リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的69

昨日の雨の守護者戦で山本が勝利したことで、なんとか首の皮1枚繋がった状態で乗り切れたツナ達。今日はまだ誰かも分かっていない霧の守護者戦が行われる。

「今日は由良が見に行け。」
「私が?」

ツナに修業の最終段階のやり方を伝えたリボーンは、ツナが取り掛かると昨日見に行かなかった由良に言った。なんでも、霧の守護者は術士がなることが多く、嵐戦で由良を見た敵の霧の守護者候補が一発で術士だと見抜いたことから敵もそうだと判断し、由良の勉強になるだろうということらしい。

「骸に会えなくなったんだろ。」
「………………よく知ってるね。」
「当然だ。俺は一流の殺し屋だからな。」

以前はツナの教育の仕方が問題なのでは、と思ってツナに注意していたが、黒曜襲撃時やこれまでの修業の中で、リボーンが殺し屋だというのが嘘とは思えなくなっていた由良は曖昧に笑って返した。そんな由良達の上空からバサバサと鳥が羽ばたく音が聞こえ、見れば鷹が金髪の赤ん坊を咥えてやってくるではないか。

「!えっ…ちょっ…」
「来たようだな。」
「えっ…?」

困惑する由良以外、リボーンもバジルも平然としていて、更にリボーンの口振りからあの赤ん坊とは知り合いだと推測できた。赤ん坊は地面に降り立つと「ちゃおっス」と挨拶をしたリボーンに強烈な頭突きをかます。

「えっ…ちょ、ちょっと君!危ないよ。怪我しちゃう。」

突然の事で驚いた由良だがすぐに我に返り、赤ん坊を抱き上げてリボーンから引き離す。抱き上げられた赤ん坊は由良を見上げ、目を見張った。

「リボーン、コイツが…」
「ああ。雪の守護者候補、由良だ。由良、ソイツはコロネロ。俺の腐れ縁だ。」
「腐れ縁…?」
「さっきのは軽い挨拶だ。コラ!」
「そ、そうなんだ…」

なんでもないように見えるリボーンと、冗談抜きで本当に言っている様子のコロネロに呆気に取られた由良は相槌を打つだけで精一杯だった。地面に降ろされたコロネロは、リボーンとヴァリアー側の霧の守護者候補、マーモンについて話していた。途中彼が頭に乗せているカエルについて酷い言葉をつらつらと並べていたり、聞き慣れない単語が聞こえたりとしていたが、コロネロが最後に言ったツナ側の霧の守護者に勝ち目はないという言葉だけは痛い程理解出来た。それに対し、リボーンは何故そう言いきれるんだ?とさも当たり前のように聞き返し、こっちの霧の守護者も知らねーくせにと言葉を零す。

「そーだよリボーン!!結局昨日の夜も分からずじまいだったし…」

リボーンの言葉に反応したのは少し離れたところにいたツナだった。超死ぬ気モードを解いたツナはいい加減教えてくれとリボーンに詰め寄った。リボーンは最初、修業が手につかなくなるから教えないと答えたが、気になって手につかないと反論するツナにしょーがねーな、と嘆息した。

「じゃあ山下りて、ジュース買ってきてくれ。」
「なんでそーなるんだよ!」

コロネロの分もと付け足したリボーンに拒否しようとしたツナだったが、ん?と返されて渋々買いに行くはめになった。一緒に行こうとしてくれたバジルはリボーンが甘やかすなと止められ、ツナは1人で山を下りることになった。

「由良。ついでにお前も行ってこい。」
「?分かった。」

ツナが居なくなってすぐ、リボーンは由良について行くよう促し、首を傾げた由良だが、それに従い、ツナを追いかけた。


滑りやすい斜面を利用して山を下りる由良の目に追いかけていたツナの後ろ姿が見えた。

「ツナっ。」
「由良!ついてきてくれたの?」
「リボーンくんに言われてね。体平気?」
「あ、うん!全然!」

2人は話しながら山を下りていく。その途中、以前も見た事のある動物によって抉られた木の幹を発見し、怯えたツナが早く行こう!と急かした。
山を下りた先にはポツリポツリと民家がある程度で、自動販売機は見当たらない。そこで少し先に行ってみようとなり、足を進めていくと、こじんまりとした駄菓子屋が見つかった。現代にもまだあったんだ、と一種の感動を覚えた由良。そしてその駄菓子屋の前に、2人の黒曜生がいることに気づいた。ツナも気づいたようで、黒曜生と知り、咄嗟にひと月ほど前のことを思い浮かべる。
そんなツナたちに気づかない黒曜生らはガムを買う買わないで話していた。欲しがる1人にさっき買ったともう1人が言うと、ガムを飲み込んでしまうと返ってきた。ガムは飲み込むものでは無いというのは中学生の時点で知っているはずだが、飲み込んでしまう1人は我慢できないらしい。まるで子どものようなことを言う1人に呆れたのか、もう1人が箱で買おうとするのを聞いて、聞こえていたツナたちもさすがに驚いて、一体どんな人が買うのか、少し興味を引かれた。

「レシートいい。めんどい。」
「あ。」
「んなーー!?えーー!?」

黒曜生を確かめようと覗き込んだ2人の目に映ったのは、ひと月ほど前、並中生を次々と襲った実行犯、柿本千種、城島犬だった。骸から脱獄したと聞いて、更に様子見まで頼まれていた由良は驚くことは無かったが、ツナは疲れてんのかなぁ!と必死に目を擦ったり有り得ないって!と言い聞かせるように叫び、忙しない。そんなツナに近づく影が、相変わらずムカツク面してんな、と声をかけた。

「んあ!?」
「ぎゃーー!!出たーー!!」
「!ツナ!?」

声に気づいたツナが顔を上げると、城島犬がすぐ近くにいて、目にしたツナは悲鳴を上げて気絶した。まさか気を失うとは思わなかった由良は慌てて倒れかけたツナの腕を掴んで呼びかけるが、完全に白目を向いて気絶しているツナには届かず、応答はなかった。仕方ないからと駄菓子屋の前に設置されているベンチに寝かせ、2人に向き合った。

「今朝ぶり?」

疑問符をつけて言えば、げ、と言わんばかりに顔を顰めて逸らされた。さすがに傷つくんだけど、と言ってもどちらからも返事はない。2人の様子に溜め息を吐いた時だった。

「ちゃおっス。」
「リボーンくん…」

いつの間に追いかけてきていたのか、リボーンが柿本千種、城島犬に声をかけた。ツナのようにここにいるはずがないという反応を見せないところを見るに、どうやら彼らが脱獄したことは知っていたらしい。突っかかる犬を無視し、もう1人の奴はどーしたんだ?と聞いたリボーン。

「ツナの霧の守護者は。」
「!」

リボーンの言葉に、聞いていた由良は目を見開いた。今朝も会ったのに、そんなこと、一度も聞いていなかった。もちろんそこまで仲がいい訳では無いが、彼らが黙っていたという事実に寂しさを覚える。

「お前ら大人しくしてると、ただの嫌な感じの中学生だな。」
「うっへー!嫌な感じはよけーら!!」

そんな由良を置いて、リボーンはツナが寝ているベンチの空いたところに座り、2人(主に城島犬)と話していた。城島犬の技でもある様々な動物にちなんだ差し歯に付け替えるとその動物の能力を体現できる中、サイの能力を使ってど突くぞ!と脅しにかかるが、リボーンは怯むことなく呑気に対応している。
傍観していた柿本千種がやめるように言って少し落ち着いた頃、リボーンはツナがずっと骸たちのことを気にしていたことを伝えた。あの戦いでボロボロにされたにもかかわらず、思い出す度にリボーンが何か知っているのではないかと殺されたりしていないよな、と言って聞いていたらしい。

「そうだったんだ…」

初めて知った由良は、少し申し訳なさを感じていた。ツナが気にかけていたと知らなかったとはいえ、彼女は何度も骸と会って話していたのだから、多少思うところもあるだろう。城島犬はリボーンから聞いて、うぜーと吐き捨て、柿本千種と共に帰って行った。

「てめーにはもったいない霧の守護者らってボンゴレに言っとけ!」

んじゃあ夜な。という言葉を残して去って行く2人に首を傾げた。自分が思い描いていた人物に使うような言葉ではない気がしたからだ。
どういうことかと考えていると、「なんだ由良、知ってたのか」とリボーンから声がかかる。

「骸に、幻術のやり方教えてもらう代わりに様子を見てくれって頼まれてて。それで会ったことがあるくらいだけど…」

未だ考えている最中だからか、どこかぼんやりとした心地で答えた由良にそうか、と答えたリボーンはツナを連れていくぞと言って気絶して意識の無いツナを引きずってバジルとコロネロが待つ山へ登っていった。その後をついていく由良は、なにかに引かれるようにして振り返る。見えるのは、遠くに行ってしまい小さくなった千種、犬の後ろ姿だけだった。


あれから、ツナは目覚めることなく、仕方ないと修業を切り上げ早々に並盛中に着いた由良達。チェルベッロから今日の戦いは体育館で行われると説明を受け、そこに向かえば、既にヴァリアーは揃って待っていた。

「!あれ…」
「ああ。ヴァリアーのボス、XANXUSだ。」
「……………。」

以前はいなかった目つきの悪い、しかし一番威圧感のある男に気づいた由良に答えたリボーンの言葉を聞き、ごくりと唾を飲み込んだ。こちらを見ているはずなのに、ここにあるものではなく、別の何かを憎んでいるかのように睨んでいるように見えるXANXUSに、恐ろしさを覚える。
そうしているうちに、ツナが目覚め、そしてタイミングよく数時間前に会った柿本千種、城島犬がやって来た。何しに来た!と吠える獄寺に答えたのはリボーンで、静かに霧の守護者をつれてきたんだと言う。リボーンの言葉にツナ、獄寺、山本が反応する。

「まさか………六道、骸…!?」
「否。」

千種、犬の後ろから現れたのは骸と同じ三又の槍を持った人物。しかしその声は骸のものよりも高く、身長も低い。

「我が名はクローム。クローム、髑髏。」
「六道骸じゃ、ない…!?」

クローム髑髏と名乗り現れた得体の知れない少女に皆戸惑い、獄寺は最大限警戒しツナに騙されるなと守るように前に立ち、注意する。しかし、ツナは自身の超直感によるものか、彼女は六道骸ではないとはっきり言って否定した。クロームはそんなツナに庇ってくれるんだ、と言って近づく。

「ありがと、ボス。」
「……………!」

そう言ったクロームはツナの頬に口付けた。口付けられたツナ、見ていた獄寺は慌てふためくが、当人のクロームは挨拶だと軽く返すだけ。傍で見ていた由良は目を見開き、喉が詰まるような感覚に陥ったが、以前感じていたものとどこか違う気がして、疑問に思った。
由良が違和感を覚えている間、クロームを仲間に入れるかどうかでまたひと悶着あったが、ツナが頼むと言ったことで落ち着いた。昼間リボーンに呼び出され、ヴァリアー側にいるマーモンについて話していたコロネロも駆けつけた。
了平が円陣をしようと言うのに対し断ったクロームはまっすぐ由良の元に向かう。

「由良。」
「クローム。今朝ぶりだね。」

由良の言葉に頷いたクロームの様子に、クロームを知っているのかとツナが驚いたように問えば、色々あってと答えた。クロームは由良を真っ直ぐ見つめて、言った。

「私、頑張る。だから、見てて。」
「うん。行っておいで。」

クロームの言葉に一瞬目を見張った由良は穏やかに微笑んで、送り出した。ホッとひと息ついたクロームが中央に行ったところで、霧の守護者戦が始まった。

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