夜は形無し、望むがままに///


微笑んだまま動くこともないルーナの姿を、てっぺんからつま先までじっくりとウォルターが見つめる。
ふん、と息をついて、ぽつりと彼が呟いた。

「ルーナ、か。妙だな、私はキミを知っている気がする。どこかで会ったか?……いや、はじめて会ったかな?」

敵意がないどころか、むしろ、どこか恍惚と自分を見つめてくる存在に、どこか見覚えがあるような気がした。懐かしさ、というのだろうか。あまり体験したことがない感覚にウォルターは首をかしげる。

「どっちだと思う?」

からかうような、確認するような。そんな声で彼女は言った。ますます怪訝そうな顔をする男のそんな様子さえ愛おしいとばかりに。そして男は返した。

「……会うのは、はじめてかい?」
「あなたがそう望むなら、」

ゆらりとルーナの姿がぶれる。
ヘンリーはふと、今まで遭遇してきたゴーストのようだと考えた。それが正しいのかどうかを知るすべはなかったが。

「あなたが望むとおりに。」

ルーナの姿が空気に溶けるようにして消えた。
首をかしげるヘンリー。それと、楽しそうに笑うウォルターの二人が残される。少しの沈黙の後、にこりと笑みを浮かべてウォルター・サリバンが声を上げた。

「まぁ、なんだっていい…

さあ、ヘンリー。

21の秘跡を成し遂げよう!」


果たして、彼女はどこへ消えたやら。




mae  tugi
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