リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的74

突然聞こえた声に驚いたくるみが出所を見れば、そこには汗だくで髪が乱れた状態のなまえがいた。くるみがなまえちゃん!?と声をあげれば、由良も気づいたのかなまえ!?と驚いたように声を出す。
なまえはそんな2人を気に留めることなく、滑って転びかけながらも2人の元へ駆け寄り、くるみと同じように由良の腕を掴み、引き上げようとする。それに2人は先程喧嘩していたことも忘れて焦り、どうしてここにだの危険だから早く離れろだの言うが、なまえは嫌だと首を振る。なまえが来たからか、くるみも引き上げる力を強め、由良を校舎内に引っ張った。

「なまえ、アンタ何考えてんの!?」
「なまえちゃん、ここは危ないから早く離れないと!」
「ていうかなんでここにいんの。」

くるみ、由良から矢継ぎ早に言われたなまえは黙って聞いていたが、2人の言い分に納得いかず、苛立ったように「2人のせいじゃん」と口を開いた。言われて驚く2人に構わず、なまえは続ける。

「何考えてるのも、離れても、こっちのセリフだよ。2人ともこんな危険な場所で何してるの?あの電話は何?理由聞くなとか、何も言うなとか言われたけど、無理だよ…友達が、大切な友達が変な様子で、まるで、追い詰められたみたいな感じで電話してきたら、何があったのって聞きたくなるし、力になりたいって思うに決まってるじゃん!」

強く言うなまえに、由良もくるみも何も言えず、ただ黙っていた。黙っている2人をいいことに、なまえの勢いは止まらない。

「私にとって、2人は同じくらい大切なの!そりゃ、私は体力もないし運動なんて全然出来ないから2人には迷惑かけてばっかりだけど、だからって2人に守られて終わりなわけないじゃん。私だって、2人がすごく大切なんだから、何も出来ないなりに、力になりたいって思ってるんだから、だから、2人のことならなんでも分かるようになりたいし、悩みとか、不安とか、抱えてたなら気づいてきたつもりだった。言いたくないことなら、言えるまで待ったり、2人の気持ちを考えてたつもりだった…」

泣きそうに顔を歪め、俯いたなまえはでも、と言葉を区切る。

「2人とも、さっき電話した時、何か、諦めてるみたいな、自殺するみたいな、そんな投げやりな感じがしたから…そこまで追い詰めてる何かがあるんだって思ったら、いてもたってもいられなくなって…無理矢理にでも、話聞こうと思って来たら、2人とも、こんな危ない所にいて…ねぇなんで?なんで2人がこんな事しないといけないの?何か、悩んでるんだったら、不安なことがあるんだったら、話してよっ…私、それしか出来ない…聞くことしか出来ないから、話してよぉっ…」

最後には泣いてしまったなまえに、由良とくるみはお互い顔を見合わせ、脱力したように1つ息を吐いた。それはまるで仕方ないなぁとでも言うようなもので、2人とも少し困ったように微笑んでなまえに呼びかける。

「なまえちゃん、ごめんね。ちゃんと言えなくて。」
「私ら、このリングを1つにしないといけないんだけど、自分で外すと死ぬみたいな感じになってさ、片方が死ねばいいみたいに言われたから、それでちょっと諦めてた。」
「そんなの捨てればいいじゃん…」
「私もそうしたかったんだけど、説明の順番逆にされちゃって、どうしようもなかったんだよねぇ…」

本当に困ったように説明する2人を見て、なまえは2人が見せてくるリングをキッと睨んだ。そして2人に確認するように自分で外したら死んじゃうんだよね?と聞く。聞かれた2人はきょとりとしながら頷けば、なまえは徐にリングをむんずと掴み、そして、思い切り引っ張った。

「こんなののせいで、2人が死ぬなら、私が捨ててやる!」
『!』

なまえの言葉と共に、ブチリとチェーンが切れ、リングが由良、くるみの首から外れた。


観覧席で見ていたツナ達、ヴァリアー、そしてチェルベッロらは皆驚いていた。それもそのはず、雪のリングは触れる人間が限られており、リングに認められた者でなければ弾かれてしまい、触れることすら出来ない。
現時点で触れることが出来るのはボンゴレ9代目、そして今回守護者候補として選ばれた由良とくるみのみだったはずだ。しかしなまえは弾かれることなくすんなりと触れられ、見る限り体に異変は見られない。こんなことが起こり得るのか、ツナはリボーンを見るが、その直後、小さな呻き声と共にどさりと人が倒れる音がして再びモニターに視線を戻す。見ると、なまえにリングを外された2人が毒を注入されたのか苦悶の表情を浮かべながら倒れていた。


なまえは2人から外したリングを空いた穴の外に向けて投げようとして、その前に小さな呻き声が聞こえ、振り返った。すると、先程まで普通に会話していた2人が倒れているではないか。

「えっ…?」

突然倒れた2人に驚き、なまえはリングを投げることをやめ、2人に駆け寄った。

「由良っ!くるみっ!ねえ!返事して!」
「両者とも、リングが外された為、猛毒が注入されました。」

何故倒れたのか、原因が分からず下手に体を触れないナマエが必死に2人に呼びかけていれば、チェルベッロの淡々とした声がどこからか聞こえてきた。その声に驚き、また、その内容にも理解が追いつかず、はく、と声にならない息が吐き出される。
何、それ…そんなの一言も言ってなかったじゃん…!
てっきり自分ではない他人が外せばどうにかなると思っていたなまえはショックで動揺を隠せない。このままでは、2人は死んでしまう。2人を死なせないために来たのに、これでは本末転倒ではないか…!

「どうすれば、2人は助かるの…」
「校舎に仕掛けられたトラップを停止する装置に完成したリングを嵌めることで解毒薬が注入され、間に合うかもしれません。」
「ただし…」

言葉を区切ったチェルベッロに合わせるように、1番奥の教室からドガン!と大きな音を立てて爆発が起こる。残念なことに、ちょうどバトル開始から15分経ってしまったようで、時限爆弾が爆発し出した。爆発は少し間を空けて起こるようで、3人がいる位置までは残り2分と告げられ、時間が無い。

「その装置ってどこ!?」
「2階、中央の教室にあります。」
「っ…!」

間に合わない、かも…!今いる位置から教室までの距離は教室2つ分。通常なら、足が遅いなまえでも2分ギリギリで着きそうな場所だが、凍った床ではそうはいかない。滑って転んで、とここに来るまでも何度も足を取られたのだ。間に合うかどうか、自信が無い。
しかし、そうも言っていられない。自分が動かなければ、2人が助からないのだ。転ぶくらいなんだというのだ。ここぞという時に素晴らしいバランス神経で乗り越えてみせる!そう意気込み、リングを1つに完成させたなまえは駆け出した。

「!え、何…!?」

その瞬間、ピーという高い音がして、なまえのいる場所にナイフが何本も飛んでくる。避けられないなまえは腕を前に交差させ、ガードするように構えたが、ナイフは何かに弾かれたように跳ね返り、床に落ちていく。

「えっ…?」

どういうことかと目を白黒させたなまえだが、すぐにハッと我に返り、中央の教室に向かって走る。


何度も転んで、更には幾度もセンサーに引っかかり、様々なトラップが襲いかかっているはずのなまえだが、転んだ時以外今のところ無傷の状態だった。それというのも、全てのトラップがなまえと一定の距離を空けたところで弾かれ、なまえに当たらないのだ。
見ていたツナはどういうこと?と口に出す。するとリボーンが聞いたことがあると言って、話し出す。

「雪のリングは本来、リングの保持者を守る役割も担っているらしく、様々な脅威から、あらゆる攻撃から保持者を守るよう加護が施されている、と。」
「じゃああれが…」
「恐らくな。」

それが何故由良やくるみではなく、なまえに反応するのかは分からないが。心の中で呟き、ボルサリーノの鍔を下げたリボーンはモニターに映し出されるまた転んでいるなまえに視線を移す。

「ぅっ…つ、着いた…!」

転んだ拍子に顔をドアにぶつけながらも、無事目的地に着いたようで、安心したように呟いていた。


凍って動かしにくいドアをなんとか力を込めて開け、停止装置を探す。どこからかチェルベッロの残り30秒ですという声が聞こえてきて、焦る。

「!あった…!」

停止装置は教室の隅に置かれていて、ちょうど物置として使われていた場所だったのか、所狭しと置かれた物を避けながら急いで向かう。またどこからか残り15秒と声が聞こえてきた。

「間に合え…間に合え…!」

バクバクと忙しなく鳴る心臓に気づかないフリをして、装置に近づく。急いだからか、なんとか装置に辿り着きリングを穴に嵌めた瞬間、ピーという高い音が装置の方から聞こえてきた。

「ぇ…」
「なまえ!」
「なまえちゃん!」

目の前がカッと光り、動けないなまえの耳に、由良とくるみの声が聞こえた。


ドガン!という大きな音の後、カメラが壊れたからかザーッという砂嵐の画面、音が流れ、状況が全く分からなくなったツナ達は、息を呑んだ。そんな、まさか…考えたくないが、考えついてしまった最悪の結果に、信じられない思いで、祈るようにモニターを見る。

「停止装置にリングが嵌められた為、校舎内に仕掛けられた全てのトラップ、並びに両守護者につけられたリストバンドから解毒薬が注入され、解除されました。」
「っ3人はっ…!」
「生存を確認して参りますので、暫しお待ちください。」

チェルベッロの言葉に自分も行くと言ったツナ達だが、それは認められず、観覧席に設けられた赤外線センサーも解除されなかった。

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