リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的78

動きやすい服装に着替えて、上着を羽織った由良はまた適当な理由をつけて家を出た。いつも登校する朝と違って夜は街灯が等間隔に光っている程度で薄暗い。そんな中歩いていた由良の目に朝、なんなら帰りも一緒だったくるみが映る。

「由良ちゃん!」
「くるみ。」

登校と同じ待ち合わせ場所で既に待っていたくるみに小走りで駆け寄り、並んで歩く。向かうは並盛中学校。最後の守護者戦でもある大空戦が行われる場所だ。
くるみ、なまえと別れて家に入る直前、突如現れたチェルベッロに今日の大空戦には必ず来ることと言われ、やはり自分たちも例外なく参加するようだ。くるみも同じように言われたと言っていたので、なまえからお守りを貰っておいてよかったと話す。

「由良…」
「!クローム。」

学校に近づいた頃、2人の後方からクロームがやって来た。一緒にいるはずの犬、千種が見当たらずどこにいるのか聞けば1人で来たとのことだったので、一緒に行くことにする。

「貴女は…」
「初めまして!川崎くるみです!クロームちゃんって呼んでもいいかなっ?」
「うん。」
「!私はねっ、くるみって呼んで欲しいなっ!」
「分かった…」

ニコニコと嬉しそうに笑うくるみにクロームは戸惑った様子で答えていた。それに気づいた由良は苦笑する。
くるみはここまでグイグイ行くタイプではない。無理に対応しているせいか、若干笑顔が強ばっていた。対するクロームも人付き合いが得意な方ではないので、こちらは明らかに困惑していた。
そんな2人に行こうと声をかけようとした時、学校の方から眩い光が見えた。それと同時に耐え難い程の圧迫感を感じた由良はくるみに目を向ける。くるみも同じように見ており目が合うと小さく頷いた。

「行こう。」
「うん!」

由良の言葉に頷いた2人は学校に行く足を早めた。


学校に着いた3人は光が出ていた場所である中庭に向かった。
そこには既に闘う気満々のXANXUS、対峙するツナ、リボーンの他に、獄寺、山本、了平、バジルの姿があった。その後方にはチェルベッロがおり、何か言ったのかツナ達が一斉にこちらを見た。

「くるみ!」
「由良!」
「髑髏…!」

驚いたように声を上げるツナ達に軽く手を振った由良、くるみが何か言うよりも早くチェルベッロが「残りは雲と雷ですね」と言う。疑問に思うツナの背後からザッと靴が地面を擦る音がして、振り向いた先にいたのはいつもの学ランではなくベストを着たヒバリが「用件は何?」とチェルベッロに聞いていた。
獄寺達だけでなくクロームやヒバリがいることに不思議に思ったツナに、「守護者は全員来るように言われた」とクロームが説明すると、チェルベッロが命ある守護者に強制招集を発動したと言った。それはツナ側だけでなく、ヴァリアー側も同じだったようで、逃亡していたはずのマーモンや、晴戦で死んだかと思われていたルッスーリアはベッドごと連れてこられていた。ルッスーリアがベッドごとということは勿論雷戦で重傷を負ったランボも例外ではなく、呼吸器をつけられた状態でチェルベッロに抱えられて集合させられていた。
非難の声を上げるツナに構うことなく、チェルベッロは強制招集をかけた理由を説明する。

「大空戦では、7つのリングと守護者の命をかけてもらうからです。」
「リングと、守護者の命をかける…?」

戸惑うツナを横目に、くるみと由良はやっぱり、と静かに嘆息した。自分たちがどうなるかは分からないが、命をかけると大々的に言われているのならまた以前のような毒が投与されたりするのだろう。その場合、自分たちの解毒はどうなるのか疑問に残るが。

「では大空戦を始めましょう。」

チェルベッロの言葉に我に返る。見れば、納得できないと主張するツナが、できなければXANXUSの勝利となると言われ言葉を詰まらせているところだった。ツナが黙ったことで、チェルベッロはリングを回収すると言い、ボンゴレのエンブレムが入った箱を手にそれぞれリングを持つ守護者を回る。ヴァリアー側は雷、嵐の2つだけですぐに終わり、こちら側は晴、雨、霧、雲、雪と多く、少し時間がかかっていた。了平、山本の順に回り、ヒバリは昨日の雲戦で既にチェルベッロに渡していたためそのままクロームの元にやってきた。クロームがリングを渡すのを見て、自分たちはどうすれば良いのだろうと由良、くるみが顔を見合わせていると、チェルベッロから声がかかる。

「雪のリングは我々ではなく、彼女に渡していただきます。」
「彼女…?」
「まさか…!」

チェルベッロの言葉に嫌な予感がして、息を呑んだ。

「なまえっ…!」
「なまえちゃん!」

それは見事的中し、チェルベッロが少し横にズレたことで背後に控えていたチェルベッロの1人がなまえを抱えているのが見えた。2人が駆け寄ったからか、チェルベッロはなまえを静かにおろし、ふらつくなまえを慌てて支えに行く。

「なまえちゃん大丈夫っ?顔色悪いよ?」
「気持ち悪い…」

ここ2日しっかり睡眠できなかったなまえは、寝不足の状態でチェルベッロに抱えられて非常に不安定な状態で移動させられたこともあって顔が青白くなり、吐き気を感じていた。くるみに支えられているなまえの背を擦りながら、由良はチェルベッロを睨みつける。

「なまえは関係ないはずだけど、なんで連れてきたの?」

由良の言葉にチェルベッロはいいえと否定する。

「彼女は雪の守護者以外で唯一リングに触れられる存在です。」
「雪のリングに触れられるということはこの争奪戦と無関係ではいられません。」
「彼女にはこの大空戦でリングを管理する役割を担っていただきます。」
「そんなのっ…」
「認められなければ沢田氏側を失格とします。」
「っ…」

チェルベッロの言葉に由良は言葉を詰まらせる。聞いていたくるみもチェルベッロを睨むだけで反論できない。2人は守護者として選ばれたが、あくまでもツナ側の守護者だ。今ここで騒ぎ立てればツナ達は失格となり、自動的にXANXUSがリングを手にすることとなってしまう。それは避けなければならない。
ぐっと唇を噛んでいた由良になまえが声をかける。見れば、彼女は顔色が悪い中微笑んでいた。

「心配してくれてありがとう。でも大丈夫。リング貸して。」
「なまえ…」
「なまえちゃん…」

心配そうに見る2人に大丈夫だって!と言ったなまえはそれに、と続ける。

「あの時は触れたけど、今は触れないかもしれないんだし。ていうかその可能性のが高いし、そうなったら私帰れるし!」

それはないと思う。言いはしないが、それでもなまえが安心させるように言ってくれているのは充分伝わっているので、仕方ない、と2人ともリングを渡した。なまえの手に渡ったリングは特に何も起きず、静かになまえの手の上にある。それを確認したチェルベッロが「たしかに」と回収したリングを皆に見せるように掲げ、次に大空戦の説明を始めた。
大空戦の勝利条件は今までと変わらずリングを完成させること。しかしフィールドは学校全体になり、随所に小型カメラ、大型ディスプレイを設置し、それで戦局を確認出来るようになっている。守護者は以前雪戦で由良やくるみがつけていたリストバンドを渡され、そこについている小さなディスプレイから見ることが出来る。

「では守護者の皆様はリストバンドを装着し次第、各守護者戦が行われたフィールドに移動してください。」

チェルベッロの言葉に皆疑問に思うが、質問は受け付けないと言ってそれ以上の説明はされなかった。チェルベッロの様子に仕方なく納得した守護者達。
そんな中、了平が「やるなら今しかないな」と咳払いをする。なんの事かと首を傾げるツナに察した山本が円陣だなとからりと笑って言った。それに気づいて集まるツナ達の後方ではクローム、更に後ろの方ではヒバリが腕を組んでいたが、了平が10m以内に入っていれば円陣に参加しているというルールを設けていたためそのままでいいということになった。

「くるみも来いよ!」
「あ、うん!」
「神崎!早くしろ!」
「分かった…」

ふらつきはしなくなったものの、まだ顔色が悪いなまえはその場で見守ることとなり、声をかけられた2人は山本、獄寺の隣に急いで入る。

「沢田ファイッ!」
『オー!!!』

円陣が終わり、それぞれフィールドに移動し始める。ヒバリ、ランボ以外ツナに一言言ってからその場を離れていく中、由良たちも移動しようと目を合わせる。

「じゃあね、ツナ。」
「絶対勝とうね!」
「頑張っ…くしゅっ!」

皆に倣って一言ずつ言って去ろうとしたが、なまえがくしゃみをしたことで流れが途切れた。よく見れば、なまえは他の皆とは違い、薄手の部屋着しか着ていない。
由良が呆れたように上着はどうしたのか聞けば、寝ようと布団に入ったところにチェルベッロから拉致されたと答えられ、チェルベッロを睨む。ひとまず自分の上着を貸そうと由良が脱ぎ始めたが、それより早く、ふわりとなまえの肩にジャケットがかけられた。

「拙者のを使ってください。」

今までツナの修業の手伝いをしていたバジルだ。でも、と遠慮するなまえに鍛えているから大丈夫だと答えたバジルはニコリと微笑む。
バジルの対応に、そう言えばイタリア出身だったな、と考えついた由良、くるみはまだ渋るなまえに貸してもらうといいと促す。

「………じゃあ、ありがたく、お借りします。ちゃんと洗って返すので!ありがとうございます…!」
「いえ、お気になさらず。」

少し渋ったなまえだったが寒さには勝てず、バジルの言葉に甘えることにした。優しく返すバジルにホッと息をついて、今度こそツナに頑張ってと伝えてそのまま3人で仲良く旧校舎に向かっていった。


全員を見送ったツナの元に、野次を飛ばしに来たり骨を拾いに来たと言って駆けつけたコロネロ、シャマルがやって来たところで全員フィールドに集まったと声がかかる。その言葉に合わせてディスプレイには各フィールドにいる守護者と、その近くに天井に届きそうだったり校舎を優に越える高さの台座がついたポールが立っており、台座にはそれぞれのリングが置かれていた。その説明を受け、またリングを奪い合うのかという疑問の声に耳を貸すことなく、ただし、とチェルベッロが言った直後、守護者達から呻き声が聞こえてきた。何があったのか、驚くツナにチェルベッロが説明する。

「ただ今守護者全員にリストバンドに内蔵されていた毒が注入されました。」
「!」
「なんだって!?」

驚くツナ達にチェルベッロは説明を続ける。
今回使われた毒はデスヒーターという神経を麻痺させ立つことも困難にさせるものらしく、全身を貫く燃えるような痛みは徐々に増していき、30分で絶命するとのことだった。大空戦なのに皆を巻き込むなんて、と避難の声を上げるツナにチェルベッロはボスの使命だからと答える。ボスの使命によって守護者全員の命がボスの手に委ねられる、それが大空戦なのだと言ったチェルベッロは毒の進行を止める方法が1つだけあると言う。それは、守護者がつけているリストバンドに同種類のリングを差し込むこと。そうすれば、内蔵されたデスヒーターの解毒剤が投与される仕組みになっているらしい。

「この戦いでは大空のリングだけでなく、守護者のリングも重要な要素になってくるんだな。」
「その通りです。そして、大空戦の勝利条件はただ1つ…」
「ボンゴレリング全てを手に入れることです。」
「ですが…」

言葉を区切ったチェルベッロに合わせるように、またディスプレイが切り替わる。

「なっ!」
「そんなっ…」
「みょうじさん!」

そこに映っていたのは、旧校舎近くに設けられた他の守護者のフィールドにあったものよりも丈夫に出来ているポールの上に青い顔で口元を抑えて震えているなまえが立っていた。よく見ればその目には涙も浮かんでおり、見ていたツナ達はなぜ彼女が!?とチェルベッロに詰め寄る。対するチェルベッロはひどく淡々としていた。

「雪のリングのみをポールに置いた場合、リングを触れる者がいなくなる為、唯一守護者以外で触れるみょうじなまえ氏にリングを持ったままポールにいて頂くことになりました。」
「それならば、ポールにリングのみを置いて、なまえ殿はポールの側で待機という形でもいいはずだ!」
「それはなりません。」

バジルの言い分にピシャリと反対したチェルベッロは理由を説明する。

「先の雪の守護者戦で、彼女は我々の考えの及ばない行動をとることが証明されました。」
「この状況下で彼女が大人しく待機しているとは考えにくい。そう判断した結果です。」

チェルベッロの説明にツナ達は反論出来なかった。なまえの守護者戦の乱入、そこからの行動は確かに予測不可能なものであり、友人の為なら危険な場所にも飛び込んでいくようななまえが大人しく待機しているとは思えない。

「大空戦の勝利条件である全てのリングは勿論雪のリングも含まれていますが、雪のリングは他の7つのリングが揃った場合、自動的に揃っている方に含まれることとします。」
「こちらがリングを全てセットできるチェーンとなります。」
「分かったよ!急ごう!早くしないとみんなが!」

チェルベッロから渡されたチェーンを慌ててズボンのベルト部分に取り付けるツナに、チェルベッロは勝負開始後は特殊弾を含めた外部からの接触を禁止すると説明する。ツナの代わりにリボーンが了承したことを伝えた時だった。

「!」

ツナの真横からXANXUSが素早い動きで殴り、その勢いのままツナは飛ばされ、壁に激突した。ドゴォッという大きな音を立てる壁にバジルが沢田殿!と声をかけるが返答はない。チェルベッロがまだ始まっていないと注意するが、XANXUSは早く始めたいと言ったのは向こうだと不敵に笑うだけで悪びれるつもりもない。

「卑怯だぞ、XANXUS!」
「ああ?特殊弾を撃つ前はまずかったか?」

非難の声を上げるバジルなど気にも留めず、わざとらしく言うXANXUSに舐めるなよ、と静かに言ったのはリボーンで、俺を誰だと思ってるという言葉と共に、ツナがいたところからボゥッと大きな炎が灯る。
瓦礫の中立ち上がったツナに、XANXUSを片手間に相手にするのは無理だと忠告するリボーン。それに分かってると答えたツナは額に炎を灯して、瞳は鋭くXANXUSを射抜いていた。

「先にこいつを片付ける。」

遂に大空戦が始まった。

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