流れている。


ハリー、ロン、ハーマイオニーも大きくなったよね……あれで17歳とか言われても違和感あるよね絶対。
私はクスリと笑った。ハリー達は一生懸命何かと戦っている…みたい。


とその時、大画面に、私の大好きな人がどアップで映った。



(きゃ〜!スネイプ教授かっこいい!いつにもまして素敵よ〜!!)



心で叫び声を上げる。だってこんな台詞大声で言おうものなら、周囲の人に変人扱いされちゃう。
「げー……スネイプって…マジで?」
とかって言われるのよね絶対。しょぼん。




私はこの日のために着てきたお気に入りのワンピースをそっと撫でた。
だって、教授にお逢いするんだもん。素敵な格好をしたいじゃない?
たとえ……スクリーンの中でもね…。


私って乙女〜!





そんなことを考えながら友人を待つのだけれど、なかなか彼女は訪れなかった。徐々に上映時間が近づいてくる。
私は次第に焦りだした。
絶対に寝坊してるんだわあの子。夜中までネットをしていたかそれとも、ゲームしていたに違いない。

あれだけ夜更かししないでって言ったのに!

もう、しょうがないなぁ。
そこで私は、携帯をもう一度バックから取り出すと、友人に電話をかけようとした。当然ながら目線は携帯に向いている。だって番号押さないと。


その時、視界の端の方から、なにやら光りのようなものが迸るのが見えた。
周辺の人たちが悲鳴を上げる。


へ?なに?

私は自然と光の方へ目をやった。それと同時だった。もの凄い衝撃が私を襲ったのは。


「きゃ〜!!」


思わず悲鳴を上げてしまう。この衝撃……これってさっきの光をあびたから?


なに?新しい演出?!


身体中に激しい痛みが走る。痛みを堪えながら見上げた大画面には、ヴォルデモート卿が映っていた。杖を持ちながら、私に向かって何かを言ってきているみたい。



『マグルの娘よ……来い、俺様の元へ……』





え?!




ちょっと待ってよ。そんな演出ありですか?
なんか凄く全身が痛いし。立っていられない。


痛む身体を支えきれずに、私は倒れこんだ―――後ろに。

衝撃を覚悟して身をすくめた私は拍子抜けしてしまう。
何故ならその衝撃は来なかったから。




っていうか落下してる?!





「ちょっとどういうことなのぉ〜?!」



真っ逆さまに落ちながら、私は叫んだ。

返事は勿論……なかったけれど。


(H22,11,19)



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