リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的3

なまえと別れた私は割り振られたA組の教室に入った。ちらりと視線を教室全体にやればちらほらと見えるこちらが一方的によく知っている生徒たちが既にいた。友達と談笑している子もいれば、たくさんの人に囲まれている子、1人俯いて肩身の狭い思いをしている子。ああ、本当に私はかつて絶対に踏み込めない画面の向こう側にあった世界に生まれてしまったんだな、と思い知った。

「はあ…」

溜め息を吐いて、黒板に書かれている自分の席の場所を確認し移動した。席に着いてもう一度溜め息。はあ、とても憂鬱だ。

私には、誰にも言っていない秘密がある。これを言ってしまえばこの世界の何かに触れてしまいそうな、そんな危険性のある秘密。それはこの世界がアニメとして描かれていたということ。アニメになるくらいだから漫画も当然あるのだけれど、生憎私はアニメしか知らなかったので漫画についてはよく分からない。でも確かに存在していたのだ。前の世では。
そう、私は前世の記憶を持って生まれてしまった。前世では社会人だった。普通に仕事をして、休日は休んだり趣味に没頭したり、そんな普通の生活を送っていた。それも、最期は通り魔に刺されるなんて呆気ない死に方をしてしまったのだけど。おかげで生まれ変わってから体を鍛えるようになってそこそこ強くなれたのでそれは嬉しいことだけど、問題はこの世界だった。何を隠そうこの世界は中学生がマフィアのボス候補に挙げられなんやかんやとそのいざこざに巻き込まれていくアニメと同じ世界観なのだ。町名も同じ、学校名も同じ、更に今同じクラスになってしまった数名の生徒もメインキャラクターの名前や特徴と合致する。クラス発表の掲示板を見た時、なまえと同じクラスじゃなかったこともショックだったけど、それ以上に驚いたのは私がメインキャラクターとなる彼らと同じクラスに配属されたことだ。おかげでここはやっぱりあのアニメの世界なのだと再確認させられた。
正直、ただのクラスメイトと言うだけで物語に巻き込まれるとは思ってはいない。そりゃあちょっとミーハー心は期待していたりはするけれど、マフィアなんて裏社会の話は遠くから見る分には楽しめるが、当事者になるのはごめんだと思ってる。勿論当事者になるとは思っていない、いないけれど、やはり気になってしまうのだ。アニメで何度か見ていた主人公、沢田綱吉が。
アニメを見る時、必ずと言っていいほど彼が出る場面が多い。まあ主人公なので当たり前なのだけど、その場面も色々で、元々の性格は気弱な方で無理だとかできっこないとか偶に悲鳴をあげたりしていることもあったけど、いざ戦闘となったら一気に表情も目つきも変わり、とても凛々しく成長するのだ。でも根っこの彼の優しさはそのまま残っているから要所要所でその面も見れるとあって、私は主人公がとても好きになっていた。きっと今はまだマフィアなんて知りもしないだろうから、そんな彼が今後どうやって成長していくのか、それを見てみたいという気持ちはなくもない。が、やっぱり巻き込まれるのは御免なので、程々の距離で見守ることにしよう。

「じゃあ次、神崎〜。」
「はい。」

色々と考えているうちに入学式も終わり、今はクラス全員の顔と名前を覚える為にも全体で自己紹介をしていた。たった今前の席の子の自己紹介が終わって次は私の番。よし。

「神崎由良です。並盛第2小出身です。友達100人作ろうと思ってるので気軽に声をかけてください。たぶん私も声をかけに行きます。よろしくお願いします。」

すとんと着席するも、一向に拍手の音が聞こえない。あれ?さっきまで1人終わる毎に拍手があったはずなのに、もしかして新手のいじめか?と首を傾げながら周りを見てみればポカンとした表情のクラスメイトたち。
え、どういうこと。戸惑ってでも必死にさっき自分が言ったことを思い返す。

“友達100人作ろうと思ってるので“〜

あ。これだ。
そう思った時には後の祭りで、どっと笑いが起きた。口々によろしくな、とか友達なろうよ、とか言われてしまい恥ずかしさと気まずさで引き攣った笑顔しか返せない。照れて赤くなるとかなってなくて良かった。いやでも、うん。

やらかした!!!

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