リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的76

雪の守護者戦を終えた由良、くるみは乱入してきたなまえと共にディーノ、ロマーリオから傷の手当てを受け、由良が世話になっている薙刀の道場に訪れていた。道場には由良の薙刀の先生が住んでおり、申請をすれば通う子供とその友人も泊まることができる場で、今日3人はここに泊まるつもりで荷物も持ってきていた。
手当てを受けるとなり、ディーノがカモフラージュで押さえている廃病院に移動する際、3人でよく話し合うべきだと話がついた。なるべく早い方がいいということになり、それならばと由良が道場のことを思い出し、提案したのだ。2人はそうしようと快く受け入れ、家族に連絡を入れたり泊まる準備をしたりとしていた。

「広い…!」
「旅館みたいだねっ!」
「2人とも荷物置いたら布団敷くの手伝って。真ん中でいいよね?」

由良が押し入れから取り出した布団を慌てて荷物を置いて受け取ったなまえ、布団が敷きやすいように荷物や家具を端に寄せるくるみは頷いた。3人で布団を敷き終わり、旅館並みの大浴場にゆっくりつかって髪も乾かして寝る準備も整えたところで、道場に来る途中のコンビニで買ってきたお菓子やジュースを開けて机を囲んだ。

「第1回パジャマパーティーを始めます!カンパーイ!」
「カンパーイ!」
「はいはい。」

ジュースが入った紙コップをぶつけ合って一口飲んだ3人はお菓子をつまみ出す。これ限定のやつだ!やら新発売のこれおいしい!など、口々に感想を言っていく3人は、一通り言い終わると黙り込んだ。
話し合うべきだとしたのはいいものの、どう切り出すか考えあぐねていたからだ。目の前のお菓子を食べながら、どう話し出そうか暫く黙って考える。

「私さ…」

そんな中話し出したのは由良だ。コップを両手で持ち、机の上のお菓子をぼんやりと見つめながら話し出した由良に、なまえ、くるみは黙って目をやる。

「くるみが羨ましかったんだよね。京子みたいに可愛くて、ハルみたいに元気で、でもヒバリみたいに強くて…そんなくるみがいいなって思ったし、ズルいなって思ってた。なまえも、私といる時よりも、なんか、生き生きしてるように見えてさ。なんか、どうでもいいやって、思っちゃった…」

由良の話に黙って聞いていたなまえは否定しようと口を開いたが、それより早くくるみが私もと声をあげる。

「私も、由良ちゃんが、羨ましかった。すごく落ち着いてて、大人っぽいのに、それだけじゃなくて、少し子供っぽいところもあって…それに、なまえちゃんだけじゃなくて、皆からも頼られてる、頼もしい存在の由良ちゃんを見て、私もそうなりたいって思ってた。でも、それが由良ちゃんの魅力なんだなって思うし、私には到底なれないなって思って、いいなって思ってた。」

そうだったんだ。2人の心の内を聞いて、なまえは胸の内で呟いた。同時に、2人から見た自分がどう映っているのか分かり、だからこそ、言わないと、と思って口を開いた。

「私にとって、2人とも、同じくらい大切なのはさっきも言った通り変わらない。でも、私にとって、2人が同じ存在っていうわけじゃない。由良といれば自分は何も心配になることも不安になることもないって安心できるし、くるみといれば自分は今のままでやりたいようにやって大丈夫って元気づけられる。そう思わせてくれたから、2人に傷ついてほしくない、そう思ってる。」

2人を真っ直ぐ見て伝えたなまえに、2人は目を潤ませて嬉しそうに微笑んだ。しかしくるみはすぐに俯いて、膝の上に乗せた拳を強く握り、震わせた。
不思議そうにくるみを見る2人の視線を感じながら、くるみはギュッと目を閉じて、落ち着かせるように息を吐き、顔を上げた。

「あのね。私、2人に隠してたことがあるの。」

言って、ぐっと唇を噛んだくるみは意を決したように口を開いた。

「なまえちゃんには、申し訳ないんだけどね、たぶん、この先も、私たちはこうやって巻き込まれて、怪我をすると思う。」
「っ…」
「そんなの分からないって、普通なら思うと思うんだけどね、私には分かるの。」
「どういうこと?」

息を呑んでくるみを凝視するなまえの代わりに由良が問いかける。するとくるみは悲しみを滲ませた笑みを浮かべ、だって、と答えた。

「私達がいる世界は、漫画の世界だったから。」

くるみの言葉に、2人とも目を見開く。2人の様子に、信じられないかもしれないけど、と言葉尻をすぼめて話すくるみは俯いてしまい、表情を窺うことが出来なかった。しかしそれは、由良がやっぱりと呟いたことでパッと顔を上げ、由良に視線を寄越す。

「私はアニメだったのを知ってた。たまに見るくらいで、内容とかはよく分かんなかったけど、でも、ツナがよく出てたのは覚えてたから、この世界はもしかしたらあのアニメの世界なのかもって思ってた。ただ、アニメになるくらいならたぶん漫画もあるんだろうなって思ってたから、くるみから漫画だったって聞いて、納得した。」
「じゃあ、由良ちゃんも…」

期待を滲ませたくるみの声にうんと頷いた。

「私、OLだったんだよね。通り魔に刺されてこっちに生まれた。」
「わ、私はっ、高校生で、でもずっと病気だったから学校行けたことなかったし、病気も治らなくてそのまま…」
「そうだったんだ…」

思わぬカミングアウトに驚いたが、それ以上に自分と同じような体験をしている存在がこんなに身近にいたことに驚いている2人に、なまえは呆然としながら、しかししっかりと私は、と声をかける。

「大学入学前に、トラックに轢かれて、転生した。し、この世界が漫画だってことも、知ってた。だから、今日も並中に行けた、んだけど…」

なまえのカミングアウトにも驚いて、3人ともお互い驚いたまま顔を見合わせて、やがてほぼ同時にふっと吹き出した。

「まさか、3人全員転生してるなんてねっ…」
「しかも皆記憶持ってる…!」
「私すっごい辛かったんだけど知らないフリするの!」
「なまえちゃん嘘つけないもんねっ…」

皆安堵したように顔を緩め、くつくつと笑いながら話す。あれだけ自分しか知らないからと悩んでいたのが、馬鹿らしく思えてくる。3人は一頻り笑ってから、非常にスッキリとした心地で、晴れやかな表情でお互い見やる。

「2人には悪いんだけどさ、2人といる時は、私も知らないフリしないでもいいかな?」
「もちろん!私ももっと仲良くなりたいから、出来ればこれからは言いたいことたくさん言っていきたいなっ!」
「私も、これからは隠し事なしにしたい。」
「じゃあ約束ね!」

3人とも同じ思いだと言うことが分かり、なまえが小指を立てる。察した2人は同じように小指を出して、なまえと由良、くるみ、それぞれ小指を絡める。

「これからは、言いたくないこと以外隠し事はしーない!」
「破ったら針千本?」
「それぞれに一番効果的な罰ゲームにしようよ。その方がやる気出る。」
「運動は嫌です。」
「なまえはまず外に出るところからね。」
「頑張ろうね!なまえちゃんっ!」
「なんで私のはすぐに決まるの!?」

指切りげんまん、とお馴染みの歌を歌って指切った!と小指を離す。罰ゲームの話題で盛り上がる3人の互いへの思いは、今までのものと違い、確固たる信頼へと変わっていた。

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