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Ep.9 思い出






梅流「えっと、それじゃあ改めて自己紹介といこうか!」


昨日の戦いから一夜明けて、私達は再び集まることにした
場所は駅前の喫茶店
ミリィ曰く“運命の魔法少女”――数は8人
それがようやく揃ったのだ
色々とすれ違ったこともあったけど…でも、もう大丈夫
私達はしっかりと手を取って歩いていける…


梅流「私、亜門梅流!盟王学園2年B組14歳です!
えっと、パートナーは亜梨姉と一緒で猫のミリィです。よろしくね」

麻菜「伊那瀬麻菜。
皿屋敷中学3年だ。梅流とは義姉妹にあたる。
前世はどうやら“亜梨馬”という名前だったらしいが…好きなように呼んでくれて構わない」

綾子「同じく皿屋敷中学2年の大津綾子でーす!
私も前世は今と名前が違ったみたいですけど、あんまり気にしないで下さいね?
あ、ついでにこっちは使い魔の幻鬼。趣味は亜梨ちゃんをいじる事…ひゃああああっ!!怒らないで〜〜!!」

杏「聖蘭中学2年C組の樋口杏です。…一応、綾ちゃんのストッパーでもあります。
梅流ちゃん達とは幼少期からの付き合いだけど、みんなとも仲良くなれたら嬉しいな」

海里「はじめまして、榊城海里です。藤ノ宮学院2年です。
梅流ちゃんとは幼なじみってところかな?パートナーはカルア。
よろしくお願いします」

夏香「同じく藤ノ宮学院2年生の笹森夏香です!
かいりんとは親友同士で、パートナーも一緒!
私も前世は今と名前が違ったみたいだけど、こっちもあまり気にしないでいいからね」

璃尾子「鬼道璃尾子です。えっと、夜天中学に通っています。
魔法少女になったのは…成り行き、かな。でも後悔はしてません。
パートナーは黒猫の咲ちゃん」

琉来「が、岳時琉来です…璃尾子ちゃんと同じ中学で、同じクラスです。
弱くて頼りないかも知れないけど…よろしくお願いします…!」


―――と、こんな感じで自己紹介が終わった
改めてこういう事やるとちょっと照れるなぁ…

とりあえず、私達は現在知っている情報を確かめなくちゃ
そう思って皆を見ると、琉来ちゃんが暗い顔をしている
…無理もないよね
あんな事があった後だもの

―――桜雫が去った後、残されたのは小さな狼に姿を変えた銀来だった
急いで呼吸を確かめる
…生きている!妖力も微力だけどまだ健在だ
ミリィ曰く、『強い力を使い過ぎて一時的に妖力が足りなくなっている状態』だそうだ
しばらく安静にしていれば元に戻るとの事
銀来は琉来ちゃんの元で預かることになった
琉来ちゃんが用意した小さなバスケットに横たわらせると光のドームがバスケットごと銀来を囲んだ
これはどうやら彼が持つ回復能力のようだった


ミリィ『これなら安心よ。狼族の持つ守護の力はちょっとやそっとじゃ破れないわ』


だから安心してね、そう言うと琉来ちゃんは涙ながらに頷き、バスケットを強く抱きしめたのだった―――…


そして時系列は現在へと戻る
亜梨姉が琉来ちゃん達に疑問を投げかける


麻菜「お前たちを疑ってる訳ではないが…何故、銀来達に手を貸していたんだ?」


その言葉に璃尾子ちゃんと琉来ちゃんの表情が硬くなる
でも、最初に会った時みたいな怯えは見えない
ひとつの覚悟を決めたように小さく深呼吸をする


琉来「…そう、ですね。ずっと黙ってる訳にもいかないし、私はそれだけの事をしてきた…

――私は、あることがキッカケで魔導士になった。
そのキッカケとなったのが…銀来なんです

私がまだ普通の人間だった頃…偶然か、前世が魔女だった事による必然かは分かりませんが、閉鎖空間に迷い込んでしまったんです。
その時居たアルギュロスは桜雫…なんの力もなかった私は彼女のフィクシドスターに襲われそうになりました。
その時…寸での所で、銀来が助けてくれたんです。
その時、銀来は私のせいで深手を負ってしまって…」


銀来が…?
昨日、琉来が必死で言った言葉を思い出す

“助けてもらったお礼、まだしてないから…”

…そうだ
確かに琉来は、あの時そう言ったんだ


琉来「直後、私の元に希咲が現れて、私は彼女と契約を交わし、魔導士になりました。
その時は私の魔力でもなんとかなったけど…でも、銀来のことがどうしても忘れられなかった。
敵だと分かっているのに…それでも、どこか懐かしい感じがして…
それに、敵であろうと私を庇ってケガをしたのは事実だし…何より、私は銀来を憎しみの連鎖から解放してあげたかった。
神様に戻してあげたかった…
フィクシドスターを集めれば、それが叶うって、信じて…」

麻菜「だから、アイツの手助けをしてたのか…」


琉来ちゃんは黙って頷いた


琉来「でも、私だけじゃどうにも出来なくて…どうしたらいいか、解らなくて…
希咲も必死で私を止めようとしてた。
けど、私は馬鹿だからそんな言葉も聞こえなくて…
1番の友達にまで、迷惑を…」


“1番の友達”とは、璃尾子ちゃんのことだろう
琉来ちゃんの話を要約すると、自分一人では彼を救えないと理解ってしまったから彼女の力を借りる事にした、と…

―――そうか

きっと…琉来ちゃんは銀来に"恋"をしたんだ

私だったら、どうしたかな…
脳裏に南野くんの優しい笑顔が過る

あの優しい笑顔がなくなるのは…嫌だ

私はそっと琉来ちゃんの手を取った


梅流「――ううん。いいの。もういいんだよ、琉来ちゃん。

だって、私達、一緒に戦うって、あの人達を救おうって決めたじゃない。
それに…大好きな人を助けたいって気持ち、私にもわかるから」


私だけじゃない…
他にも誰かに恋をする魔法少女がいる
誰かを想う魔法少女がいる
だからこそ、その気持は痛いほどわかる
その"想い"が間違いだなんて思いたくない
だから私達は"倒す"のではなく、"救う"道を選んだ


琉来「…うん。そっか…そう、なんだ…
…ありがとう、梅流ちゃん
やっぱり、あなたは優しいね」


そう言うと琉来ちゃんは私の手を握り返して…静かに涙を零した








――――――――――――――――
――――――――




綾子「さて、と…この件について一段落ついた所ですし」


綾ちゃんがそう言って手元の鞄を漁る
なんだか、何処か楽しそう…ううん、この笑顔はちょっと嫌な予感がーー!!


綾子「『ドキッ★ロマンス全開!魔法少女だらけの強化合宿〜ポロリもあるよ〜』でも始めましょうか!!」


バーンっとテーブルの上に旅行会社のパンフレットを置く
その数、およそ10冊…
みんなさっきまでのシリアスモードから一転してボー然としている
いち早く我に返ったのは亜梨姉と杏ちゃんだった


麻菜「…っの、馬鹿ーーー!!!」

杏「空気を読みなさい綾子…大体ポロリって何!!?」

綾子「ひええ〜〜そんなに怒らないでくださいよぅ!!」

海里「ま、まぁまぁ、二人共落ち着いて…!」


怯える綾ちゃんを庇うように二人を宥める海里ちゃん
で、でも合宿ってどういうことだろう…?


綾子「魔導士も無事全員揃い、更には魔法少女っていうかプ◯キュアシリーズではお馴染みの合体魔法まで使えるようになったのでここらで全員の絆をもっと深める為に旅k…強化合宿でもいかがかな〜と思いまして…!」

璃尾子「今、完璧旅行って言おうとしたよね」

夏香「しかもメタ発言まで…」

琉来「合宿もプリ◯ュアではお馴染みだよね…」


方々からあらゆるツッコミが飛んでくる
それでもめげずに合宿について力説する綾ちゃんは凄いと思う


梅流「わ、私は良いと思うよ。確かに皆との絆ももっと深まると思うし…」

綾子「ですよねですよね!?」

麻菜「いや…お前、単に旅行に行きたいだけだろう?」

海里「でも楽しそうじゃないですか?」

杏「まぁ…たまには息抜きも必要だと思うけど…」

璃尾子「あの…この“ロマンス全開”って何?」


璃尾子ちゃんの言葉にニヤリと笑うと小さな声で言った


綾子「そりゃあ、勿論…皆さんの想い人も誘いましょうって意味ですよ♪」



梅流「え…」

「「「ええええ〜〜〜〜〜!!???」」」


お…想い人って、想い人って…!!!??
これってつまり、そういう事だよね!?
心当たりのある私や海里ちゃん達は一様に顔を真赤にして俯いてしまう




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