リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的88

※前話同様ヴァリアー側のキャラ崩壊注意です。
ダメだと思った時点でお戻りください。



何故かベルフェゴール、マーモンとゲームをすることになって数分後、異様な光景が広がっていた。

「………………。」
「すご。」
「へぇ、中々やるじゃないか。」
「なまえちゃんすごい!!」

冷や汗をダラダラと流し気まずそうに画面から目をそらすなまえ、驚いた表情で声を上げる由良、キラキラした目で嬉しそうに画面を見るくるみ。そして感心したような声色で話したマーモンと、への字口になり機嫌悪く一言も喋らないベル。
画面内のモニターは右側がWIN、左側がLOSE。ベルフェゴール達が操作していたのは画面左側のキャラクターで、つまりは、ゲームであってもなまえ達に負けたのだ。すごいすごい!と未だ飛び跳ね喜ぶくるみが声を上げる度に、ベルフェゴールの機嫌は悪くなっていく。それを察知したなまえは必死に違う違う!と否定し、何度もマグレだと主張する。

「まあ、確かに1回目だし、偶々強いキャラをなまえが引き当てただけかもしんないしね。」
「運も実力のうちって言うと思うな!」
「カッチーン……」
「くるみ…!」
「やれやれ。」

由良のフォロー虚しくくるみが煽ったことにより青筋を立てたベルフェゴールは、今度は1対1で勝負しようと言ってくる。勿論拒否するなまえだったが受け入れられず、急遽始まったベルフェゴール対なまえはまたもやなまえの勝利に終わり、気まずいなまえも由良もフォロー出来なくなってくる。どうしようと思う2人に反してくるみだけは嬉しそうになまえをすごい!と持て囃す。それに苛立ったベルフェゴールはターゲットをくるみに変えた。

「それならお前は?」
「えっ?」
「お前も得意なんだろ?ゲーム。」
「えっ…!?」

戸惑うくるみにあれよあれよとコントローラーが渡り、キャラクター選択もそこそこにゲームが始まってしまった。元々あまりゲームをやらなかったくるみは見事ボロ負けし、項垂れる様をベルフェゴールがいい気味だと見下ろした。

「なら次は私ね。」

それにイラッとしたのは由良で、落ち込むくるみをなまえに任せ、コントローラーを握った。ベルフェゴールはニッと笑って応える。前世でハマってやっていたこともある為か、くるみの時よりはいい勝負をするが、ベルフェゴールは強く、あっさりと負けてしまった。
ショックを受け沈む由良だが、ここでめげる彼女ではなく、矛先をベルフェゴールからマーモンへ向けた彼女はマーモンに勝負を挑んだ。

「イヤだね。どうしてもっていうなら金を出しなよ。」
「ハッ!骸に負けたヤツに出す金なんかないし、処分待ちのアンタに言われたところで痛くも痒くもありませんけど?」
「ム…」

由良の言葉に火がついたのか、マーモンは貸しなよと言ってコントローラーを握った。そして始まる術士同士のゲームはゲーム内だけでなく現実世界でもバトルが行われており、マーモンが物理的に操作できないよう幻覚で隠したりコントローラーを変形させたりする。対する由良も負けじと応戦し、頭痛が酷くならない程度に幻覚を使い対抗した。しかし、実力差は圧倒的であり、気づけば由良は負けてしまい、更に気をつけてはいたものの、高度な幻術を無意識に使ってしまっていたようで気分が悪くなり、離脱した。

「うるさいぞ!お前達!」

そう言って、バンッと大きな音を立ててドアを開けやって来たのはレヴィだ。部屋の外にまで声が漏れていたようで注意しに来たらしいがベルフェゴールやマーモンは気にする素振りなく、うるさいと一言言ってゲームを続行する。ちょうどその時対戦していたくるみが呆気なく負け、レヴィに目を向けると閃いた!とばかりに目を輝かせる。

「一緒にゲームしませんか!?」
「くるみ!?」
「何!?」
「げっ……」

驚く周りを無視してくるみはコントローラーをレヴィに渡しに行く。くるみの誘いに最初は断っていたレヴィだが、押し切られる形でコントローラーを手に画面前に座る。相手をするのは誘ったくるみで、両者とも落ち着いたところでゲームを開始した。
が、くるみが見事敗れて終わった。

「ってことでカス鮫つれてきた。」
「どういうことだぁああ!!」
「るせぇ。」

ちょうどその時、いつの間に居なくなっていたのかベルフェゴールが包帯にぐるぐる巻きにされ、車椅子に乗っているスクアーロをつれてきた。声帯は特に異常がないようで、戸惑い叫んだ声が部屋中に響き渡るXANXUSに注意されていた。

「コイツなら包帯で指使えねーし、お前でも勝てんじゃね?」
「バカにして…!」

カチンときたくるみは怒り、コントローラーを握る手に力を込めてやる気満々といった感じで画面に向き合った。ベルフェゴールは面白いものでも見るようにスクアーロにコントローラーを無理やり握らせゲームを開始する。

「どうして…」
「くるみ、落ち込まないでよ!」
「ゲームよりもアンタは実力があるんだから!」
「ゲームの才能はないけどな。」
「アンタは少し黙ってて。」
「うっわ生意気…」

大きなハンデがあったにもかかわらずくるみは負け、なまえと回復した由良に慰められている。
ベルフェゴールとのやり取りを見ていたスクアーロはどういうことだとマーモンやレヴィに聞くが、ただの子供同士の遊びだと答えられるだけだった。訳が分からない状況に一瞬遠い目になりかけたが、ここまで騒がしいのに我らがボスが不機嫌になることなく静かなのが珍しく、逆に恐ろしく視線をやった。

「ルッスーリアも呼んでこようぜ。」
「これ以上人を増やさないでよ収拾つかなくなる。」
「そんなの知らねーし。」
「また負けちゃうかも…」
「くるみ!しっかり!」

由良の言葉を無視したベルフェゴールはなまえとくるみのやり取りをBGMに、ルッスーリアを呼ぶ為に部屋を出ていった。現在この室内にはルッスーリア以外の幹部、ボスがいたので、彼が来れば何故かなまえ、くるみ、由良はヴァリアーの幹部らと戦闘ではなくゲームで対戦するというカオスな状態になるだろう。もう既に充分カオスだが。

「もぉ!何なのよぉ!」
「やあ、ルッスーリア。」
「お前も連れてこられたのかぁ…」
「ホントに来ちゃった…」

男性にしては高い声で文句を言いながら入ってきたルッスーリアも、スクアーロと同じように体の至る所を包帯で巻いていて、コントローラーを握るのも難しいだろう。そんな彼に声をかけたスクアーロ、驚いて呟いたなまえは待っている間ヒマだからと対戦をして、ちょうどなまえの勝利で終わったところだった。ベルフェゴールはそんな2人を邪魔と言って雑にどかし、いつの間にか渡していたコントローラーを持たせたルッスーリアとくるみを画面前に座らせ、ゲームを始めた。

「このっ……悪魔!」
「ししっ。褒め言葉。」

今まで散々負かされ続けたくるみは涙目になってベルフェゴールを睨むが効果はなく、楽しそうな笑みを深めるだけだった。その顔はさながら残酷な悪魔のように見え、なまえも由良もぶるりと震えた。
ルッスーリアとくるみの対戦はやはりというか、ルッスーリアの勝利に終わり、くるみは最早いじけ始めている。そんなくるみを慰めるなまえにベルフェゴールから再戦の声がかかる。少し気まずそうな顔でビクビクしながらコントローラーを握り、もう一度対戦を始めた。

「あら…」
「ほぉ…」
「…………。」
「ま、マグレかもしれないので!!」

結果は最初と変わらずなまえが勝利した。不機嫌になるベルフェゴールにフォローのつもりで言葉をかけるが、更に機嫌が悪くなった気がしてさっとくるみと由良の間に滑り込む。なまえを守ろうと2人が動こうとした時、何か違和感を覚えて首を傾げた。
今自分たちが見ているのはさっきと変わらないゲームをする姿勢のベルフェゴールや、負けた姿に面白そうにニヤついて見ている他の幹部の面々のみのはず。数だって変わらない。6人いる。
そこではた、と気づく。6人いる?

「えっ…」
「ボス?」

気づけばXANXUSが静かにベルフェゴール達のそばに立っていた。五月蝿すぎたか、と一瞬焦った面々だが、それにしては静かな雰囲気のXANXUSに首を傾げる。そんな中、XANXUSはベルフェゴールを呼ぶ。

「よこせ。」
「!ししっ。りょーかい!」

何事かと身構えたベルフェゴールだったがXANXUSの意図が分かり、面白そうだと笑ってコントローラーをXANXUSに手渡した。受け取ったXANXUSは今度はなまえにおいと声をかける。ビクつくなまえにXANXUSは顎で来いと示し、どかりと画面前に陣取った。なまえは恐る恐る近づき、少し距離を空けたところで座るといきなりゲームが始まった。

「わっ!わっ…!」

緊張と恐怖で声を上げながら操作するなまえ。XANXUSは無言でカチカチとボタンを操作する。
やがて、勝負の結果が出た。

「勝っちゃった…」
「なまえちゃんすごい!」

画面に映る勝敗の結果はXANXUS側がLOSE、なまえ側がWIN。なまえの勝利だ。
青い顔でダラダラと顔から汗を流すなまえは錆び付いたブリキのようにギギ、と首を横に向け、すぐに反対側に向き直した。
めっちゃ怒ってる…!
直視せずとも分かる不機嫌なオーラがビシビシ伝わってくる。恐怖を感じたなまえは逃げ出したい気持ちでいっぱいだったが、何を思ったのか自分でも分からないが言ってしまった。

「も、もう一度、やりますか?」

言ってしまったと思う間もなくギロリと睨まれ萎縮する。
答えないXANXUSの代わりににんまりと笑ったベルフェゴールが動いた。

「そんじゃ俺も加勢するぜボス。」

コントローラーを握ったベルフェゴールが言ってXANXUSの隣に座る。それに対し、フェアじゃないと思ったのは由良で待ってと言って自身もコントローラーを握る。

「私もやる。」
「由良?」
「2人とも頑張れ!」

くるみの応援にありがとうと返す由良と、2人を不思議そうに見るなまえ。その向かいではヴァリアー側が味方に負けるなと冷やかしを入れている。
声援とも冷やかしとも取れる声をBGMに、ヴァリアー対雪の守護者勢のゲーム対決はそこから盛り上がった。


気づけば夕暮れ時となり、室内に入る西日が家具等をオレンジ色に照らしている。

「あー!!」
「ちょっ…くるみ静かにして。」
「よっしアイテムゲット!」
「ざっけんなお前それ俺んだろ返せ。」
「イヤでーす。」
「ざまあねぇなあ、ベル。」
「ふっ…」
「カッチーン…」

すっかり全員でゲームを楽しんでいた面々は最初の緊張した空気はどこへやら、今ではあんなに怖がっていたなまえですら気軽に反論できるようになっていた。今は最初やっていたものとは違うゲームソフトをやっており、ここにツナがいたならばどういうことかと突っ込んでいたに違いない。

「あ!」
「わ!バカ!」
「あぁあ!!」

そんな中、くるみ、由良、なまえがしまったと声を上げ、次の瞬間ヴァリアー側に負けてしまった。

「うわぁ、悔しい…!」
「ししっ!どうしてもっていうなら再戦してやってもいいけど?」
「さっきまで負け続きだったくせに調子良すぎない?」
「まあ、ベルはそういう奴だからね。」
「なまえちゃん、そんな奴の挑発に乗っちゃダメだよ!もう帰らないと!」
「お前も結構言うなぁ…」

悔しがるなまえを由良とくるみが宥め、ベルフェゴールの挑発に乗らないように両側からそれぞれ腕を掴んでホールドする。腑に落ちないような顔をしていたなまえだったが、外の様子を見てようやく気づいたようで、落ち着いた。

「えっと、お邪魔しました…?」
「誘拐されといて何言ってんの。次からはちゃんと同意貰ってからにしてよね。」
「次も同じことしたら今度はちゃんと武器持って乗り込むので!」

なまえの言葉を訂正しつつ忠告する意味で少し殺気を混ぜて言えば、ヴァリアーの面々は先程とは違う悪どい笑みを浮かべて答えた。

「へぇ、勝てると思ってるの?」
「返り討ちにしてやんよ。」
「腕が鳴るわねぇ…!」

返ってくる言葉の数々にゾクリと背筋を凍りつかせたなまえは、チラリと彼らの後ろで黙って椅子に座って目を閉じているXANXUSに目をやる。
ここに来た時は昨日のことを思い出して取り乱してしまったが、よく見れば今は昨日のような血塗れの姿ではなく、手当てされた状態の為血はどこにも見られない。よかった、と1人安堵し息を吐いた。

「行こ!なまえちゃん!」
「早くここから離れるよ。」
「!あ、うん!」

くるみ、由良に声をかけられ、慌てて追いかけた。
この出来事で少し平気になったのかも。
そう思ったなまえはそれは盛大な勘違いだったのだといずれ思い知らされることとなる。

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