あなたに逢いたくて | ナノ


 2 何で知ってるんだ?



「可愛らしいお嬢ちゃんじゃのぉ〜。Mr,スネイプの彼女かね?」


校長の言葉に、僕は速攻で否定する。

「校長先生違います、そんなんじゃないです!実は相談したいことがあって――おい!ちょっと待て!」

『わぁ…同じなんだぁ!不思議……肖像画も一緒……』

僕がダンブルドア校長と話そうとしたら、その子は僕の手を引きながら、なにやら理解できない言語で話しつつ、肖像画の方へと行こうとした。
僕は慌てて行動を止めると、校長に向き直る。すると校長はキラキラした目で僕達を見てきた。


……なんだか、嫌な予感がする。

「その子はホグワーツの生徒ではないようじゃな…。Mr, スネイプ、詳しく教えてくれんかの?その、相談とやらを」






僕が、にわかには信じ難い先ほどの経験を一生懸命校長へ話している間、その子はあっちを見たり、こっちを見たりと忙しそうだった。目を輝かせてとても嬉しそうだ。何故なんだろう?
校長室は確かに面白いものが沢山あるが、そういう物に対する驚きとは、少し違うような気がした。


「ほぉ〜…空から降ってきた、とな?」

「はい…」

「そしてさらに、ワシらには理解できん言語で話しておるの?」

「はい」

「Mr,スネイプ、君にはこの言語が理解できているのかね?」

「いいえ…よく、解りません…」


しばらくそんな会話が続いた。

「不思議じゃのぉ〜。実に、不思議じゃ。しかしこの子からは、危険な感じは一切しないのぉ」

「……そうですね。それは、僕も思っていました」

「それに、どうやら魔力もそこそこあるようじゃの!ということは…コレをするとしよう」

「?」

ダンブルドア校長は嬉しそうに笑うと、杖を振った。すると僕らの目の前に、真っ赤に熟れた木の実のようなものが現れた。
これを食べろということだろうか?僕は女の子を見つめた。
するとその女の子は、最初に校長、次に僕、そして木の実、そして僕、最後に校長を見てきた。忙しいなお前の目線は…。

「さぁ、これを食べるのじゃ。まずはこの世界の食べ物を食べねば、言語は理解できんからのぉ」

女の子は戸惑っているようだ。それはそうだろう。僕だったら絶対に食べないぞ、こんな怪しい代物。

「Mr,スネイプ、この子に木の実を勧めてくれんかのぉ?」

「なぜ僕が……」

「何故かは解らんが、この子は君に懐いているようじゃからの」

「そ、そんな訳ないです!」

「そうかのぉ?普通は、初対面の異性に、いきなり抱きついたりなど、せんと思うのじゃが…」

「……………」


そう言われてみれば、そうかもしれない。校長の言うことも、一理ありそうだ。
何よりも言葉が理解できなければ理由を正すこともできないのだ。僕はしばらく考え、そして決断した。


「おい、」

「?」

きょとんとした黒目が、僕を見つめてきた。
僕と同じ瞳の色をしているんだな、この子は。だが…僕よりももっと…もっと……綺麗だ……。



僕は何を考えているんだ?こんな非常時に!



僕は木の実を掴み、一口食べてみた。口の中いっぱいに甘酸っぱい味が広がる。これは……スモモ、だな。

「食べてみるんだ。大丈夫、毒なんて入ってないから……ほら……」

『食べろって言ってるの?それは構わないけど……いや〜んそれってセブと間接キッス?!セブってば大胆!!』

「……なにをクネクネしてるんだ?食べろ。た・べ・る・ん・だ!」

『いーと?わ、わかったからそんなに怒んないで!乙女の恥じらいなのに…そんなに怒んなくてもいいじゃん…。んもう、未来のあなたとはえらい違いだわね……』

?何故そんなに恥ずかしそうに睨んでくるんだ?僕はだた食べろと言っているだけなのに。
疑問に思っていると、その子は僕が握っていた木の実を掴んできた。僕は思わず手を離した。


じゃりっ


形の良い唇が開き、木の実を食べたその瞬間。
何故か、僕の胸はドキドキと音を立てだした。頬が熱くなる。

何故だろう……?


「ワシの言葉が解るかのぉ?」

それまで黙っていた校長が口を開いてきた。
すると、しばらくの沈黙の後、女の子は目を見開き、そして笑ってきた。

「はい!解りますダンブルドア校長。ありがとうございます。セブルスも…ありがとう」




何故僕の名前を?!



「知り合いなのかのぉ?セブルス」

「!ち、違います!そんな訳無いってことだって、校長は解っているはずでしょう!!」

「セブ顔真っ赤〜!」

「う、うるさい!」

「可愛い〜」

「男に可愛いなんて言うな!」

「だってぇ〜」

「はぁ………」


どうして君は、僕を見つめながら嬉しそうに笑うんだ?
そしてなんで、僕の名前を知っている?

疑問だらけだ。そして何故か、考えるとますます、自分の胸の鼓動も早くなっていくのを感じる。

ドキドキする。それになんだか……甘く痛むんだ。




もしかして…?




そこまで考え僕は速攻で否定した。そんな訳無い。僕は、僕は……。
それに、これは絶対、さっき食べたスモモのせいだ。


この胸の、甘い痛みは――――。

(H23,0717)



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