壱拾五 真実



――――こんな世界なんていらない
――――私に優しくない世界なんて、いらない
――――ずっと夢の城にいたい



――――だから、どうか邪魔をしないで

――――貴方を傷つけたくないから

――――貴方を、消してしまいたくないから






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――――――――





「どういう、事だ…!?」


桂の言葉に碧が掴みかからん勢いで問い詰める
ハッとして周りを見ると、皆一様に複雑な表情を浮かべていた
恐らく、先に桂からこの事を聞かされていたのだろう
まだ子供である碧達には、せめて何も知らないままでいて欲しかった…
それが違うと言えば、嘘になる



「ここは華菜の望んだ、願った世界だ…
華菜が苦しめばそれを彼女は意のままに取り除き、彼女に危害を加える“痛み”を全て無効に出来る
――と言っても、一から彼女が創った訳じゃない
正しくは“平行世界”を創った、とでも言おうか…」

「じゃあ、オレ達は…」

「…君たちの存在自体は、確かに何処かに存在している
ただ、今ここにいる君たちは――」


そう言って桂は口を噤む
言える訳がない

だが、碧とて馬鹿ではない
桂が言わんとする事ぐらい理解できる



「ここにいるオレ達は…華菜に造られた、偽物だって事か…」

「そんな、事は――」

「…それなら、カリンと杢火が何故消えかかったのかも納得がいく…
華菜によって、“邪魔”だと判断されたから、だろう?」


まるで自分のノートに描かれた落書きを消すように
華菜にとって邪魔になる存在は消される運命にある



だが、それでは、余りにも――――

――あんまりでは、ないか


唇を噛み締める
目頭が熱くなり、拳を握った指先が白く変わる



「せめて、教えてくれ…何故、華菜はこんな世界を…」





その言葉に頷き、桂は静かに語りはじめた―――…


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