華菜と俺は兄妹だった
幼い頃に両親が離婚し、俺は父方へ、華菜は母方に引き取られ離れ離れになった


だが、それでも俺と華菜は二人で度々会っていた
彼女の望むことならなんでもしてあげたいと…そう思っていた

例え、兄妹だとしても…俺は彼女に恋をしていた

許されない関係だと解っていても、止められる事が出来なかったんだ
互いに愛し、愛され…それが当たり前になっていた


たまにしか会えない関係でも、俺達は幸せだった
…あの時、までは


それは突然だった
華菜が14歳になって間もない頃…
――母親が、壊れたのだ
元々気の弱い人だったし寂しがりな人だったから…
それが災いして馬鹿な男に引っかかってしまったのだろう



母はヒステリックに叫びながら華菜を痛めつける
華菜はそんな母親を“魔女”と呼び、忌み嫌っていた
近所の住人も気づいているくせに見て見ぬ振りをする
誰も、華菜を助けようとしなかったのだ


明るい子だったのに、口数も減り次第に部屋に引き篭もるようになってしまった
俺はそれが悲しくて、悔しくて…仕方なかった

こんな運命を呪った事もある
誰かが代わりに苦しめばいいなんて事もしょっちゅうだ


それ以降も何度か華菜と会って話した
母親がいない時を見計らい…寂しさを紛らわすように抱いた事もある

その度に彼女は泣きそうに笑いながら話すのだ





――誰も華菜を傷つけない“夢の世界”の話を


いつしか彼女の中で現実と妄想がごっちゃになり、それが母親を一層苛立たせた
母親に殴られたり、罵倒されている内はきっとまだ良かったのだろう
痛みはあるが、まだ自分が母親に求められていると錯覚出来るからな


本格的に華菜が壊れだしたのは母親が完全に彼女と関わることをやめた時だった

何を話しかけても無視をされ、まるでそこに華菜など存在しないかのように振舞われる
好きの反対は無関心と言うが、正にそれだった
殴られるよりも何よりも辛かった



華菜は何度も何度も願った

こんな現実なんて捨ててしまいたい
誰かに自分を見て欲しい
痛みも何もない世界に行きたい…



そして、憎しみを糧にして華菜の能力が開花した
世界を創るという神に等しき能力を



華菜にとっての俺は、自分を助けてくれなかった役立たずの兄だとそう思っていた
だが、華菜はこの世界に俺の存在も許してくれた
華菜に必要とされていると、愛されていると

それが…堪らなく嬉しかった


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