リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的87

※ヴァリアー側のキャラ崩壊があるかもしれません。
ご注意ください。



親子連れで賑わうおもちゃ売り場の一角、ゲームソフトのコーナーに似つかわしくない雰囲気が漂う。
驚く3人の女子中学生に対し、組織名を呼ばれたからか少し殺気を滲ませて振り向いた黒ずくめの男たち。しかしその殺気もすぐに霧散し、なんだ、お前らかとでも言いたげな(というか実際言った)雰囲気で嘆息した。

「な、なんでアンタ達がここに…!?」
「あ、あれっ?確か処分受けたはずじゃ…」
「そんなの素直に受けるわけねーじゃん。」

驚きながらも聞いてくる由良とくるみの問いにししし、と独特な笑い声をあげながら答えたベルフェゴール。一緒にいたマーモンは我関せずと言わんばかりに反応を示さない。
そんな2人の態度に由良とくるみは僅かばかり焦る。まさか昨日の今日でヴァリアーと接触するとは思わず、2人とも武器を持ってきていないのだ。流石に一般人ばかりのこの場で何かするとは考えにくいが、何もしないとも思えない。何より、ここにはなまえがいる。昨日巻き込まれ、思い切り関わってしまった彼女を守れるかどうか、2人は必死に考えていた。

「なあ。」
「っ…」
「なまえっ!」
「なまえちゃんっ!」

そんな2人の考えなど露知らず、ベルフェゴールはなまえに声をかけてきた。まさか声をかけられるとは思っておらず、驚いたなまえは声も上げられなかった。由良とくるみが警戒しなまえに駆け寄ろうとする中、ベルフェゴールはなまえが持つゲームソフトを指差して言った。

「それ面白い?」
「へっ……?」

ポカンとする3人に対し、ベルフェゴールは早く答えろよと笑いながらナイフをチラつかせる。それに由良とくるみはなまえの一歩前に出て守るように睨みつけるが、ベルフェゴールは怯まない。なまえはようやく理解が追いついたようでハッと我に返り、えっと、と口を開いた。

「まだやってなくて、分かんない、ですけど…前作は神ゲーでした。」
「ふぅん。お前ゲームすんの?」
「あ、はい。一応…」

なまえの答えにふぅんと返したベルフェゴールはニヤリと笑い、ナイフをしまったかと思えば一気になまえ達に距離を詰める。

「!」
「コイツ借りてくぜ!」
「なまえ!」
「なまえちゃんっ!」

驚き声も上げられないなまえは大空戦の時のようにまたしてもベルフェゴールに抱えられ、腹部に圧迫感を感じながら遠のいていく由良とくるみを見てあれ?と内心首を傾げた。既視感に近い何かを感じたなまえだが、あまりの速さに考える所ではなくなり舌を噛まないように踏ん張ることに精一杯だった。


由良は急いでショッピングモールを出てどうするべきか悩んでいた。なまえが連れ去られた先は恐らくヴァリアーの本拠地だろうが、場所が分からないし、敵のホームに何も持たずに行くのは危険すぎる。しかし、こうして悩んでいる時間はない。
隣にいるくるみが殺気立ち、まるで家族の仇を相手にするかのようなヒロインとは程遠い顔でなまえが連れ去られた先を凝視していた。折角得た大切な友人を殺人犯にはしたくない。そんなことを考えている由良にくるみから声がかかる。

「私先に行くね。」
「は……?ちょ、ちょっとくるみっ…!?」

一言言ったくるみは由良の呼び止める声を無視して一瞬でその場から消えた。驚く由良が探すようにキョロキョロと顔を動かせば、少し先のビルの屋上を飛んで先に進むくるみの姿を確認した。どうやら高い所からなまえとベルフェゴールを探そうとしているようだ。

「っ……仕方ない…!」

由良は呟いて、先に進むくるみを見失わないように追いかけた。
本当は、頼るなんてしたくなかったんだけど。思いながら胸元の服と、首に提げていたチェーンの先にある物を掴む。
リボーンからこれには持ち主を守る加護が施されていると聞いたのを思い出したのだ。

「いざとなったらちゃんと守ってよね…!」

その言葉になんの反応も示さないリングに大丈夫だろうかと不安に感じた由良だが、仕方ないと諦めて追いかけるスピードを速めた。


凄まじい勢いで上に下に右に左に体を揺さぶられ運ばれたなまえは、目的地に到着した頃、目を回していた。漫画であれば目は渦を巻いているだろうし、魂が抜けたような状態になっていただろう。

「ぶっ…!」

バンッと乱暴にドアが開けられた音がしたと思えば地面に放り投げられ顔面を強打する。鼻血は出ていないものの、唇を噛んだらしく痛みを感じ咄嗟に手で押える。

「?……………っ!」

起き上がり、後ろにいるはずのベルフェゴールとマーモン以外の視線を前から感じる気がして見上げて、息を呑んだ。そこにいたのは、昨日血だらけになってツナに敗北し、今は包帯を至る所に巻いていたXANXUSだった。
無言で見下ろすXANXUSの隠しきれない威圧感に萎縮したなまえは固まり、恐怖からかカタカタと震え出す。青い顔でXANXUSを見上げ震えるなまえは次第に息も荒くなっていった。
今日朝からずっと朧気だった記憶が、今XANXUSを見たことで鮮明に思い出されていく。
どれだけ拒否しても指輪を嵌めようとされ、無理矢理嵌めさせられたことも。大空のリングを嵌められたXANXUSが血を吐き出し、リングに傷つけられたことも。XANXUSの本当の生い立ちも。XANXUSの強い憎しみも、恨みも。そして、ベルフェゴールがチェルベッロの1人を斬り殺したことも。

「ぁ………」

はく、と開いた口からは上手く声が出せず、荒くなった息は整わず、やがて息が上手く出来ず体に酸素が回っていかなくなる。目に涙を浮かべて荒い呼吸を繰り返すなまえは完全に過呼吸状態に陥ったが、誰も介抱しようとしない。
XANXUSからは己に何かをしようという意図は感じられないが、パニックになっているなまえは言いようのない恐怖が襲いかかり、無意識に助けを求めていた。

「なまえ!」
「なまえちゃん!」

その時、この場にいないはずの声が聞こえ、ドタバタと音を立てながら近づいてくる。由良が過呼吸になり上手く息が出来ないなまえを抱き寄せて落ち着かせようと背を擦り、くるみはそんな2人を守るように前に出てXANXUSを睨みつける。
くるみの殺気を真正面から受けたXANXUSは不快そうに顔を顰め、無言のまま殺気を返す。それにビクつくなまえに大丈夫だからと声をかける由良、怯えたなまえを見て怖がらせたXANXUSに更に殺気を向けるくるみ。
膠着状態かと思われたそれはあっさりと変化する。

「由良、くるみっ…」
「!なまえ、大丈夫?」
「うん、なんとか…」

ようやく呼吸を落ち着かせたなまえが心底安心したように2人に声をかける。心配した由良の問いに小さく笑って返すと、くるみに声をかけた。

「その人には、何もされてないよ。ちょっと、色々と、思い出しちゃって…」

なまえの言葉に察した2人は警戒はそのままに、ひとまず安堵した。ベルフェゴールもマーモンも手強いのは変わらないが、XANXASが相手ではいくらくるみでも太刀打ちできないかもしれない。
なまえの言葉を信じた2人はXANXASからベルフェゴールに視線を移す。

「XANXASは何もしてないらしいけど、部下のベルフェゴールが誘拐したのは?」
「私たち同意してないのに!」
「………………ベル。」
「っ………」

由良、くるみに責めるように言われ、面倒に思ったXANXUSがベルフェゴールの名を呼んだ。ヤバいと顔に表したベルフェゴールは冷や汗を流しつつ説明した。

「暇つぶしのゲーム探してたらちょうどソイツらがいてさ。リングに気に入られてるヤツがゲームするみてーだったから、遊ぶのにちょうどいいから連れてきた。ちゃんと借りるって言ったぜ。」
「同意してないんだよこっちは。」
「完全に後出しだったし。」

ベルフェゴールは文句を垂れる2人にうっわ生意気とイラついたように言う。
室内のピリついた雰囲気に戸惑ったなまえは由良、くるみを呼びかけた。

「ゲームするくらいなら、問題ないよ。2人がいれば、たぶん大丈夫だし。」
「じゃあ今持ってるのやろーぜ!」
「!あっ…」

なまえの言葉にいち早く反応したベルフェゴールはニッと笑って、なまえが持っていたゲームソフトをかっさらい、室内に設けられているゲーム機にセットした。非難の声をあげる由良とくるみを無視し、ベルフェゴールはなまえにコントローラーを渡す。受け取ったなまえが戸惑う間もなく、テレビからゲームタイトルの画面とBGMが流れてくる。なんというフリーダム。
コントローラーを握ったベルフェゴールはマーモンにも手渡し、残りの1つを由良達に投げる。どういうことかと目を丸くすれば、折角なら対戦をしたいらしい。仕方ないと由良がコントローラーを持つことになり、なまえに軽く操作方法を聞いて画面に目を向け、ちょうどそのタイミングでゲームが始まった。

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