リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的67

リング争奪戦が並盛中で行われると知ったディーノはくるみの協力の元、ヒバリにあらゆるシチュエーションでの勝負とそれらしい理由をつけて並盛から遠ざけることに成功した。元のポテンシャルが高いくるみであっても、相手が由良であればとヒバリと共にディーノの修業を受けることになり、同じように並盛から離れていた。バトル当日会場にいなければ失格となり、くるみだけでなく由良も猛毒によって絶命してしまうという過酷な条件を課せられているが、守護者戦の最後に翌日の対戦リングを発表されることと、ディーノが持つ携帯は何処でも電波が繋がることから問題ないと判断し、心置きなく修業に専念できた。海や山、川といった自然の多いところでは必然と電波も繋がりにくくなり、くるみやヒバリの携帯は圏外と表示されることが多かった。

「ふふっ…」
「いい加減盗撮なんてやめなよ。」
「!勝手に見ないでよっ恭弥くん!」

休憩中、手当てを済ませたくるみが以前撮っていたなまえの写真を見て和んでいると、背後からヒバリが心底呆れたように言ってくる。慌てて画面を体に当てて見えないように隠すが、「あの角度、盗撮した時のものでしょ」と全く気にせずヒバリが苦言を呈す。そんなヒバリにくるみはふふん!と勝ち気に笑ってちゃんと許可とってるもんと言い返す。得意気に話すくるみにはぁ、と重い溜息を吐いたヒバリは自身の携帯を確認する。
相変わらず圏外と表示されているのでメールや以前目を通した書類のファイルを確認していくが、ふと、画像フォルダに無理矢理くるみから送られてきたなまえの写真があり、目をやった。トン、と画面を指で叩き、写真を開くと画面いっぱいに夕焼けに照らされて微笑むナマエが映し出される。まるで1枚の絵画のような美しい写真に、並盛に戻れない、学校に行けないことに苛立っていた心が落ち着いていく。

「み〜ど〜り〜たな〜びく〜」
「!」
「わっ!ビックリしたぁ…」

突然ヒバリの携帯が着信を知らせてくる。どうやら少し電波が届く場所に近づいていたらしい。相手を確認し、通話モードに切り替える。

「くるみ、並盛に戻るよ。」
「えっ、恭弥くん!?」

戸惑うくるみを他所に、ヒバリは一言言うと颯爽と並盛に向けて足を進めた。ヒバリの動きに気づいたディーノも引き止めようとするが、聞く耳持たないといった様子でズンズン進んでいき、2人は慌てて追いかけた。


ヒバリが並盛に向かい始めて数時間後、並盛中では嵐のリング戦が繰り広げられていた。
ダイナマイトを使う獄寺に対し、ヴァリアー側の守護者候補、ベルフェゴールが使うのは特殊なデザインのナイフと目に見えにくいワイヤー。途中苦しめられた獄寺だったが、カラクリに気づき、そこから反撃をしてようやくベルフェゴールの首にかかるリングを掴むことに成功した。
しかし、獄寺の反撃によってまるで二重人格のように豹変したベルフェゴールが自身が勝利するために獄寺のリングをつかみ、取っ組み合いが始まった。そんな2人がいる図書室の少し先の教室からドガン!とハリケーンタービンに仕掛けられていた爆弾が爆発し始め、あと1分で獄寺たちのいる図書室も爆発するとチェルベッロから説明が入る。ナイフ、ワイヤーの攻撃で出血が多くなったためか、体力が落ちた獄寺はベルフェゴールを遠ざけ、リングを完成させることが出来ずにいた。

「リングを敵に渡して引き上げろ!隼人!」
「!」

このままでは、リングを完成させる前に獄寺が死んでしまうかもしれない。そんな状況で1番先に声を上げたのは彼の家庭教師、シャマルだった。シャマルは続けてこんなものでくたばるなんてバカげてる、戻れと強く言うが、獄寺も引けないと反論する。更に獄寺は修業に入る前にシャマルから教わったことを思い出したのか、ここは死んでも引き下がれねぇ!と叫び、リングを完成させようと躍起になった。

「ふざけるな!」
「!」

そんな獄寺に怒鳴るように叫んだのは、シャマルと獄寺のやり取りを聞いていたツナだった。突然大声を出したからか、ハァハァと息切れをしながら、ツナは続ける。

「なんのために戦ってると思ってるんだよ!」

その言葉に、モニターに映る獄寺の動きが止まった。

「またみんなで雪合戦するんだ!花火見るんだ!だから戦うんだ!だから強くなるんだ!またみんなで笑いたいのに、君が死んだら意味がないじゃないか!」
「ツナ…」

ツナの言葉に、由良は心が掴まれるような心地がした。何か、引っかかるような、そんな感覚を覚えたが、すぐにドガン!と獄寺たちのいた図書室が爆発し、モニターに目を向ける。図書室の爆発で設置されていたカメラも壊れたようで、ザーという砂嵐しか映し出されないモニターにヒュっと息を呑んだ。
しかし、獄寺は立ち込める煙の中からボロボロの状態で戻ってきた。観覧席に設置されていた赤外線センサーも止まっており、皆倒れた獄寺の元へ駆け寄る。

「すいません10代目…リングとられるってのに、花火見たさに、戻ってきちまいました…」

怪我を負っているにも関わらず、獄寺は言った。その言葉に嬉しくなったツナは無事でよかったと涙しながら零す。
そんなツナたちの元にチェルベッロが近づき、ベルフェゴールが勝利したことを伝えると、その後ろにはヴァリアーの面々が負傷したのかベルフェゴールを抱えてやってきた。そんな中、チェルベッロは明日の対戦は雨の守護者だと告げる。雨は山本らしいので、由良は行けないな、と1人考えていると、ヴァリアー側の部下らしき人物が慌てた様子でやってきた。

「校内に何者かが侵入しました!雷撃隊が次々とやられています!」

その報告に全員が息を呑んだ。一体誰が、そう思うも、次の瞬間ツナ達は顔を綻ばせた。

「ヒバリさん!」

ヴァリアーの人間を倒しながらやってきたのはトンファーを構えたヒバリだった。群れることが嫌いなヒバリが本当にリング争奪戦に参加してくれると分かったツナは喜ぶが、ヒバリがここに来たのは校舎が壊されたこと、不法侵入者が出たことによる怒りからだった。ツナ側の守護者かと思われたヒバリにチェルベッロが注意しようとするが、それよりも早く、部下を倒されたことで怒りを顕にしたレヴィが攻撃を仕掛けてくる。ヒバリはそれを後ろに下がり、足をかけることで応じた。
そんなヒバリに今度は長髪の男、スクアーロが持っていた剣を構えて勝負を仕掛けてくる。殺気立つヒバリはそれに応じようとするが、チェルベッロから守護者同士の場外での乱闘は失格となると警告が入り、ツナ達はヒバリを止めなければと焦り出す。

「まーまー落ち着けってヒバリ。」

そんな中ヒバリの前に出たのは山本で、落ち着かせようと宥めるが、ヒバリは関係ないと言うようにトンファーを振るう。それを今までとは比べ物にならないほどの動きで避け、更には片方のトンファーを掴んで止めた山本に全員が目を見張る。

「そのロン毛は俺の相手なんだ。我慢してくれって。」

山本の動きに止まったヒバリに、これは効いたのではないか、と期待したのも束の間、ヒバリはより殺気を放ち、更にはトンファーから仕込んでいた棘を出して構えた。流石に焦り出す山本に、ひとまず止めなければと待ってください!と声をかけるツナだが、聞く耳は一切持たず、ヒバリの目は殺る気に満ちていた。このままではめちゃくちゃになってしまう、そう思い焦った由良はヒバリの背後から近づく影に気づいた。

「恭弥くんのおバカ!」
「!」
「川崎さん!?」
「くるみ!」

スパーン!と子気味いい音を立てて来客用のスリッパでヒバリの頭を叩いたのはヒバリを追いかけてなんとか追いついたくるみで、ちゃんと話聞かなきゃダメでしょ!と両手を腰に当ててぷりぷりと怒っている。対するヒバリはくるみに怯むことなく、逆に殺気を増してジロリと睨む。勿論それに怯むくるみではない。彼女も負けじと睨み返し、恭弥くんだってさっき学校壊したでしょ!と言い放つ。

「僕の場合は正当防衛だよ。」
「蒸れてるからって問答無用で噛み殺したのは恭弥くんでしょっ。」

くるみの言葉に群れてるほうが悪いとよく分からない持論を返し、くるみも噛み殺されたいの?と問うヒバリ。そんな訳ないでしょ!と返すくるみだが、ヒバリの思った以上の苛立ち具合に内心焦る。
そうしている内に、ヒバリは殺気立ったまま、棘が出ているトンファーを振り下ろす。対するくるみも足を蹴り上げて応戦する。

「す、すげぇ…!」

ヒバリの手首を蹴り上げたことでトンファーがカランと音を立てて転がり、思わずといったようにツナが声を上げる。くるみの動きを見ていたのはツナ達だけでなく、ヴァリアーの面々も同じで、驚いたように目を見開いていた。

「あれが、もう1人の雪の守護者候補か…」
「なかなかやるじゃないか。」
「可憐だ…」

そんな会話が繰り広げられていたが、くるみは殺気立つヒバリを相手にするのに必死で聞こえていなかった。そんな2人に近づく小さい影。

「ちゃおっス、ヒバリ。」
「リボーンくん…」

リボーンだ。リボーンは殺気立つヒバリに今我慢すればいずれ骸と戦うことが出来るかもしれないと言って、ヒバリを説得する。聞いたヒバリは本当か問えば、リボーンが当然のように是と答えたからか、殺気を鎮め、トンファーを下ろした。
ヒバリはそれから山本にスクアーロに負けるなと残して去っていった。

「ちょっ…待ってよ恭弥くん!」
「う゛お゛ぉい刀小僧!貴様その動き、どこで身につけたぁ!?」

追いかけようとしたくるみだが、スクアーロの大声に思わず足を止める。そんなくるみに気づかないスクアーロは明日が山本たちの最後だ、首を洗って待っていろ!と残して割られた窓から飛び去った。
好き勝手言うスクアーロの言葉に静かに苛立っていた。ぷくりと頬を膨らませたくるみに気づいたのは山本で、不思議そうにしながら近づいた。

「くるみ、どうした?」
「武くんは、負けないもん。」

不貞腐れたような表情で答えたくるみに一瞬きょとりと目を丸くする山本だったが、やがて理解し、照れ臭そうに笑った。

「ああ!任せとけ!」
「…………うん!」

ごく自然に頭を撫でた山本に先程の怒りもどこかへ行ったくるみは顔を赤らめて、微笑んだ。そんなくるみはハッとしてそれじゃあ帰るね!と言ってその場を去った。

「ぁ…」

それは、由良と接触しないようにと言われていたからにほかならない対応だったが、声をかけようと思っていた由良は伸ばしかけた手を下ろした。仕方ない、リボーンに頼もう。そう思って、由良は後からやってきたディーノと話すツナ達の話に耳を傾けた。

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