8 ちゃんと選んで!
「ねぇねぇ、セブ……これ、似合うかな?」
「……いいんじゃないか」
「じゃあ…これは?」
「……いいんじゃないか」
「こっちなんかどう?」
「……いいんじゃないか」
………セブの馬鹿。
私が何を聞いても、“いいんじゃないか”って言うの?
あなたのために可愛くなりたいって思って、洋服を選んでるのに。
あなたが可愛いって言ってくれた服を着たいのに。
馬鹿馬鹿。セブの馬鹿。
よーし見てなさいよぉ、私を適当にあしらったらね、酷い目に遭うんだから。
私は、セクシー衣装を見つけた。それを手に取ってみる。
当然ながら彼はあさっての方向を見てるから衣装を見てすらいない。
ふーんだ!
「じゃあ…これはどう?」
絶対同じこと言うんでしょ?
「……いいんじゃないか」
セブの馬鹿。
「じゃあ試着してくるね」
セブの馬鹿!着ちゃうから。そんで買っちゃうからね〜〜〜!!
怒って着替えようとしたのは良いけれど、この衣装はめちゃくちゃセクシーだった。
まず、丈がもの凄い短い。太もも2/3くらい丸見え。
それから真っ赤でキャミようになっている。それにスカートがくっついているような、そんな感じ。
胸元には薔薇の刺繍があしらってあって、背中の紐んとこに、羽が付いていた。真っ黒な羽が2枚。
これって……ハロウィーンの仮装衣装かも?セールんとこに置いてあったし。
恥ずかしいけど……でも、負けない!
セブが悪いんだもん!!
私は深呼吸をすると、ドレッシングルームから飛び出した!
「セブ、お待たせ〜♪」
すると洋服をつまらなそうに見ていたセブルスが私の方を向いた。とたんに目をこれでもかって見開き、顔色がめちゃくちゃ良くなるセブルス。
貴方がちゃんと私と付き合ってくれないから、そんな目に遭うのよ?
「な、な、な、な……なんだその衣装は!!」
「セブが“いいんじゃないか”って言ったじゃない!」
「言ってない!僕は言ってない!!」
「セブがいいって言うから……着たのに……。そんなに変?この服……」
「それは服じゃない!コスチュームだ…ッ」
「コスチューム……?」
「だ、だからそれはだな…あの……その……つまり……アレだ……」
「アレって何よ?」
セブルスが何故か酷く慌ててた。顔を真っ赤にして、変な汗出てるし。
「アレっていうのは……アレだ」
「どれよ?」
「…………もういいから、着替えろ。僕が悪かった。ちゃんと一緒に選んでやるから…それを買うのは止めろ」
「セブ……悪かったって思ってる?」
「ああ、僕が悪かった。だから早く着替えろ馬鹿!!」
セブルス真っ赤。ちょっとからかいすぎたかな?
ごめんね?教授。本気で選んで欲しかったの。私の洋服。
あんなに長く離れていたんだもの。たとえ今の貴方が少年だったとしても、私と初めて逢ったとしても、私にとっては同じことなのよ?
私のダーリンなんだものね……。
「はぁ〜い。じゃあ、着替えてくるね」
*****
なんなんだあの衣装は。シズノが着替えに行っている間、僕は頭を抱えた。
心臓がまだドキドキしている。制服を採寸した後、日常着を買いたいというシズノを適当にあしらってしまったのが悪かったんだろう。
だからって普通あんな報復するか馬鹿!
アレはナイトコスチュームだ絶対。以前、ルシウス先輩に見せてもらったカタログにあった商品だった…と思う。
モデルが着ているよりもシズノが着ている方が似合っていた……って僕は一体何を考えてる?!
僕だって男だ。あんな衣装を着て、頬をほんのりと染めて、
「セブ……お待たせ♪」
だなんて言われたらときめくだろう!
ドキドキする胸を押さえつけながら僕は思った。
シズノ、君は確かにスリザリンだな……。
(H23,07,31)