リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的77

昨夜行われたリング戦で、校舎が損壊した。しかしここに通う大半の生徒はその事を知らず、今日もいつも通り登校している。自身のテリトリーである応接室から登校する生徒らを見るのは昨日戦いを終えたヒバリだ。
昨夜行われたのは雲の守護者戦。ヒバリは難なく戦う相手となったゴーラモスカなる機械仕掛けの巨体を倒し、更には椅子に座って見ていたXANXUSをけしかけた。それに乗ったXANXUSだが、その目的はゴーラモスカの原動力となっていた9代目を途中で乱入したツナに傷つけさせ、弔い合戦という流れにもっていく為だった。結果として、ツナはまんまと罠に嵌り、今夜弔い合戦という名目の大空戦が行われることとなった。自身をダシにされたことを思い出したヒバリは苛立ち、むすりと顔を顰める。

「!………………。」

そんなヒバリの目に、ある3人組の女生徒達の姿が入る。自身の幼なじみとその幼なじみが贔屓にしている友人2人だ。
自然とヒバリの目線は幼なじみと友人に挟まれて笑っているなまえに向く。ニコニコと屈託なく笑う彼女はとても幸せそうで、見ているヒバリの胸がじんわりと温かくなってくる。
彼女を見て思い出すのは一昨日の雪戦。本来なら無関係なはずの彼女は、友人が死ぬかもしれないというだけで乱入し、弱いなりに奮闘した。真っ先に死ぬはずの彼女は友人の為だからか、どれだけ転んで怪我をしようと、諦めることはなく、必死に友人を救おうと動いていた。その姿にこれまで彼女を弱いからと噛み殺すはずなのにしてこなかった理由が分かった気がした。彼女は心が強いのだ。それも、自分の事よりも人の事になると格段に強くなる。それが分かって、納得した。
そうやって考えているうちに3人は昇降口に入っていき、姿が見えなくなった。そこでヒバリは我に返る。自分がずっと彼女たち、正確に言えばみょうじなまえの姿を目で追っていたことにようやく気づいたのだ。何故、と考えても答えは出ず、モヤモヤを抱えたヒバリは窓から離れ、応接室を出た。


ヒバリに見られていたことなどつゆ知らず、なまえは由良とくるみに渡したい物があると言って鞄の中から小さな包みを2つ取り出し、手渡した。もらった2人はきょとりとしていたが、不思議そうにする由良に対し、もしかして、と期待に満ちた表情でなまえを見たくるみに頷いたなまえは開けてみてと促す。

「これ…」
「なまえちゃん…」

包みを開けて出てきたのは小さな人形、というよりもフィギュアだ。なまえが1番好きだと言っていたゲームに出てくるキャラクターのそれは、確かランダムで販売されているものだったはず。突然渡されたビー玉サイズのフィギュアに由良と、話の流れ的にツナ達に渡ったようなお守りかと期待したくるみも戸惑い、どういうことかとなまえに目を向ける。なまえはニコニコしたままお守り!と元気よく答えた。

「ああ、これが例の…」
「えっと、京子ちゃん達と、作らなかったの?」

お泊まり会で原作の流れを教えられた由良はようやく納得したが、詳しい内容を知っていたくるみはまだ戸惑っている。そんなくるみの問いにギクリと肩を跳ねさせ、視線をあちこちと動かしたなまえは暫くそうした後、小さく「間に合いませんでした」と答えた。
それもそのはずで、なまえはそもそも京子達からお守り作りを誘われていない。何故なら、京子達は由良とくるみがリング戦に関わっていることを知らないからだ。もし知っていたのならなまえも誘っただろうが、知らなかったのと他クラスで会う機会も減ってしまい、遠慮されたのだ。加えて、なまえが2人がリング戦に参加していると知ったのは一昨日。作ろうと思ったのが昨日。材料も何もない状態で始めたとて間に合うはずもなく、徹夜状態でこうして登校しているが、せめて何か渡したいとなった時思いついたのがこのフィギュアだった。

「そのキャラね、一番防御力高いからたぶん2人を守ってくれると思うんだ。」
「の割にはアンタベンチにすら入れてないけど。」
「サポートにもいないよね。」
「だって使い方分かんない…!」

2人を守るのは首にかけられているリングだが、なまえは、というより由良もくるみもリングを信用していないので知らない話である。
同じゲームをやっている2人に指摘され言葉を詰まらせたなまえはとにかく!と強制的に話を変えた。

「2人とも、頑張ってね。何があるか分かんないんだから。」

一昨日の夜、3人で今後の事について話した時一番気になったのは今日の大空戦だ。大空戦では守護者全員参加のボス以外毒にやられ、リングを嵌めて解毒するという内容だったが、果たしてそれは自分たちにも関わるのか、正直なところ分からなかった。何せ雪のリングは雪の守護者以外触れないのだから。結論は出なかったが、総力戦となる大空戦に参加しないというのは考えにくい。どんな形であれ、戦闘は免れないだろうというところで話は落ち着いた。だからこそ、気休めであってもこういうものを渡しておきたいし、持っておきたかった。

「当然。絶対死なない。」
「必ず帰ってくるね!」
「まあ、私らの代わりにこれがボロボロになるかもしれないけど。」
「大丈夫!それ5体くらいあるから!」
「スペアあるんだ!よかったねっ、由良ちゃん!」
「そういう問題じゃないでしょ。」

なまえの応援に安心したように笑って答えた由良とくるみは、もらったお守りを大事そうに制服のポケットにしまった。

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