リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的49

骸が憑依した獄寺の技であるダイナマイトの爆発に巻き込まれたツナは、薄れていく意識の中、何故か聞こえてくるはずのない母や、クラスメイトである黒川花の声が聞こえてきた。
どうやらこれはリボーンがしっかりツナに撃てた特殊弾の効果のようで、今聞こえている声はリアルタイムで届くツナへの小言らしい。なんでこんな時に小言を聞かなければならないのか、と思うツナだったが、ハルの応援や了平からの信頼の言葉、京子の帰ってきてね、という必ずツナが帰るのだと確信している言葉を聞いて、考え直す。
そんなツナに、新たな声が聞こえてくる。

「沢田くん、大丈夫だよね。」
「大丈夫だよ!沢田くんだもん!」
「そう、だよね…由良を、守ってくれるよね。」

なまえとくるみだ。2人とも不安げな顔ではあるが、ツナが負けるとは思っていないような表情で話していた。
そして最後に、ランチアから仲間を守れと言われ、目を開ける。
その目は先程までの恐怖や不安を抱いていたものとは違い、強い意志を秘めていた。ツナの目が覚めたことに安心した由良は沢田、と小さく声をかける。
ツナはゆっくりと立ち上がり、そして、その額にオレンジ色の炎をボッと灯す。

「骸。お前を倒さなければ…死んでも死にきれねぇ…!!」
「!」

死ぬ気モードとは違うオーラに息を呑む骸。
新たな特殊弾、小言弾は死ぬ気弾と違い、ツナの静なる闘志を引き出すものらしい。

「手袋が…」

そして由良の言葉にツナの手を見れば、ツナの両手には毛糸の手袋ではなく、皮で出来たようなグローブがはめられていた。
しかし、それでも骸は焦ることなくツナは敵ではないと言い放つ。それに合わせるように城島犬が後ろからツナに襲いかかるが、ツナは振り返ることなく片手で止め、肘を打って後方へ飛ばした。すかさず骸は幻覚で柿本千種を見せ、攻撃を仕掛けようとするが、ツナはそれを見破り、隠れていた本体を殴り、その拍子に槍が壁に突き刺さる。

「バカな…」
「奴は地獄道の幻覚を見破れなかったはず…」

ツナの飛躍的な成長に流石の骸も驚いたようで声を上げる。
これは小言弾の効果のようで、ツナの内に眠る『ボンゴレの血(ブラッド・オブ・ボンゴレ)』が目覚めたものらしい。それは別名『超直感』と呼ばれるもので、小言弾によって内面の感覚のリミッターを解除されたことで現れたらしい。
しかしだからといって骸は焦ることなく、獄寺とビアンキの体を使ってツナを攻撃する。ツナは反撃することなく修羅道で強化された2人の攻撃をくらい、呻く。

「沢田!」
「っ…由良…」
「!」

ここは任せろ。そう言ったツナは、獄寺、ビアンキの神経を麻痺させ、ようやく骸から2人を解放した。リボーンに処置を頼むツナを見ていた由良は目を見開いたまま固まっていた。
名前、呼ばれた…。
死ぬ気モードとは違う、静かな雰囲気を纏うツナに今まで呼ばれたことの無い名前を呼ばれ、こんな状況なのに顔に熱が集まりそうになり、必死に下を向いて何を考えているのだと自分を叱責する。

そんな由良に気づかないツナは、静かに骸に出てこいと声をかけていた。
骸はクフフ、と笑いながら現れ、余裕の笑みを浮かべながら自身のまだ発動していないスキル、人間道に触れる。これは骸曰く最も見にくく危険な世界のようで、彼はこの世界、そしてスキルを嫌っていた。

「出来れば発動させたくなかった…」

言った骸は自然に右目に手をやり、躊躇なく指を差し入れた。それは一本や二本ではなく、手全体を入れ、グリ、と目を動かしているように見えた。

「っ…」

手を動かす度に血が溢れ出る様に、由良は息を呑み、顔を青ざめる。
暫くすると、禍々しいオーラを出した骸が不敵に笑い、立っていた。
骸は修羅道の時とは比べ物にならない速さでツナに突っ込み、攻撃を受け止めたツナを壁に殴り飛ばす。

「沢田!…………!」

咄嗟にツナのもとへ駆け寄ろうとした由良は持っていた薙刀を盾にするように構えた。見れば、一瞬で移動してきた骸が槍の柄を自身に振り下ろそうとしていたようで、由良は間一髪その攻撃を受け止められていた。
しかし、スピードだけでなく力も上がっている骸に、先程の憑依を拒んだ際に体力、気力を消耗しただけでなく、慣れない幻覚を使ったことで既に満身創痍となっていた由良が敵うはずもなく、受け止めた薙刀が骸の持つ槍の柄に押されていく。そんな由良を骸は容赦なく横から蹴り上げ、ツナと同じように柄で殴り飛ばした。

「由良!」
「!ほぅ…まったく君は、楽しませてくれますね…」

壁に強く打ちつけられた由良はその衝撃で気を失ってしまい、崩れた壁の破片と共に床にドサリと落ちた。
そんな由良に骸のどす黒いオーラを霧散させたツナが声をかけ、ダメージを受けていない様子のツナに、骸は強気に笑んだ。


由良が次に目を覚ました時、見えたのは倒れて気を失っている骸と、それを見下ろしているツナだった。最後の骸の攻撃が思った以上に強かったようで、目を動かすことしか出来なかったが、ツナとリボーンの会話から、骸を無事に倒すことが出来たようだ。安心して襲い来る眠気に従って瞼を閉じようとすると、城島犬の鋭い声が聞こえ、再び目を開けた。
見ると、酷い怪我を負っているにもかかわらず、骸に近づこうと這って進む城島犬、柿本千種がいた。ツナはその2人に何故骸に利用されていたのにそこまでするのか、疑問を口にする。それに対する2人の反応に、リボーンが何があったのか言えと言えば、彼らは憎々しげに話した。

「俺らは自分のファミリーに人体実験のモルモットにされてたんだよ…!」

驚くツナに、城島犬は続けた。
憑依弾を作ったエストラーネオファミリーは人でなしのレッテルを貼られ、ひどい迫害を受けた。それはファミリーの大人達が特殊兵器開発の実験に益々拍車をかけることとなり、ファミリーの子供たちは次々と死んでいった。毎日が地獄で、彼らはどこへ行こうと、どうあがこうと生き延びる道はなかった。

「でもあの人は…たった1人で、現状をぶっ壊したんだ。」

あの人、とは骸のことだろう。
その子供に一緒に来るかと言われ、彼らに初めて居場所ができたらしい。だから彼らはマフィアを憎み、この騒動を起こしたのだ。自分たちの居場所を壊されたくないという、強い思いで。
ああ、あれはつまりそういうことなのか。
由良は先程見えた子供たちが傷つき、泣き叫ぶ映像を思い出す。あれはきっと、骸たちの事だったのだろうと。

「でも、俺だって、仲間が傷つくのを黙って見てられない…だってそこが、俺の居場所だがら。」

だがそれはツナも同じだった。
はっきりと伝えたツナに目を逸らした2人。
と、入口の方に人影が見え、医療班が到着したらしい。

「なっ!?」
「!」

よかったと安堵する間もなく、いきなり骸、犬、千種の首に鎖に繋がれた枷が嵌められる。
よく見れば、入口にいたのは黒いシルクハットを被り、黒いマントを纏った顔を包帯で巻いてある3人組で、彼らは『復讐者(ヴィンディチェ)』と呼ばれるマフィア界の掟の番人で方で裁けない者を裁く存在らしい。復讐者はそのまま骸たちを引っ張って消えていった。
骸のことを詳しく聞く前にボンゴレの医療班が到着し、次々に重傷者を運んでいく。
それは由良も例外ではなく、骸たちを案じていたが、痛みが強くなり、耐えられなかった彼女はまた瞼を閉じて、そのまま意識を手放した。

これでようやく、骸との戦いが終わった。

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