リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的58

朝、支度を整えて念の為忘れ物がないかもう一度確認しようとスクールバッグを開けると、何故か見覚えのないシルバーに輝く指輪があった。

「何これ?」

摘んで目の前にかざすが、朝日を反射するだけで見た覚えがなかった。
まず第一に自分はシルバーアクセサリーを好んでつけるタイプではない。買うこともないし、そんな記憶もなかった。

「獄寺のが紛れたのかな…」

ちょうど野球大会の前日、帰り支度をしている時に獄寺がわーわー騒いでいたのを思い出し、何かの拍子で入ってしまったのだろうと考えた。文句を言われないようにさりげなく返そう。そう思った由良は確認を終え、家を出た。


なまえと合流した由良は歩いて暫くしてあ、と思い出したように声を上げた。どうしたのか不思議がるなまえにたぶん違うと思うんだけど、と言いながらポケットに入れていた指輪を取り出す。

「これなまえのじゃないよね?」
「!それ…」

指輪を見たなまえの反応に知ってるの?と聞けばブンブンと首を横に振った。明らかに怪しい様子に本当に?と聞けば今度は縦に首を振る。
分かりやすいんだから。嘘のつけないなまえだが、彼女の表情や雰囲気はいつもと違って話すようなものではなかったので、仕方ないという体で言及は諦めた。

「獄寺君が、好きそうなヤツだよねー!」
「やっぱりそう思う?私もそう思ってさ、今日聞こうと思って。」

誤魔化すように話したなまえに同意して手の上で転がった指輪を見る。少し変な形の指輪ということ以外、特にこれといったものは感じない。

「あ!沢田くん!」
「みょうじさん!由良!」

2人の前方にツナと塀の上を歩くリボーンが並んでいた。話を逸らすように大きな声を上げたためか、気づいたツナが振り返り、驚いたように声を上げた。
あれ?
ツナの言葉にどこか引っかかりを覚えて首を傾げたが、先に行った由良に続き、なまえもパタパタとツナたちに合流しに行った。

「おはよ、ツナ。リボーンくん。」
「おはよう2人とも。」
「……………あ!名前!」

ツナの挨拶に返すことを忘れ、漸く気づいたなまえ。いきなり叫んだなまえにビクつくツナと、落ち着けと声をかける由良を気にすることなくなまえは由良に詰め寄る。

「いつの間に!?」
「あー、まあ色々あって?」
「色々…!?」

その色々の部分を詳しく知りたかったが話そうとしないので、ショックを受けたなまえはツナに矛先を向けた。

「沢田くん!」
「えっ?」
「私の名前、只今絶賛セール中だよ!!」
「えぇっ!?」
「全くアンタは…」

呆れたように溜め息をついた由良だが、なまえは今でこそツナのことを苗字で読んでいるが、最初の頃はあだ名で呼ぶことが多く、ずっと呼びたがっていた。呼びたいように呼べばと思ったが、本人がもっと仲良くなってから!と言っているので、その意思を尊重してこれまで言わなかった。それを知っているので戸惑っているツナには悪いが、声をかける。

「ごめんツナ。この子も好きなように呼んでやって。」
「えっ!?」

由良に言われたツナはそろりとなまえを見る。なまえはキラキラと期待に満ちた目でツナを見ており、言わなくとも呼んで呼んで!と言っているのが伝わってくる。めちゃくちゃ期待してるー!内心叫んだツナだが、由良と比べると呼びやすいのは今までの呼び方で、加えて名前で呼ぶのは何故か本能がダメだと訴えているのでそれをどう伝えようか悩むように目線をウロウロと彷徨わせる。

「沢田くん?」
「あっ!ええと…その、呼びやすいのが今までのやつだったから、名前で呼ぶのは難しいっていうか…ごめん!俺のことはなんて呼んでもいいから!」

不思議そうに名前を呼ばれ、素直に言えばなまえはきょとりと目を丸くさせ、少ししてそっかぁと困ったように笑った。残念そうな顔に罪悪感を覚えるが、次にツナくんって呼んでもいい?と聞いてくるのでもちろんと答えればパアッと顔が明るくなる。

「最初から呼びたがってたんだけど、仲良くなるまで我慢してたんだって。」
「え!?そうだったんだ…」

由良に耳打ちされたツナは別に自分の呼び方なんて好きに呼んでいいのに、となまえを見ながら思った。ツナたちのやり取りを見ていたリボーンはま、名前で呼ぶのはヒバリが黙ってねーからな、と意味深に言い、聞いたツナがなんでヒバリさん!?と怯える。
そんなツナに由良が思いついたようにそうだ、と声をかける。

「獄寺って一緒じゃない?」
「ご、獄寺君!?」
「あ、そうそう。由良がね、獄寺くんが持ってそうな指輪見つけて、返したいんだって。」
「指輪!?」

大袈裟にリアクションをするツナにそんなに驚くことかな?と首を傾げつつ、由良がこれなんだけど、とポケットに入れていた指輪を見せる。見せられたツナはやっぱりー!!と頬を両手で挟んで叫ぶ。ツナの反応に知ってるの?と聞けば、ツナは早口に話し出す。

「これ持ってたら危険なんだって!ヤバい奴が狙ってるんだよ!」
「こんな指輪ひとつに?」
「そうなんだよ!昨日…」
「なまえ。」

ツナが昨日起きたことについて話そうとすると、リボーンが鋭い声でなまえを呼び、一瞬にして場に緊張が走る。呼ばれたなまえはリボーンのいつもとは違う雰囲気にビクつき、どうしたの?と震える声で聞く。

「お前のとこには指輪はあったのか?」
「え?ない、けど…」

なまえの返答に考え込むように黙ったリボーンはそうか、と答え、同時に纏う雰囲気も柔らかいものに変える。そのままさらりとツナと由良を借りるから先に行っててくれと伝える。

「あ、ついでにヒバリにも言っといてくれ。今日からコイツらは休むからな。」
『えっ!?』

リボーンの発言に3人とも驚くが、リボーンの軽いが有無を言わせないような雰囲気に誰も反論は出来ず、なまえは分かった、と絞り出すように返し、ツナと由良にまたねと言って1人学校に向けて歩き出した。ついて行こうとした由良だが、リボーンに名前を呼ばれ、止められる。

「お前は暫く俺の下で修業だ。」
「修業?」
「なっ!リボーン何言ってんだよ!由良まで巻き込むつもりか!?」
「仕方ねーだろ。まさかあのリングが動き出してるとは思ってなかったんだからな。」

文句を言うツナに返したリボーンのただならぬ様子に、つっかかっていたツナも、聞いていた由良もごくりと唾を飲み込んだ。どういうことか、聞こうとしたが、また軽い調子に戻ったリボーンがその前に、といつの間に用意したのかショットシェルホルダーに弾丸をズラリと詰め込み、銃を両手に構えた。まさか、と察したツナは逃げようとするが、それよりも早くリボーンは眉間を撃ち抜いて、ツナはパンツ一丁になって死ぬ気で修業!と叫んで走っていった。

「ツナ!?」
「由良。ツナの着替え持ってついてこい。修業場所に着いたらそのリングについて説明する。」

隣で撃たれていきなり走り出したツナに驚いたように声をかけた由良は混乱し、戸惑いつつも分かったと答え、リボーンから渡された着替えを抱えて走り出した。

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