リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的59

今日も今日とて幼なじみの手伝いのせいでなまえ、由良と登校できないくるみは昨日の出来事も重なって気分が重くなり、そのまま溜め息をついた。今朝起きてから、頻繁に郵便受けだったり机の引出し、カバンの中を確認したが、目当ての物は見つからなかった。

「それもそっか…」

ふっと諦めたように笑う。
自分は由良と違い、黒曜に乗り込んでいなかった。自身の都合のいい設定みたいな境遇にもしかして自分は選ばれるのではないかと思ったが、どうやらそれは盛大な勘違いだったらしい。

「早く出ないと、遅れちゃう…」

言って、立ち上がった時だった。
コトリ、と小さな音が机の方から聞こえてきた。見れば、机の上にキラリと光るシルバーの指輪があった。
それを認めたくるみは大きく目を開いて、同時に安心した。そっと指輪を手に持って、安堵の溜め息を吐く。

「よかった…」

そっと呟いて、指輪を大事にハンカチに包み、ポケットに入れた。そして今度こそ遅れてしまうと慌てて家を出た。


応接室は既に開いていて、ガラリとドアを開ければ執務机に向かって何かを書いている幼なじみの姿があった。おはようと声をかけてもちらと目を上げるだけで返さないのはいつものこと。もう!と怒ったふりをして定位置のソファーに座る。そこで幼なじみをもう一度見れば、彼が作業する机の端に置かれたリングが目に入る。

「それ…」
「ああ、これか。」

昨日からずっと考えていたからか、すぐに目に入り、反応してしまったくるみが声をかけると少し間を置いて反応される。至極どうでもいいとでも言うように、朝来たら置いてあったと勝手に侵入されたことに腹を立てているような雰囲気で話すヒバリにへぇ返してリングに近づいた。雲のような模様が半分になっているのは、これが半分に分かれたリングだからだ。自分のと同じ形だなあと、持ってきていたリングを取り出し、確認する。描かれている模様は違うが、基本的な形は変わらないそれに、思わず空いている台座部分を触る。

「それ、校則違反だよ。」
「私も知らない内にあったんだもん!」

没収と伸ばされた手から逃れるように後ろに下がり、胸元に持ってきて守るように睨む。態度を変える気がないくるみの様子にはぁ、と溜め息をつき、分かったから見せてと手を出してくる。見せるくらいなら、と少し警戒しつつじりじりと近づいて、リングを渡した。

「!」
「!えっ…?」

しかし、ヒバリの掌に触れる直前、バチッと電気が走ったような音、光が発し、まるで磁石の同じ極同士を無理にくっつけようとする時のような反発力を感じ、咄嗟にどちらも手を引っ込めた。
じっと掌を見たヒバリはじろりとくるみを睨み、何したのと低い声で問う。勿論くるみは何かしたつもりはないので何もしてないよ!と焦りながら首を振り、リングを見る。見てもなんの異常も見られない、ヒバリに渡ったリングと変わらないように思える。
一体どういうことだろうか、首を傾げていると、ガラリとドアが開く音がした。

「お前が雲雀恭弥だな?」
「!ディーノさん!」
「くるみ!?」

もうそんな時間だったのか、張り詰めた空気を纏って入ってきたディーノに驚いたくるみが声を上げれば、気づいていなかったのかなんでここに?とディーノが聞いてくる。それに幼なじみだから手伝いでと答え、逆にどうしたのか聞いた。

「雲雀恭弥に用があってな。」
「誰?」

答えたディーノに不機嫌そうに聞いたヒバリ。さっきのことでちょっと悪くなったかな、と感じたくるみだが、ディーノは気づかずに自分はツナの兄貴分であり、リボーンの知人でもあると答え、続けて机の上に置かれていた雲の刻印の入った指輪の話がしたいと言うが、ヒバリはリボーンの知り合いならば強いと判断し、どうでもいいと言って、トンファーを構えた。

「なるほど、問題児だな。」

言ってディーノも鞭を構え、その方が早いと応じる姿勢を見せる。それに慌てたのはくるみで、待って待って!とトンファーを構えるヒバリの腕を引っ張った。

「何するの。」
「恭弥くんすぐに噛み殺そうとするんだから!ダメでしょ!指輪の話私も聞かないといけないんだからね!ほらトンファーしまって!」

大まかな話は知っているくるみだが、自身に与えられた指輪に関しては全く分からない。未知数だ。加えてくるみが気になっているのは由良の存在だ。くるみがリングを渡されたのだから、由良もきっと貰っているのだろう。彼女が貰った指輪はどんな物なのか、どんな役割なのか、くるみは知りたかった。

「まさか、くるみもリングを持ってるのか?」
「?はい。今朝これが机にあって…」
「!これは…」

先程のヒバリとの事があるので掌に乗せた状態で、しかしよく見えるように持ち上げた。くるみの手に乗っているリングを見て、ディーノは目を見開き、何かを考え込むように黙った。
対するくるみはディーノの不穏な様子にあれ?と首を傾げる。ディーノは同盟ファミリーとはいえ、ツナ側の人間で、リボーンからヒバリの家庭教師を頼まれる程信頼されている。霧の守護者は難しくとも、それ以外のメンツは知らされているはずだと思っていたのだが、もしかして、機密情報だからと教えられていなかったのだろうか。不安になるくるみに気づいたのか、安心させるように悪いと謝ったディーノはくるみのリングだが、と話し出した。

「そんなのどうでもいいよ。早くやろう。」
「!恭弥くん!」

が、不機嫌が増していくヒバリが遮り、これ以上止められないとくるみも判断したため、ディーノに断りを入れ、全員屋上に向かった。

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