リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的86

大空戦がツナ達の勝利で終わった、次の日。なまえは珍しく朝日を浴びながら起き上がっていた。窓から見る眩しい太陽に目を細め、このまま二度寝する気にもなれずに大きく伸びをする。
どこかぼんやりとした様子でのろのろと布団から抜け出し、顔を洗う為に洗面所に向かった。
パシャリと冷たい水を顔に浴びせ、目がスッキリとする。が、脳はまだ寝惚けているのかそれとも昨日のことがあったからか、まだぼーっとする感覚が残る。

「何、してたんだっけ…」

起きてから1番に思い浮かんだのはその言葉で、リビングで休日にもかかわらず早く起きてきた娘に驚いた両親になんの反応も示さずに、テレビで流れる情報番組をぼんやり眺める。テレビの音をBGMにして昨日のことを思い返す。
確か昨日はリング編の最終局面である大空戦が行われていたはずで、その時は2日連続で徹夜してしまったから寝ようとしていたところに何故かチェルベッロがやって来て並中に連れていかれたんだ。そこで何故か由良とくるみが選ばれたという雪のリングを保管することになって、ヒバリのお陰で2人の解毒に成功して、残されたヒバリの怪我の手当ての為に保健室に行って…
そこから先の記憶がない。いや、あるにはあるのだが、断片的で繋げることも出来ず、原作やアニメで得た知識のおかげでなんとか繋がっている状態ではあるが、どうしても全て思い出そうとするとモヤがかかったようなものばかり出てきて出来なかった。
寝不足のせいだろうか。そう考えたなまえは1度自室に戻り、携帯を確認する。

「あ…」

ちょうど由良とくるみのグループトークに2人からメッセージが送られていた。休みの日だから出かけないかというもので、なまえが起きていないと思われているようで午後からとなっていたが、無性に会いたい気持ちになっていたなまえは起きてるからすぐにしようとメッセージを送った。


あれから時間や場所を決めた3人は、駅近くにある大型のショッピングモールで落ち合った。最初は全員まだ朝食を食べていないという事だったので、ショッピングモール内にあるレストランで食事を済ませることにした。
席に着いて暫くして、思えば3人で遊ぶのはこれが初めてだったと気づいたなまえは珍しいね、と驚いた。そんななまえに対し2人は苦笑いを零す。

「まあ、この前まで私もくるみもお互いに遠慮してたし。」
「私も休みは恭弥くんのお手伝いでなんだかんだ予定が合わなかったから…」
「確かに。」

頷いたなまえの様子を見てくるみ、由良は互いに目配せをする。
2人が今日突然遊ぼうと誘ったのは、なまえが心配だったからだ。本来、なまえは関わるはずのなかった大空戦でリングに触れるからという理由で巻き込まれ、そして一番近くでXANXUSの血を浴び、ベルフェゴールが人を殺す場面を目撃した。以前ヒバリが入院したからと見舞いに行った時、たまたま病室で怪我を負っていたツナを見た時も、黒曜から帰った由良の傷だらけの姿を見た時も、酷く取り乱していたなまえが、近距離で次々と悲惨な出来事が起こったのだ。トラウマとなっていてもおかしくない。
そう睨んだ2人は真っ先になまえの様子を見に行くと決め、3人で遊ばないかと提案したのだ。ちょうどなまえが気になると言っていたゲームの発売日も今日だったので、そのことをネタにしてなまえを誘い出すことに成功し、今こうして会っていた。

「そういえばなまえちゃん、お金大丈夫?この前ないって言ってなかった?」
「ゲーム買う用のお金は別で貯めてるから大丈夫!」
「まあ、中学生なら課金できる額も限られてるしね。」
「してませんけども!?」

雑談を交えつつ遅めの朝食を終えた3人はおもちゃ売り場に移動する。ゲームソフトはおもちゃ売り場の一角にコーナーが設けられており、久々に見るおもちゃ売り場の玩具に年甲斐もなく懐かしいとはしゃぐ。

「あ!これ私持ってた!」
「あ〜!これ私も持ってたわ。病院と美容院の。」
「私も持ってたわ。あの家のやつ。」
「私幼稚園とか学校とか持ってたよ!」

ワイワイはしゃぎながら、色々な玩具を見ては、懐かしいやら凄いやら感想を言っていく。全員買わないにもかかわらず結構な声量で話すので、きっと店員に見られたら迷惑だと思われていただろう。レジが混雑しているせいか店員がほぼレジに集中し、更には親子連れも玩具の見本に夢中になっている子どもが多くそれに対応している為聞かれずに済んだ。そんなこんなで進んでいき、ようやくゲームソフトのコーナーにたどり着いた。

「で、どこにあんの?」
「そういえば、タイトル聞いてなかったけど、なんていうの?」
「えっとね…」

2人の問いに答えたなまえはたぶんこっちだと、最近発売したようなソフトがずらりと並ぶ売り場に移動する。発売したばかりのソフトは在庫を多めに確保しているらしく、中身の入っていないパッケージがいくつも陳列されていた。
数が多く種類が少ない中、目が痛くなるようなカラフルなパッケージを見ていたなまえがお目当てのものを見つけたようであ、と声を上げて1つ手に取った。それを両側にいた2人が覗き込む。

「面白いの?それ。」
「前のシリーズは楽しかったよ。ストーリーも面白くて、何回もやったもん。」
「操作は難しくないの?」
「うーん…難しいとかは考えなかったなぁ。大体こういうゲームは操作ボタンとか変わんないし、やって行くうちに慣れていった感じだし。」

なまえの回答に、聞いていた2人はへぇ、と言葉を返した。
由良は前世ではゲームもしていたが、仕事を始めてからは専らスマホで出来るゲームにばかり熱中していて、ゲーム機を必要とするゲームはあまりやっていなかった。くるみは病気の症状が酷い時もあれば楽な時もあり、漫画を読むのですらいっぱいいっぱいだったためゲームにまで手が回らなかった。
その為2人ともゲームはやりたいという訳ではないのだが、気になるには気になったので聞いてみて、なまえの返答次第でやるか決めようと思ったのだ。が、今回はやめにしたらしい。
2人は会計に行こうとするなまえにいってらっしゃいと声をかけ、途中で固まった。突然固まった2人に訝しんだなまえはどうしたのかと首を傾げ、固まった2人の視線の先を振り返り、同じように固まった。

「早く決めなよ。」
「うるせーチビ。」

3人の視線の先にいたのは、黒い服を見に纏った金髪の男とふよふよと浮く小さな黒い物体。腕には赤い腕章がつけられており、その少し上の部分には赤い模様があり、そこには「VARIA」の文字。

「ヴァリアー…!?」

息を呑んだ3人のうち、誰かが呟いた。

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