リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的73

雪のリング戦、最初に仕掛けたのはくるみだった。
凍って滑るはずの床をものともせず、強く踏み込んで由良に突っ込んでいく。途中センサーが反応するも、レーザーが放射されるより早く避け、由良が持つ薙刀を持っていた銃で殴り、体勢を崩す。

「!」
「っ!ぁ……ぐっ!」

体勢を崩された由良が持つ薙刀の柄がちょうどくるみの首にかかるチェーンに引っかかった途端、由良が何かに気づいたように素早く薙刀を引き、くるみを蹴り飛ばす。飛ばされたくるみは氷で滑りながらもなんとか踏みとどまり、少し咳き込んだ。由良は顔を顰めながらくるみを見る。が、それも一瞬で、首を軽く振った由良はセンサーに引っかかり、避ける勢いでくるみに向かっていく。
気づいたくるみは銃を撃とうと銃口を由良の足元に向け、しかし撃つことはなく銃を下げた。その下げられた銃目掛けて由良が薙刀を振り上げる。驚いたくるみだが、銃は握ったままで、しかしその銃口が由良の首にかかったチェーンに引っかかる。勢いよく上に上がった銃に引っ張られるようにチェーンが外れかけ、くるみは咄嗟に銃を離し、持ち直しながら引いたと同時に後ろに下がる。

「どうしたんだろう。2人とも…」

観覧席で見ていたツナ達は2人の動きがどこかぎこちないように見えて、不思議そうにツナが呟いた。リボーン、後から合流したディーノは2人揃って険しい顔でモニターを見る。しかし、リボーンがポツリと悪い癖が出たな、と言う。

「悪い癖?」

聞こえたツナが聞き返せば、リボーンはああ、と頷く。どういうことかと皆がリボーンを見れば、リボーンはモニターに目を向けながら口を開いた。

「アイツら、自分が死ぬつもりだ。」
『!』

リボーンの言葉に皆目を見開く中、ディーノは重く頷く。

「元々、由良は自分が死ぬことに抵抗がなかった。前話した時それが垣間見えてな。だから自分の命を軽く見るのをやめさせるように、修業では主に精神面を鍛えていたんだ。」

獄寺のバトルを見に行かせたのもそれが理由だと続けたリボーンに、皆息を呑んだ。リボーンに続いてディーノがそれから、と話す。

「くるみも同じように、自分のことをあまり重視していない節が見られた。恭弥と話す時に、なまえを優先しすぎて自分を考えていないように話すことが多く、少し心配していたんだが、やっぱりそれが出たようだ。」
「そ、それって、下手したらどっちも死んじゃうかもしれないってことじゃ…!」

青い顔をしたツナが言えば、リボーンもディーノも頷き、だからまずいんだと言う。

「川崎さんっ!」

そこで、モニターから酷く慌てた由良の声が聞こえ、見れば強力なブリザードがくるみを襲おうとしたのを由良が突き飛ばし、代わりに喰らっていたところが映し出された。バキバキッ、ガシャーンッという大きな音がしてブリザードの勢いに飛ばされた机や椅子が木造の校舎を壊し、大きな穴を開けた。

「由良!」
「由良ちゃん!」

ツナ、くるみが叫び、くるみが急いで巻き込まれ、穴の外に放り出された由良の腕を掴んで滑る床を精一杯踏ん張って引き上げようとする。しかし、踏ん張って圧力をかけているからくるみの足元の氷が溶け、つるつると滑ることでバランスを崩し、非常に危険な状態だった。見かねた由良が手を離せと言うがくるみは首を振って離さない。そんなくるみを見て、痺れを切らしたように由良が口を開く。

「私が死ねば、川崎さんの勝ちで終わる。それで丸く収まるでしょ…!」
「収まるわけないよ!」
「収まるでしょ!私よりも川崎さんの方が必要とされてるんだから!」

由良の言葉にくるみは驚き、目を見開いた。そして次に内から怒りが込み上げてきて、一度ぎり、と歯を喰いしばったが、それで収まるはずがなく、息を吸い、口を開いた。

「必要とされてるのは、私じゃなくて由良ちゃんだよ。」
「?何言ってるの?川崎さんの方でしょ。」
「由良ちゃんだよ!」

今度は由良が驚く番だった。くるみは怒りからか、由良を掴む手の力を強めたまま続ける。

「由良ちゃんっていっつもそうだよ!勝手に決めつけて、勝手に諦めて、自分はどうせなんて言って…!全然周り見てない…見ようとしてない!由良ちゃんがいた時の方が、なまえちゃんは安心してる。由良ちゃんを見た時のなまえちゃん、いつも真っ先に由良ちゃんのところに行く。私といても、私が由良ちゃんと同じタイミングで来ても、いっつも…!私なんかより、よっぽど頼りにされてるのに、それに気づいてるはずなのに知らないフリしないでよ!」

くるみの言葉に驚いた由良は、しかしむくむくと怒りが沸き上がってきた。何を勝手なことを言っているのか、そんな思いが込み上げてきて、負けじと口を開く。

「川崎さんだって同じでしょ。なまえが私といる時よりも、川崎さんといる時の方がよく笑ってる。いつも一緒にいるし、私よりもあの子のことよく見てる。川崎さんといる時の方がなまえは自分を出せてるし、安心だってしてる。勝手に決めつけてるのは川崎さんの方でしょ。川崎さんは私よりも強いし、頼りになる。そう思ってるからなまえがよく一緒にいるんでしょ。川崎さんだってそれに気づいてるはずなのに、知らないフリしてるんじゃないの。」
「私といる時いっつも由良ちゃんのこと気にしてるもん!」
「私といる時だって川崎さんのことばっかり言ってる!」
「っていうかなんでずっと苗字で呼ぶの!?そういうところホント嫌!」
「川崎さんだって遠慮してるところあるじゃん!あれやめてよ!」

段々ヒートアップしていって、ついに互いの不満について言及してきた2人。今がどういう状況なのか頭からすっかり抜けているようだった。そのまま言い合いは収束することなく続いていき、由良が苛立ったようにとにかく!と叫ぶ。

「なまえが大事に思ってるのは」
「由良ちゃん!」
「川崎さん!」
「どっちも大事に決まってるじゃん!」

由良、くるみが同時に叫んだ言葉に即座に第三の声が入り込んだ。

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