リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的61

リボーンからリングについて、そして昨日何が起こったのか、これから何が起こるのか、全て説明を受けた由良は自室で考え込んでいた。手のひらに乗るリングは朝と変わらずキラリと光を反射しているだけだが、見た目とは裏腹に、酷く残酷な、齢14の子供には耐えられない程の重責を負わせてくる。見ているだけで肩にズシリと何かが覆い被さってくるような心地になる。
グッとリングを握りしめ、思い出すのはリボーンの言葉。

「由良。お前がそのリングを持っていると知られたらツナやお前だけじゃない、なまえまで危険に晒される可能性がある。その為にお前はツナと同じように基礎体力の向上と、幻術をマスターしてもらう。」
「幻術…」
「こちらの霧の守護者はワケありでな。もしもの為にも骸の幻術に対抗できた由良の力が必要だ。」
「分かった。やってみるね。」

リボーンとのやり取りを思い出し、すぅ、と息を吸い、深く吐いた。
あの時の感覚を思い出す。
思い描いたのは凍りついた世界。南極というよりも、大きな冷凍庫をイメージする。
この部屋が極寒のマイナス何十度の氷だらけの場となるのを強くイメージして。

「出来た…?」

目を開け、はぁ、と吐いた息は凍りつくほど冷たく、白く見える。しかし、部屋の状態は思い描いていたものよりも変化はなく、物が全て凍りついた様を想像していた由良は、部屋の一部分、自分が見ている机周りだけが凍りついている様を見て、難易度の高さを実感する。そしてすぐに襲いかかる疲労感に、張り詰めていた息を吐いて落ち着かせる。同時に部屋はすぐに元に戻る。

「やっぱり、やるしかないかぁ…」

諦めたように言って、布団に入る。自分から望んだことはなかったけど、果たして上手くいくのだろうか。疑問に思った由良だが、いけることを信じ眠りに就いた。


次に目を開けた由良は目の前に広がる湖、青くどこまでも続いていく空にホッと安堵の息を吐いた。無事に成功したようでよかった。しかしまだ完全に成功したわけではないので、すぐに気を引き締め、ふぅ、と息を吐く。

「骸。いる?」

緊張しているからか、震える声で呼ぶが、返ってくるのは沈黙だけ。これまで目が覚めるとすぐに現れていたからいると思ったが、そうではなかったようだ。
それもそうか、と諦めて息を吐いた時だった。背後からカサリ、と草を踏みしめる音がした。

「骸…」
「こんばんは。」

藍色の髪を風に揺らしながら穏やかに微笑んだ骸は珍しいですね、と言って少し近づいてくる。
骸の姿を見て安心した由良は知らずに息を吐き、同じように骸に向かって近づいた。

「骸に頼みがあるんだけど…」
「頼み…?」

ピクリと反応した骸に少し緊張した面持ちで口を開いた。

「私に幻術教えて。」
「!…………ほう…」

由良の頼みに驚いた骸は思わずといったように呟き、顎に手を当てる。思ってもみなかった事だったが、引き受ける義理はない。しかし、と考え、骸は由良を見る。

「代わりに何をしてくれるんです?」
「何してほしいの?」

すぐ様返ってきた由良の言葉に目を見開き、クフフ、と笑う。どうやら、骸の返答は想定済みだったようだ。骸はそうですね、と呟いて、考える素振りを見せてからでは、と話す。

「明日から黒曜センターにいる犬と千種、クロームの様子を見てください。」
「ちょっと待って。」

いきなりぶっ込まれるおかしな話に待ったをかけた由良は額を押え、一つ一つ理解するために言葉を噛み砕く。犬と千種は骸と同じ脱獄囚で捕まったヤツらだ。クロームというのは知らないが、それよりも、黒曜センターにいる、ということはつまり…

「何してんの?」
「脱獄しました。」
「何考えてんの!?」
「ですから脱獄を。」
「いやそういうこと聞いてんじゃないんだけど!?」

さらりと言ってのける骸にこちらの方がおかしくなったのか、と不安になるがすぐに違うと気を持たせる。

「まあ、僕はより脱出が困難な場所に移されてしまったんですが。」
「え、アンタいないの?」
「ええ。ですから貴女に様子見をお願いしようと。」

涼し気な顔で肯定した骸に嘘を言っているようには見えず、本当のことなのだと信じられた。どうやって他の2人、加えて別の1人が脱獄出来てまた日本に来れたのかは分からないが、自分が会って、その様子を伝えるだけでいいなら、安いものだろう。
どこか懇願するような色が見える骸に分かったと受け入れ、ホッと顔を綻ばせた骸はでは、と幻術について由良に説明していった。


リボーンに軽く事情を説明した由良はバスに乗り、以前来たことのある黒曜センターに足を踏み入れていた。骸から大体の生活スペースを聞いていたので、その足取りはしっかりとしている。

「由良?」
「!」

すると、前方から小さな、それでもはっきりと女の子の声が聞こえてきた。同時に立ち止まった由良の前に、紫がかった骸と同じ髪型の黒曜中の制服を着た女子生徒がいた。右目には髑髏の模様が入った眼帯をつけているが、見える左目は大きくて丸く、顔立ちも可愛らしい。そんな彼女にもしかして、と口を開く。

「クローム?」
「うん。クローム。クローム髑髏。」

由良の問いかけに肯定したクロームはこっち、と歩き出した。それを慌てて追う由良はそう言えば、とどうして自分のことを知っているのかと聞くと、骸様から聞いたとよく分からない返答が返ってきた。
そうこうしているうちに目的地に到着したようで、目の前に以前見た建物が見える。相変わらず崩壊が酷く、雨風は凌げるにしても住居にするのはよくないだろうと思いつつ、こっちとまた声がかかりその声の方に向かって歩く。

「犬、千種。骸様の、お客さん。」
「んあ?………!な、なんれお前が…!」
「!神崎、由良…」
「私の名前知ってたんだ…」

非常用のハシゴを使って上階に登り、辿り着いた一室にいた城島犬、柿本千種の反応にそりゃそうなるよな、と思いつつ、名前を知られていたことにも驚いたのでその点について言及する。すると、千種の方から骸様から聞いた、とまたよく分からない返答が返ってくる。
落ち着いた千種と比べ、キャンキャンと吠えるように何しに来た!と警戒する犬に正直に昨日のことを説明する。

「骸に様子見てくるように頼まれたから来たんだけど、来るだけだとアレかと思っておにぎり持ってきたから後で食べて。毒入ってないから。」
「いらねー!!」
「ありがと。」
「おい!」

警戒する犬の態度は当然だろうと思った由良は、素直に受け取ったクロームに苦笑した。案の定というか、犬が怒ったように何貰ってんだ!と吠えるように叫んでいる。クロームは分かっているのかいないのか、でも、と答える。

「クローム。仕方ないよ。よかったら食べられる分だけ食べて。明日も来るからその時残り貰う。」
「げっ!明日も来んのかよ…」
「骸に頼まれてるから。元気そうだったって伝えておく。」

骸の口振りからして毎日だろうと考えた由良が伝えれば、嫌そうに顔を歪めた犬が本当に嫌だと言いたげに言葉を零す。それに苦笑し、それじゃあと帰ろうとする由良に待って、と千種の方から声がかかる。振り返ると、骸様は、と静かに聞かれる。

「分からない。私が会うのは元気そうな骸だけど、実際骸が元気かどうかは聞いてないし、聞いたところで骸が言うとは思わないから。」
「……………。」

由良の答えに目を伏せる千種、犬。クロームはそんな2人と由良を困ったように見る。
これ以上長居するのもよくないだろうと、それじゃあまた明日と今度こそ由良はその場を後にした。

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