それは口元に浮かんだ柔らかな愛情///


暗い穴を堕ちて、たどり着いた先。
ルーナの会いたかった人物がいた。

高い穴からするりするりと落ちて落ちて。
あるはずもない既視感に不思議の国のアリスというお話を思い出したその頃、黒く煤けたような地面へと優雅に足をつけた。

ふわりと降りてきたルーナをウォルターはきょとりと見つめる。
その逆側には少し前に会ったヘンリーの姿があった。

そして、ウォルターは口を開く。
ルーナの想っていた通りの言葉を。


「キミは誰だい?」


ルーナが顔をあげ、柔らかく慈しむようにして微笑んだ。


「私は、ルーナよ、ウォルター。」


あなたに会えて、よかった。
紡ぐように、唄うようにつぶやかれた言葉はとろりと空気にとけた。




mae  tugi
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