「…!」


刹那、華菜の身体に異変が起きる
足が痺れ――動けなくなる


「…仕組んだね」

「ただ、闇雲に攻撃していたワケじゃないさ…」


そう言って碧は掌を開く
そこにはピンポン球よりも一回りほど小さい木の実があった
それは僅か数秒で霧と光に包まれ掌から消えた



「霧毒華の実…霧状の毒を放出する木の実だ。抗体を持たない者は5分と待たず動けなくなる」

「…わざわざ拳で攻撃してきたのは実を持ってるのを悟られない為、ってとこかしら?
成る程、こうなる事を予測して、あなた達は予め抗体を飲んでいたのね…
お見事ね、碧くん?でもね、勝てなくって当然だよ

だって――――」


碧の背後から水の塊が覆い被さるように現れる


(しまっ…――!!)


「だって、華菜は神様なんだから!!」




華菜が言い終わると同時に何かが勢い良く水を弾いた
慌ててそちらを見やると赤髪の青年が茨の鞭を構え、立っていた
碧を庇うように自分の背後へと押しやる


「父さん、母さん…!それに、兄さんも…!」


蔵馬、梅流、そして、紅光が木の上の少女を見上げる
少し遅れて桂とカリンと杢火が碧に駆け寄った
碧は桂とは初対面だ
訝しげに彼を見る


「アンタは…?」

「あの子の…華菜の、兄だ…」


その言葉に紅光が言っていた事を思い出す
この少年は、華菜を…妹を助けようとしている事を

桂は土下座する勢いで碧達に頭を下げる
カリンと杢火は何も言わず、気まずそうな表情でそれを見ていた


「みんな…本当に、すまない…ただ、どうしても、伝えておきたい事があるんだ…」


華菜が汚い物を見るような眼で桂を見下し、鼻で嘲笑う
重々しい空気が満たされる中、桂の言葉を待った


「コイツは、相手の攻撃を無効化する事が出来る…」


――やはりか
何らかの領域の能力であろう、とここまでは碧の予想通りだった
異世界から来た能力者――誰もがそう思っていた

しかし、次の桂の口から出てきた言葉はそんな生易しい物ではなかった





「コイツはこの先の出来事を自分の好きなように展開することが出来る


ここは――華菜の創った世界だからだ」







――――邪魔なものは排除する
――――私は私の好きなように世界を創る

――――私に相応しい世界を、私の為だけの世界を




――――苦しみも何もない…それだけを、ただ願った


- 23 -


[*Prev] | [Next*]
*List*


Home


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -