リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的66

数日前から始まった深夜の並盛中にて行われるリング争奪戦は、今日で3日目を迎えていた。初日に行われた晴のリング戦では一時劣勢に立たされるも、京子との約束のお陰か持ち直した了平が勝利を収めた。2日目の雷のリング戦ではまだ幼いランボが出ることとなり、途中10年バズーカで10年後、更には20年後のランボにまで入れ替わったが入れ替われる時間が限られていたことであと一歩のところで現代のランボに戻ってしまい、殺されかけたところをツナが乱入したことでなんとか防いだ。しかし、ツナの乱入により、雷のリングだけでなく、ツナが持つ大空のリングまでもヴァリアー側に渡ってしまい、ツナ達は2対1と差をつけられてしまった。
そんな今日行われるのは獄寺が持つ嵐のリング戦だった。リボーンとの手合わせを終えた由良は、未だスパーリングを続けるツナたちを置いて、先に帰っていた。と、いうのも、骸に言われたからと言って、放ってはおけなかったクロームたちの様子を見に行くためだった。あの日以来、骸は本当に会いに来なくなった。何度呼びかけても応答はなく、クロームに聞いても分からないと首を振られるだけだった。

「ムカつく…!」

訳の分からない腹立たしさを抱えた由良は歩くスピードを速めた。


深夜の学校に行くことを知らない家族たちには急遽道場の方に用ができたと言って誤魔化した。夜遅い時間ということもあって若干渋られたが、帰りは知り合いに送って貰うからと言ってなんとか学校に行くことに成功した。途中ツナ、バジル、リボーンと合流し、揃って学校へ向かう。

「え、迎えに来てくれたの?」
「うん。て言っても、遅かったみたいだけど…」
「帰りはお送りしますね!」
「ありがとう。帰りは送って貰うって言ったから助かるよ。」

どうやらリボーンの計らいで迎えに来てくれたらしいが、一足遅かった。しかしバジルの申し出は素直に受け入れ、どう誤魔化そうかと考えていた由良は安堵した。
学校に着いたツナ達は先に来ていた山本、了平と合流したが、今日戦うはずの獄寺はまだ到着していなかった。てっきりどちらかと一緒だと思っていたツナ達に、リボーンがシャマルが止めているのかもしれないと言ってくる。それは新技が完成していないことに他ならず、ツナ達は不安に駆られながらも先に校舎に入った。

「!あれが…」
「あ、そっか。由良はヴァリアー初めて見るんだっけ。」

ツナの問いに頷いて返した由良は先に校舎にいたヴァリアーの面々を見て、顔を強ばらせた。
こんな連中と皆は戦っていたのか。
ヴァリアー側は余裕そうな表情で、しかし纏う空気は決して優しいものではなく、固く険しいものだった。そのただならぬ雰囲気に息を呑んだ由良は、無意識に頬を伝う冷汗を悟られないよう気丈に振る舞った。

「へぇ…」
「どうしたぁ、マーモン。」

そんな由良を見て、ヴァリアー側のぬいぐるみかと見紛うような大きさの人物が声を零す。近くにいた長髪の男が問いかけると、あの女、と言って由良に目をやった。

「術士だね。僕よりは劣るけど、そこそこ強いよ。もしかしたら、彼女が僕の相手なのかもしれない。」
「!霧の守護者か…」
「いいえ。」

ヴァリアーの会話に否と入ったのは、審判として中央に立つチェルベッロだった。突然入ってきた声に、ヴァリアーだけでなく、ヴァリアーの会話が聞こえていなかったツナ達も驚き、目を向ける。

「彼女は雪の守護者候補の1人、神崎由良氏です。」
「また、彼女が勝利した際には、リング争奪戦に勝利した側の雪の守護者となっていただきます。」
「なっ…!?」
「そんなこと言ってなかったのに…!」
「そりゃ、そうなるでしょうね…」

私が勝てるとも思えないけど。
チェルベッロの思わぬ言葉にツナ達が驚く中、由良は静かに言葉を零す。
何も、考えていなかった訳では無い。
チェルベッロから説明を受けた時、元の母数が奇数なので指輪を多く持つ方が勝利するはずだ。そうなると、雪の守護者候補として選ばれた自分がもし万が一勝利した場合、そちら側の守護者となることは容易に考えついていた。
雪の守護者候補と明かされた由良は、ヴァリアー側のまるで品定めでもするような視線に苛立った。なんでバラすんだ、そう思って内心舌を打ち、チェルベッロを睨む。

「ふーん。あれが雪の守護者候補ねぇ…弱そ。」
「なんた、術士としてそこそこやれそうだったから期待していたのに、僕の相手ではなかったのか。なら特にこれといって実力があるようには見えないね。」
「すぐに死ぬようじゃ俺たちの守護者は務まらねぇ。強くするようにすりゃあいい話だぁ。」
「妖艶だ…」

言いたい放題である。
1人おかしな発言をした者もいない気もしないが、聞こえたのはリボーンだけだったので由良に聞こえたのはベルフェゴールの「弱そう」という言葉のみ。しかしその言葉を聞いて、更にヴァリアー側の同じような雰囲気に好き勝手言われていると感じた由良は苛立ち、ツナに声をかける。

「もしアイツらが勝ったとしても、私がなんとかして皆の指輪を取り返すから、絶対アイツらのとこには行かないよ。」
「えっ!?(何言ってんのー!?)」

由良の発言に戸惑い焦ったツナだが、周りはそうではないようで、了平はその意気だ!と同調し、なんとかなるって!と山本は軽く言い、バジルもこの際目を覆っておきましょう!と力強く頷いた。意気込む由良たちにツナだけが焦りを見せ、それじゃヤバいって!と叫んでいた。ツナの叫びをBGMに、由良はまるで見下すようにこちらに視線を向けるヴァリアーを睨みつけた。しかし睨まれたヴァリアーの面々は強気に笑って返すだけだった。

「あの時計の針が11時を指した時点で獄寺隼人を失格とし、ベルフェゴールの不戦勝とします。」

ギャーギャー騒ぐツナ達を意に介さないチェルベッロの言葉に一気に現実に戻された。ピンと張り詰めた空気の中、一向に現れない獄寺に焦り出すツナたち。時計の針は既に10時59分を指していて、もう1分もない。獄寺が来ると信じていたツナ達も、流石にタイムリミットが出てくると間に合うかどうか、分からない。そんな中、時間は無情にも過ぎていき、残り5秒となった時、突然時計がドガン!と爆発した。

「!」

ツナ達が驚く中、キュッと靴を鳴らしてツナ達の前に現れたのは、タバコを咥え、所々負傷したのか包帯を巻いて、腰にダイナマイトを仕込んだベルトを着けた獄寺だった。

「おまたせしました、10代目!獄寺隼人、行けます!」

頼もしい声とやる気に満ちた顔に、そして時間に間に合ってきた獄寺を見てツナ達は安堵した。
盛り上がるツナ達にまたもチェルベッロから静かにフィールドの説明のため、声がかかる。
今回の嵐のリング戦では、校舎の3階部分全体がフィールドとなるらしい。獄寺が得意とする遮蔽物の多いフィールドだったが、校舎内には至る所に強力な突風を4方向からランダムに発生させるハリケーンタービンが設置される。更にバトル開始から15分後、嵐のリングが完成しなければ、ハリケーンタービンに仕掛けられた爆弾が順次爆発し、校舎3階部分を全壊するということだった。ハリケーンタービンから吹き出される突風は多数の机、椅子を吹き飛ばし、廊下の窓ガラスを割る程の威力でまともに喰らえば外へ吹き飛ばされてしまうだろう。
説明が済み、獄寺の家庭教師となったシャマルも応援に駆けつけたところで、バトル開始となった時、了平がいつものいくぞ!と骨折しているはずの腕を動かして言ってくる。バトル観戦は初めての由良は首を傾げるが、すぐに思い当たった獄寺は恥ずかしがって拒否した。

「俺の勝負に円陣なんていらねー!!」
「円陣なんてやってたの?」
「おう!盛り上がるからな!」

円陣なんていつ以来だろうか、と言うレベルでやった記憶が無い由良はどちらかと言えば獄寺と同意見だった。しかしツナが皆で団結した方がいいと円陣を勧め、昨日の戦いで意識不明の重体までなってしまったランボの服のシッポ部分も入れて円陣をする事となった。

「獄寺ーッファイッ!」
『オー!!!』

円陣を終えた獄寺が前に出たことで、嵐のリング戦が始まった。

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