第18章 終わりは始まりの唄
それは、遠い過去の記憶だった
ただの猫として生きていたあの頃の自分
車に轢かれそうになった自分を助けてくれたのは、一人の少年だった
猫は、その少年に惹かれていった
それから数年が経って、猫は再び少年に出会う事になる
知り合いの妖狐から、彼のことを聞いて居ても立ってもいられなくなった
少年は自分を覚えているだろうか?
いや、何年も昔だし、自分は猫の姿だった
少女はただ少年と再会出来たことが嬉しかった
「ねぇねぇ、アンタ、人間のくせに霊界のお手伝いしてるの?」
「まーな、こっちだってやりたくてやってるんじゃねーよ」
「ふーん…楽しそうね」
「じゃあお前が代わりにやってくれ」
「いいよ」
(…君と一緒にいられるなら、なんだって出来るよ)
少女はただ少年といられるだけでよかった
他愛無い話が楽しかった
少女は少年に恋をしてしまった
決して叶わぬ恋を
あの日
少年が魔族に覚醒し、人間界に戻った時のことだった
少女の恋は終わりを告げた
(誰…?誰なの?あの女…結婚ってなに?どういうこと?私が今まであなただけを見て来たことは無駄だったの?)
(ああ、そっか…最初から、無理だったんだ)
(あなたが私のものにならないなら…それを壊してしまえばいい)
(―――あなた達の、幸せを)
その日を境に、少女は鬼へと変わった―――…
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