しばらく歩いていくと、大きな社があり、2人はまるで家にたどり着いたかのように

「ただいま」

と声を揃えて中へ入っていった。

広間のような所を覗くと、そこには数名のまばらな妖怪が集まって、
入ってきた2人を見ると、親しげに話をかけ始めた。

「綾ちゃん!帰ってきたの!」
「ただいま海里さん、なつさん」

最初にアヤに声をかけてきたカイリと呼ばれた女性は、白い衣を着た幽霊のようだった。
肩には、小さな猫のような者が乗っており、綾子はそっとその猫のような者に『なつ』と声をかけ、
頬を撫でるように触れながら挨拶をした。
なつは、気持ちよさそうにその手にすり寄る。

「今回の化も人間?まだ気配が残ってるね…」
「はい。せっかくなんで、なつさんにお土産です」

なつは、人間の生気を吸い取る妖怪、すねこすりのようで、
綾子は人間として化けていた名残の人間の生気を少しため、持ち帰ったようだ。

「それにしても、遅かったですね…また迷いました?」
「心配したよ綾ちゃん…」

次に声をかけてきたのは、背中に大きな鎌を持つ少女と、頭上に尖った耳を持つ少女だった。

「実は、お察しの通り迷っちゃいました…璃尾狐さん…」
「やっぱり…なぜ、拠点(家)に帰るのに、毎回迷うんですか…」
「敵対勢力に、なにかされたとか、人間に化けてて事故にあったんじゃないか…とか、心配したよ…」
「ごめんなさい琉紅さん…」

しっかりした口調で、心配を隠しながら話しかけてきた鎌を持つ少女、璃尾狐と呼ばれた少女は、鎌鼬のようだ。
一方、心配で仕方がなかったのか、少し目に涙を浮かべ、
綾子の着る着物の袖を握って話しかけてきた尖った耳を持つ琉紅と呼ばれた少女は、化け猫のようである。

「何でもいいけど遅い、迷子狸…」
「すみません亜梨ちゃん…あらら…また今日も一段と眉間にシワがよってますね…」
「誰のせいだと…」

おちょくるように、笑うように話しかける綾子に、最後に呆れたような、
心配からの不機嫌からなのか、眉間にシワを寄せる美しい女性は、
綾子に亜梨ちゃんと声をかけられた、雪女の亜梨馬だった。
どうやら、この亜梨馬がこのコミュニティーの長であり、
それを補佐するのが、先程の天狗の杏のようだった。

元は、杏が住む山だった場所に、幼い頃から共に過ごした亜梨馬がコミュニティーを作り上げた。
そこに、様々な理由で妖怪が集まり、住み着いたのは数名だけだったが、
それぞれの個性が強くはあるが、比較的平和なコミュニティーが出来上がった。

その中、化け狸の綾子は、外界からコミュニティーを守るためと、
世界の様子を知るため、得意の変化をすることで、コミュニティーに所属しながらも、
様々な場所へ放浪をすることで、情報収集をしているようだった。




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