リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的47

骸の「人はおもちゃ」という発言に憤ったツナ、由良は武器を構え、ソファーに座している骸に突っ込んだ。骸はすっくと立つと近くにあった長尺の棒を持ち、先に突っ込んでいたツナとすれ違う。

「いてっ…いでででで!痛いー!!」
「!沢田!」

同じように突っ込んでいた由良は突如悲鳴をあげたツナに驚き、駆け寄る。骸は涼しい顔でどうかしましたか?と振り向きざまに問うが、ツナ自身何が起こったのかさっぱり分からなかった。唯一目視できたリボーンがすれ違いざまに凄まじい攻撃をあびせたんだ、と苦々しく口にする。

「さすがアルコバレーノ。その通りです…………!」
「神崎さん!」

倒れているフゥ太の近くに落ちていた三又の槍を手にしようと屈んだ骸の不意をつくように由良が薙刀を払うが、気づいた骸に受け止められる。驚いたように目を見張る骸につい舌を打った由良はくん、と手首を捻って薙刀の向きを変え、下から振り上げた。それを後ろに下がることで避ける骸。

「また、貴女ですか…」
「フゥ太くんから離れろ、この外道…!」

骸の「また」という言葉に疑問を抱きつつ、険しい顔で骸を睨むと、ピクリと顔が動いた。が、それ以上何かを言うことなく、カチリと三又の槍を棒にはめ込んだ。

「!目から……!!」
「目?………!」
「ほう、気づきましたか。」

骸に追撃しようとした由良は何かに気づいたツナの言葉に骸の右目に目をやると、目から藍色の炎が灯っていた。
気づいた様子の2人に骸はこのオーラこそ、第四の道、修羅道で身につけた格闘能力の闘気だと話す。

「しゅらどう?スキル…?」
「何、言ってんの…?」
「六道輪廻、という言葉をご存知ですか?」

骸が話す内容が上手く理解できずにいる2人に骸は問いかける。その骸の問いにリボーンが人は死ぬと地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天界道のいずれかに行くとされるものだと答える。それに是と答えた骸は自身の体に前世に六道全ての冥界を廻った記憶が刻まれており、それらの冥界からそれぞれのスキルを授かったのだと説明した。
前世、というものに心当たりのありまくる由良と違い、ツナやリボーンは信じられない様子で骸を見ている。そんな骸はどうでもいいと言わんばかりに次のスキルをお見せしましょう、と静かに言った。

「行きますよ。」

言った骸はトン、と槍の柄で地面を叩いた。
すると、そこから地面が急に割れ始め、見る見るうちに建物が崩れていく。そんな!と悲鳴をあげたツナは気を失ったビアンキやフゥ太が落ちていく様を見て、どうしよう!と慌てふためく。
それに対し、由良はどこか冷静だった。急に崩れ出した地面にツナのように慌てるはずなのにこの現象はどこか違う、そんな違和感が拭えなかった。

「!沢田!落ち着いて!これ現実じゃない!」
「えっ!?ぶっ!」
「由良の言う通りだ。これは幻覚だぞ。」

冷静に観察した由良は見せられている崩壊する建物とは別に、先程まで見ていたどこも崩れていない地面を発見した。その場所は崩れる地面と崩れていない地面が二重に重なっているように見えていたが、恐らく崩れているのは目の錯覚か何かだろうと思い、ツナに知らせた。
由良の言葉に驚いたツナはでも、と言う前にリボーンに頬をぶたれ、幻覚だと言うリボーンの言葉通り、崩れていない地面に転がっていた。

「クフフフ、見破るとは流石ですね、アルコバレーノ。それに…」

骸は目を細め、由良を見た。先程ツナに叫んだ由良に、骸は驚いていた。自身のスキルは忌々しい場所で得たものだが、だからこそレベルは高く、現にツナは見破れなかった。そのため、本来ならツナと同じかそれより少し上くらいの由良に見破られるはずもないのだが、彼女は難なく見破った。その事実に骸は少し彼女への警戒を強めた。
しかしそこから由良に何かを言う訳ではなく、骸は先程見せた自身のスキルについて説明した。幻覚を見せたスキルは第一の道、地獄道のもので、永遠の悪夢を見せて精神を破壊するものらしい。
ゾッとするツナと由良に骸は静かに微笑み、リボーンとツナの関係性に言及した。お目付け役と称した骸にすぐさまツナの家庭教師だと否定するリボーンは、掟で骸に攻撃できないこと、自分が出るまでもなく、ツナが骸を倒すと自信満々に話す。
リボーンの言い分に焦るツナとは違い、骸は余裕そうに面白いと言い、次のスキルを発動した。

「!蛇…!?」
「うわあああ!」

突如として天井からボトリボトリと落ちてきた大きな毒蛇にツナは悲鳴をあげ、由良は薙刀で払って追い払おうとする。一瞬ツナがこれも幻覚なんじゃ、と期待を込めて呟くが、間髪入れずに骸が本物だと伝え、由良も多分本当だと思うと続ける。
これは骸の第三の道、畜生道によるもので、人を死に至らしめる生物を召喚できるらしい。

「っ…数がっ…!」
「ひぃいい!助けてぇえ!!」

本物の毒蛇だと知ったツナは腰が引けて情けない声で悲鳴をあげている横で、由良はなんとか薙刀で蛇を追い払おうとするが、数が多すぎて追いつかない。このままでは、2人とも毒蛇にやられてしまう。そんな状況でもリボーンは掟だからと骸に手を出すことは出来ず、ただ見守っているだけで、骸が挑発するように声をかける。

「さあ大切な生徒の命の危機ですよ。いいんですか?」
「あんまり図に乗んなよ、骸。俺は超一流の家庭教師だぞ。」

リボーンの言葉を疑問に思うよりも先に、骸の元へ何かが飛んできた。

「!」
「!あれは…!」
「トンファー!?」
「10代目!伏せて下さい!」

カランと転がった並盛ではよく見ている武器に驚く間もなく、酷く聞き覚えのある声がして、その言葉に従い、2人とも伏せる。すると、2人の周りにいた蛇を追い払うようにドガガガ!と数回爆発が起きた。
まさか、と思い、煙が晴れて入口の方を見ると、お互いボロボロになりながらも肩を貸しあって立つヒバリ、獄寺の姿があった。

「ヒバリさん!獄寺君!」
「無事だったんだ…!」

嬉しそうに、ホッとしたように声を上げるツナと由良。遅くなりましたとツナに話す獄寺、無言で睨みつけるヒバリの姿にリボーンがツナだけを育ててる訳じゃないと言い切った。
骸は特に驚くことも無く、千種は何をしているのか、と嘆息する。獄寺が千種、そして途中合流していたのか城島犬も外で寝ていると話せば納得したように息を吐いた。
その隙にヒバリはヨロヨロと動きながら、投げたトンファーを回収し、構えた。

「覚悟はいいかい?」

凄まじい怒気を浴びせているにもかかわらず、骸は怯むこともせず、怖いですねぇと思ってもいないことを話す。更に骸はヒバリは骨を何本も折ったから今立っているのもやっとなはずだと話したが、ヒバリは引かない。

「遺言はそれだけかい?」
「クフフフ、面白いことを言う。君とは契約しておいてもよかったかな?」

ヒバリが一切引く気がないと分かると、骸はヒバリから先に片付けようと再び第四の道、修羅道のスキルを発動し、ヒバリに突っ込んでいく。
ハイレベルな戦いはツナたちの目には見えず、トンファーと槍がぶつかり合う音が響いていた。

「君の一瞬っていつまで?」

突っ込む際、骸が言った一瞬で終わる、という言葉を指摘しているのだろうヒバリに、骸は返事をせずに1度お互い距離を置いた。一旦勝負が落ち着いたからかリボーンがコイツらは伸び盛りだから侮るな、と言うが、骸は焦った様子を見せず、ヒバリが怪我をしていなければ分からなかったと話し、ちょうどそのタイミングでヒバリの肩から勢いよく血が噴き出る。
そして骸は手っ取り早く終わらせようと幻覚で桜を出した。お花見の時にシャマルにかけられた桜クラ病を利用するためだ。

「さぁ、また跪いてもらいましょうか。」

クフフ、と笑って言った骸にヒバリはフラつき、しかしくるりと半回転したかと思うと手にしていたトンファーを思いきり骸の腹部に打ちつけた。驚くツナたちに由良から手当を受けている獄寺が、シャマルから桜クラ病の処方箋を預かってきたと得意気に話す。
ヒバリはそのまま骸を下からアッパーをかけるかのようにトンファーを両側から振り上げ、その衝撃に耐えきれなかった骸は血を吐き出しながら宙を舞い、倒れた。骸はそこからピクリとも動かず、気を失っている。

「これって…」
「けっ…美味しいとこ全部持っていきやがって…」
「じゃあ、もしかして…」
「ついにやったな。」

半信半疑で呟くツナ、由良はリボーンの一言でようやく実感でき、安堵と、喜びで破顔する。これでようやく終わった、ようやく並盛に帰れるのだ…!
しかし喜んでいる暇もなく、途中から無意識で戦っていたらしいヒバリが倒れ、由良やリボーンが手当をしたとはいえ、獄寺、ビアンキ、フゥ太も重傷だ。すぐに病院へ、と焦るツナたちにリボーンがボンゴレの医療チームを派遣したから大丈夫だと声をかけ、ホッと息を吐いた。

「その医療チームは不要ですよ。」
「!」

不意に、骸の声が聞こえ目を向けると、彼はこちらに銃口を向けて生存者はいなくなるからだと宣う。手当を終えた獄寺が突っかかろうとし、由良も薙刀を構えて応戦しようとした。しかし、

「Arrivederci(また会いましょう)。」

彼は銃口をこめかみに当て、一言言ったかと思えば一切の躊躇なくパァン、と1発撃った。
一瞬の事に理解が遅れた由良はしかし理解した途端フラフラと骸に近づいた。

「!神崎さんっ…」
「おい何してんだ…!」
「こ、これも、幻覚、なんじゃ…ま、まだ、生きてる、かも…」

戸惑うツナや獄寺の問いに答えた由良はショックを隠しきれず、ハッハッと息を切らし骸の首元、頸動脈の辺りに震える手を当てる。そんな彼女にリボーンが無駄だ、と言い放つ。

「頭を撃ち抜いてんだ。助からねぇ。それに、幻覚じゃないことくらい、お前が一番よく分かってるだろ。」
「っ…………」

鋭く指摘するリボーンの言葉に由良は顔を歪め、俯いた。
そんな由良にそれ以上何か言うことも無く、リボーンは捕まるくらいなら死んだ方がマシだとでも思ったんだろうな、とボルサリーノの鍔をくい、と下げて話す。

主犯である六道骸死亡により、やるせなさを感じながら並中襲撃事件は終わった。

しかしツナは何故か表情が晴れず、青い顔をして何かに怯えるように震えていた。

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