あなたに逢いたくて | ナノ


 7 ペースにのまれる



こいつは本当にもう……どうにかしてくれ。



僕は頭を抱えた。

どうして目的地にまっすぐ行かない?
あっちをフラフラ、こっちをフラフラ……落ち着きがなさすぎる。僕は溜息をついた。


「あ〜んコレ可愛くない?ねぇセブ……そう思わない?」

ショウウインドウに飾られている指輪やネックレスをうっとりと眺めるシズノ。今は遊びに来てるんじゃないんだが…。

僕はシズノの肘を引くと、ショウウインドウから引きはがす。

「シズノ……僕らは遊びに来たんじゃない。お前の杖と制服を買いに来たんだ!」

「だってぇ……せっかくセブと一緒に来たのに…」


僕と一緒に来たから何なのだというのだろう。


「最初に制服を買いに行くぞ」

「あの花束綺麗……」

「はぁ……」

僕の話を聞いているのだろうか。仕方ない。今は買い物を優先するためだ。そう、そのために言うことだ。僕は自分に言い聞かせた。

「シズノ、今度また来ればいい。今度また、一緒に来よう」


効果はてきめんだった。
シズノは目を輝かせて僕に迫ってきた。

「ホントにホント?!」

「あ、ああ…」

「私と一緒にダイアゴンでショッピングしてくれるの?!」

「ああ、一緒にな」

「ありがとセブ!私……嬉しい……」

「こ、こら抱きつくな……」

「だって嬉しいんだもん!」


シズノは抱きつき魔かなにかだろうか。
女の子にこんなに抱きつかれたことがない僕にとっては、ドキドキなのだが。


よく見ればシズノは可愛らしいし、魅力的な女の子なのだ。だからドキドキするんだろうそのせいでドキドキするはずなんだ。僕は無理やりそう結論づけた。


「ほら、じゃあ行くぞ。遅くなったら夕食の時間に間に合わなくなるからな」

「うん、セブ行こっ!」

そう言うとシズノは自然と手を繋いできた。




握ってきたその小さな手の感触に、僕の胸はさらにときめいた。

女の子と手を繋いだのはもうずいぶん小さい頃……幼馴染のリリーとだけだが、なんだかその時とは違うような気がする。
なぜならばこんな感情は湧かなかった。


守ってやりたい、などという感情は―――。



僕は本当にどうかしている……。


(H23,07,29)




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