第22章 どんな時もどこにいる時でも


遠い遠い過去の記憶
もう思い出せないと思っていた


蔵馬を想う瑪瑠の気持ちが記憶を呼び起こしたのだ



「瑪、瑠…?」


恐る恐る蔵馬が瑪瑠の頬に触れる
確かなぬくもりを持つそれは涙に濡れていた

蔵馬を真っ直ぐに見つめ、柔らかい笑顔で頷く



「ありがとう、蔵馬…ずっと、ずっと会いたかった…!!」



蔵馬の首に腕を回して抱きつく
その小さな身体を両腕で強く抱きしめる

もう二度と離れないように
二度と、想いが消えてしまわないように…―――






「―――ああ、そうか…やっぱり、そうやって…」




その時、両刃の眼がギラリと光った
右手に黒い光を宿し、瑪瑠へと振りかざす
蔵馬が片手で防ごうとしたが、先程の毒のせいで上手く動くことが出来ない





「幸せになんか、させるかあああああああああああああああああ!!!!!!!!」




両刃の叫びに、瑪瑠がギュッと眼を固く瞑る





―――刹那


肉を、切り裂くような嫌な音が瑪瑠の耳に届いた
いつまで経っても、痛みは来ない

だが、それと同時に鼻を突く嫌な匂いがした

瑪瑠が恐る恐る眼を開いた




「え……!!?」




ドサッと何かが倒れるような音がする
金色の髪の毛に、紅い液体がこびりつく





「裟、羅…ちゃん…?」




地面に鮮血が広がって行く
瑪瑠はそれを見て、眼を見開いた




「…ッ裟羅ちゃん!!!」



慌てて彼女に駆け寄り、その身体を抱き起こす
血まみれの彼女の身体は、やけに軽く感じられた
両刃は呆然としてそれを見ている


「裟羅ちゃん…!どうして…!せっかくお友達になれたのに!!」


裟羅の眼がゆっくりと開かれ、静かに笑う
震える手で瑪瑠の頬を優しく撫でる


「なんでかな…ただの罪滅ぼし、かな…」

「そんな、そんなのって…!蔵馬、お願い、裟羅ちゃんを…!」

「いいの、瑪瑠」


蔵馬を呼ぶ瑪瑠を制す
裟羅は首を少し動かして両刃のほうを見た



「私、さ…覚えてたんだよ、この場所を…」



それは、消え入りそうな声だった



「ねぇ、両刃…この森はさ、私がアンタと初めて出会った場所でしょ?」

「…ッ!」



両刃の脳裏に、初めて出会った時の裟羅の表情が浮かぶ
金色の髪と同様に明るい笑顔の少女だった


────初めて見た時から、ずっと恋焦がれてきた

嘗ての親友と同じ、美しい金の髪
真っ直ぐな、強い視線
綺麗な心……

その全てに惹かれたのだ




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