リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的2

自分が転生したのだと気づいたのはだいぶ早い段階だった。病院のいつも見ている部屋で眠ったかと思ったら気づけば和風っぽい一室の天井が見え、更に知らない美女がこちらをニコニコと見下ろしていた。戸惑いつつ伸ばした腕は眠る前まで見ていたガリガリのものではなく子ども、特に赤ちゃんに近いぷくぷくしたもので、決定打は眠る直前腕を動かすのもすごく力が必要だったのに難なくできたことだった。一瞬幼児退行かと思ったけど、そうするとこの美女の説明がつかないのですんなりと前の記憶を持ったまま転生したのだと理解した。前は生まれた時から身体が弱くてずっと病院生活だったけど今世では無事に家に居るみたいなのでひとまず病気の心配はしなくてよさそうだった。ホッと一息ついた私はそれからすくすくと成長し、幼稚園に通うところまで進んだ。いざ幼稚園に通うぞというところで、両親から幼なじみの男の子を紹介された。

「こちら恭弥くんよ。ママのお友達の息子さんなの。」
「よ、よろしくね!」

なんてこった…。頭を抱えて蹲りたくなるのを何とか堪えてニコッと笑って挨拶した。対する男の子はムスッとした顔をこちらに向けることなく、精一杯お母さんだろう女の人の腕から逃れようとしていた。それでも大人の力の方が強いようで、力一杯引っ張っても腕は解かれず、諦めたように脱力していた。そして女性に急かされて名乗った名前は「雲雀恭弥」。
これ絶対未来の風紀委員長のパターン…!!
あちゃあと額に手を当てたい衝動を必死に抑え、仲良くする気は無いと宣った彼に聞いてませんよと言わんばかりにもう一度よろしくね!と返した。本音を言うならば出来ることなら私の好きな人と幼なじみという関係にしてくれれば良かったのに、と思わなくもなかった。勿論現実はそうはいかなくて、最初は本当に苦労した。
当人同士は仲良くなんて無理だと思っているのに、母親はどちらも仲良いのね〜なんてニコニコしてるし、彼の母親なんて流石母と言うしかないほど強引に息子を私に会わせて遊ばせるのだ。初めは可哀想だなあなんて思いながら自由に、それこそ話しかけたりとかせずに過ごしていたのだけど、折角初めて出来た幼なじみなのだから、やっぱり少しくらい仲良くしたいな、と思ってとある提案をしてみた。このまま母親の言いなりになるくらいなら、一緒に見返してやろうよ、なんて訳の分からない言葉で彼をなんとか焚き付けて、2人で特訓を始めた。それがまさか、トンファーデビューに繋がるとは思わなかったけど、当時母親の方が力が強く、どうしても抵抗しきれなかったことがよっぽど悔しかったのか、彼は私に会う時間只管自分を鍛えまくった。私も私で護身と称して武器、特に射撃等の遠距離に対応出来る武器の訓練をしていた。トンファーは基本近接なので、もし何かあれば私が援護するという目的だった。その訓練のおかげか、いつの間にか私は彼に認められ、お互い「くるみ」「恭弥くん」と呼び合う仲になっていた。
ここまではまだいい。正直ボンゴレ最強の守護者とも呼ばれる彼と対等な関係でいられる方が今後巻き込まれたとしてもなんとかやっていけるだろうから。問題はこの後だ。
恭弥くんはそれはそれはストイックな性格だった。負けず嫌いで、勝てるまで何度も挑戦する、そんな子だった。通常ならさして問題はない性格だが、思い出してほしい。私は幼稚園に入る前に彼と知り合い、彼とほぼ毎日一緒に訓練していたのだ。当然それは幼稚園に通ってからも変わることなく続き、更に言えばこの頃まだ私も恭弥くんもほぼ互角の力を持っていたので、私が勝つこともあったりした。そんなことがあった翌日は例え幼稚園の行事があろうがそんなもの知らないと言わんばかりに彼は私の組にやってきては勝つまで挑んでくるのだ。原作では不良の頂点とまで言われていた彼は既に幼稚園児の時にその片鱗を見せており、私はそんな彼に勝ったり負けたりできる唯一の存在。しかもそんな私を気に入らないと私に意地悪をした子がいれば恭弥くんがボコボコにするとあれば当然私の周りは人が減っていくわけで。気づけば私は1人も友達がいない状況で小学校を卒業していた。

「なんでさ!」
「うるさいよくるみ。」
「呼んだの恭弥くんでしょ!今この時間こそ友達を作るチャンスだっていうのに!」
「そんなものくるみには必要ないでしょ。」
「必要だよ私の平穏な学校生活を送るためにも絶対必要だよ!」

そう言えば眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔でため息を吐く恭弥くん。何故そんな反応をされるのか、大変遺憾です!
今日は中学校の入学式で、今の時間は初めて割り振られたクラスに行って近くの席になった子とよろしくね、と自己紹介し合ってお友達を作るための時間なのだ。それを私は恭弥くんに呼び出されたから泣く泣く会いに応接室まで足を運んであげたのだ。にもかかわらず恭弥くんは一向にこちらに見向きもせずに書類整理をするばかり。じゃあ教室に行こうとすれば一気に機嫌が悪くなる。本当に何がしたかったのかさっぱりである。そんな中、唐突に鳴ったチャイムでそろそろ教室に行かないとホントにヤバいと気づく。恭弥くんを見れば仕方ないと言うような顔をして、帰りにまた来てと一言残してまた書類整理に戻った。

「もう!あとで呼んだ理由教えてよね!」

恭弥くんがいる手前走ることは出来ないので早歩きで教室に向かった。また友達を作るチャンスを逃してしまった…!

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