リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的6

るんるん、と鼻歌を歌いながらスキップでもするかのように軽やかな足取りで歩くのはくるみだ。その隣にはきょとりと目を丸くさせながら不思議そうに彼女を見るなまえがいる。
何故くるみがこれ程まで上機嫌なのかといえば、今日は珍しく幼なじみの呼び出しがなく、初めてのお友達兼リアルでの最推しのなまえと一緒に帰れるからだ。朝から今日は来なくていいと幼なじみに言われ、遂に一緒に下校できる!と嬉しくなったくるみの顔は緩みっぱなしで、ニコニコと言うよりはニヤニヤと表現した方が正しいような具合である。そんな彼女を見るなまえはつい先程くるみが放課後フリーになったことを知り、いつも一緒に帰ってる由良もこの際だから紹介したいと思い以前のように彼女の元に向かっていた。どうやらA組は最後の時間が体育だったようで、先程グラウンドを覗いたところちょうどトンボがけをする由良の姿を発見し、手伝うついでにくるみを紹介しつつ3人で帰ろうと言うつもりだった。くるみが上機嫌な理由はこれも含まれており、なまえの友人である由良に早く会いたいと気持ちが急いていた。
そんな数分前の自分を引き止めたい気持ちでいっぱいになったくるみの前には、由良以外に2人の男子生徒がいた。

「あれ?沢田くん…もしかしてまた押し付けられたの?」
「あ、あはは…まあ…」
「そろそろ五寸釘とお人形用意した方がいいかもね。」
「や、やめてよ!シャレにならないから!」

半分本気で話すなまえと焦りながら返す沢田くん基この世界の主人公沢田綱吉の姿に、いつの間に知り合っていたのだろうと少し親しげに話すなまえを見る。が、くるみにとっての問題はそこではない。その近くで2人のやり取りを見ている男子生徒がいた。その彼が問題なのだ。

「ツナ、知り合いか?」
「あ、えっと、隣のクラスのみょうじさん。」
「沢田くんと由良の友達のみょうじなまえです!それでこの子が友達のくるみちゃん!」
「ああ、入学初日でできた友達の…」
「そう!可愛いでしょ!」
「へえ、俺山本武。よろしくな!」
「うん!よろしくね!」

くるみを置いてポンポン交わされていく会話に、しかしくるみは入ることが出来ずにいた。他クラスの友達第2号だ!と嬉しそうに言ったなまえがようやく何も言葉を発していないくるみに気づいた。疑問に思ったのはなまえだけではないようで、A組の3人も彼女を見た。

「っ……………」
「?どうした?顔赤いぞ?熱でもあるのか?」
「っ……!!」

見ればくるみは今にも沸騰しそうなほど顔を真っ赤にして固まっていた。今いるメンバーで1番仲の良いなまえが声をかけるより早く、山本が近づき不思議そうに聞くが、更に顔を赤くし、今度は俯いてしまった。
ち、近い…!!
くるみの脳内を駆け巡るのはその言葉ばかり。もう既に察しているかもしれないが、何を隠そう前世からくるみにとっての生きがいとも言える最推しは目の前にいる山本武その人なのである。前世でどんなに辛い時でも明るく笑って前向きに捉える姿に何度救われたか。自分が辛い時、いつも彼のその姿を思い浮かべて乗り越えてきた。そんな彼がこんなに近くに、触れられる距離にいる。くるみのキャパシティはもう超えてしまっていた。

心の中は逃げたい気持ちでいっぱいだが、実際は動きたくても動けないので不思議そうにこちらを見る山本の視線がビシビシ突き刺さり痛いと錯覚しそうなくらいである。心做しか震えているような様子のくるみにもしやと気づいたなまえと由良はくるみの元に急ぐ。

「くるみちゃん!」
「っ…なまえちゃん…」

ナマエが名前を呼んで駆け寄れば、まるで凍っていた氷が溶けたかのようになまえの後ろに回り抱きついた。顔は依然赤いままであるが、少し落ち着けたようで僅かばかり余裕が伺える。

「大丈夫か?」
「山本、そんな気にしないで。アンタのせいでもないから。」
「?おう!」

由良はくるみが傷つかないようにする為にも山本が誤解しないようにフォローに回ったが、山本はよく分かっていないようで由良の言葉にも不思議そうにしつつニカッと笑って答えただけだった。当事者でもなく完全に蚊帳の外で置いていかれたツナはオロオロとくるみと山本に顔を向けるだけで何も言えなかった。そんな中、ようやく落ち着いたくるみがあの、と声をかけた。

「川崎、くるみです。よろしく、お願いしますっ…!」

まだ顔は赤く、緊張しているせいで顔もまともに見れていないが、精一杯伝えようとしているのは全身から伝わっているのでむしろいじらしいとすら思える姿である。ただし、向けられた本人は超がつくほどの天然で、少し前まで小学生だった野球少年である。

「おう!よろしくな!」
「う、うん!」

特に気にする素振りもなくくるみが幾度となく好きになった笑顔で、なんてことないように言ったのだった。

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