リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的60

屋上でディーノとヒバリの攻防を眺めていたが暇になり、下に目を向けるとちょうどなまえが登校している姿を目撃した。

「あれ…」

しかし登校しているのはなまえだけで、一緒にいるはずの由良が見当たらない。少し探してそうか、と思い当たる。やはり彼女も自分と同じように選ばれたのだ。守護者として相応しいからと。少し気分が沈む気がして慌てて誤魔化し、もう一度ディーノとヒバリに目を向ける。相変わらず戦うの好きだなぁ、と嬉しそうに動いているヒバリを見て思っていた。
と、ここでディーノの鞭がヒバリ目掛けて伸びてくるのを難なく躱し、ディーノとの距離を詰めようと屈んだ時、鞭が向かった方、屋上のドアがガチャリと開いた。

「!」
「なっ!」
「なまえちゃん!?」
「あ、くるみちゃん。」

ドアから現れたのはなまえで、くるみに気づき安心したように微笑んだ。しかし全員それどころではなく、くるみは目にも止まらぬ速さでなまえに飛びつきその勢いのままなまえを押し倒し、ヒバリは咄嗟に鞭を自身のトンファーに巻き付けるように回転させ、ディーノも向きを変えようと持ち手を引き、絶妙な加減で操った。

「なまえちゃん大丈夫!?」
「う、うん。平気だよ?」

突然のことに目を白黒させたなまえは半ば放心状態である。くるみ、ヒバリ、ディーノの行動が速すぎて何が起こったのか全く分かっていなかったのだ。ヒバリはそんななまえの様子に安堵したように息を吐き、目を逸らした。
と、そこへディーノが慌てて駆け寄ってくる。

「悪いなまえ!気づけなかった!」
「えっ…いえいえ!だ、大丈夫です。気にしないでください、ディーノさん。」

なまえの戸惑ったような表情に申し訳なさそうにしたディーノは立てるか?と手を差し伸べ、後ろから感じた殺気に振り返り、鞭をピンと張る。そこにビュンと風を切る音を立ててトンファーが下から振り上げられ、鞭に引っかかる。ディーノの背後から2人がヒバリを呼ぶ声が聞こえる。

「まだ終わってないよ…!」
「ちょっ、待てって!」

制止するディーノの声を無視してヒバリはディーノにトンファーを振るい、ディーノは避けるために2人から離れる。ディーノに代わるようにして近づいたヒバリは、ちらりとなまえを見る。くるみによって起こされた彼女はよく分かっていないようで呆然としていたが、ヒバリと目が合うとハッとして顔を赤らめ下を向く。

「みょうじなまえ。」
「っ!はいっ!」
「そこにいると邪魔だから離れて。」
「す、すみませんっ…」

ディーノを見ながらバッサリと言ったヒバリの言葉を瞬時に理解したなまえは一度上げた顔をもう一度俯かせ、またやっちゃった…と後悔していた。しかしヒバリの様子を見ていたくるみ、ディーノ、そしてロマーリオは気づいた。ヒバリが明らかに纏う雰囲気を変えたことを、なまえに話す言葉は冷たくとも、その声はそうでは無かったことを。
しゅんとした様子のなまえをつれてくるみは屋上のドアを閉め、踊り場に移動する。少しして落ち着いたなまえはあのね、とくるみにツナや由良が暫く休むことを伝える。

「沢田くんと由良ちゃんが?」
「うん。リボーンくんが言ってほしいって。でも私クラス違うから、同じクラスのくるみちゃんに伝えた方がいいと思って。」
「そうだったんだ…」

リボーンが言うということは、もしかすると由良はリボーンが見るのかもしれない。少しその事実に焦るくるみだが、なまえは気づいていないようで、どうしたの?と黙り込むくるみに聞いてくる。それになんでもない!と返したくるみはそういえば、と話す。

「由良ちゃん、指輪みたいなの持ってなかった?」
「…………持ってたよ。獄寺くんの趣味に近い感じのシルバーのリング。カバンの中に入ってたんだって。」
「そうなんだ!それってこんなのだった?」

少し間を置いたなまえに首を傾げつつ、ポケットに入れていた指輪を見せれば、息を呑んだ。そのままぎこちなく頷いたなまえにやっぱり!と明るく言ったくるみは自分のところにもあったし、ヒバリのところにもあったからもしかしてと思って、と理由を説明した。

「ディーノさんが色々と知ってるみたいなんだけど、恭弥くんが喧嘩ふっかけちゃって…たぶん暫く続くだろうから、ヒバードの校歌指導は当分やめておいた方がいいかも。」
「そうだね、そうする。」

小さく笑って返したなまえは教室に行くと言って、階段を降りていく。送ろうかと声をかけたが断られたので、くるみは後ろ髪引かれる思いで屋上に戻った。
パタンとドアが閉まる音を聞いて、階段を降りていた足を止めたなまえは、防火扉が収納されている柱の影に移動し、自分を抱きしめるように腕を掴んだ。

「私…」

どうすればいいんだろう。
前世から読んでいたから内容も流れも知っている。けれど、黒曜の時と同じで、由良とくるみがどうなるのかは分からない。もしまたあの時のように由良が、そして今回はくるみも怪我をすることになったら…考えただけでもゾッとして、体が震える。

「頑張らないと…」

何をというのは分からないが、口をついて出たのはそんな言葉だった。
自分は知っているが、何も出来ない。そんな力も何も持っていないのだから。きっとこれからどんどん大変になっていく由良やくるみに話すことも出来ない。話したら、どうなるのだろう。彼女たちがどうなるのかなんて、自分も分からないのに、言われても困るだけだろうし、それに…と考えたところで首を振って強制的に終わらせた。
そろそろチャイムが鳴るから、それまでには教室に行かなければ。不安でいっぱいという酷い顔をしているだろう自分を隠すようにパチリと頬を叩いて、気分を変えて、歩き出した。

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