リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的46

林の中から戻ってきたツナはリボーンが撃った死ぬ気弾によって死ぬ気になり、由良に向かって投げられた鋼球を防いでそこから骸と戦った。途中鋼球を骸に投げ返し、肉弾戦が得意と判明したことでピンチかと思われたが、ツナは骸と戦う時に骸に迷いがあることに気づき、勝利した。
これで平和な並盛に帰れると安堵したかったが、それは骸が次に言った言葉により叶わなかった。

「完敗だ。六道骸がお前を警戒するのも頷ける。」
「えっ!?」
「六道骸じゃ、ないんですか…!?」

困惑して問い詰めるツナや由良に自分は影武者だと答えた男に、全員驚愕に目を見開く。それでもまだ信じられないのかツナが刑務所の写真の事を問えば、本物の骸は自分の姿を記録に残すようなヘマはしないと返ってきた。それじゃあ本当に、と思っていたところで、男は憎悪を隠しきれない表情で骸は自分の全てを奪ったんだと告げる。
ただ事ではない雰囲気にごくりと固唾を呑む由良たち。リボーンに促され、男は骸との間に何が起こったのか話し始めた。

男は北イタリアのファミリーの一員で、孤児だったところをボスに拾われ、その恩に報いるようにエリア最強と云われるまでに強くなっていた。そんな折、ボスが野望に満ちた目が気に入ったからと孤児を拾い、男はその子供の面倒を見ていたらしい。
しかし暫くして、男のファミリーは全員何者かによって殺されていた。
男は犯人へ怒りに燃え、誰がやったのか調査し、そして衝撃的な事実を知った。

「俺が、やったんだ…!」
「!」
「ど、どういうこと…?」

驚き戸惑うツナたちに男は続ける。それから目が覚めると身に覚えのない屍の前に何度も立っていて、自分でも自覚がないのにと遂におかしくなってしまったのだと思い、自殺まで決意したが出来なかった。

「俺は、六道骸に操られていたんだ…!」
「!そんなっ…!」
「なんだって!!」

信じられない事実にツナと由良が声を上げる。
そして男は名も心も奪われ、ニセの六道骸となっていったらしい。
あまりにも酷い骸の行いに言葉が出ない由良に、絶句するツナはなんて奴だ、人間のすることとは思えない、と呟く。

「ぶっ倒しましょう!10代目!!」

そんなツナに声をかけたのは先程まで副作用によって動けなかった獄寺だ。どうやら副作用は治まったようで、先程動けなかったからかやる気に満ちている。
獄寺を心配し、声をかけるツナに、男もボンゴレなら出来るかもしれないと言い、ツナに骸の本当の目的を伝えようとした。

「!どけっ…!」
「!」

しかし、男はツナを狙うように向けられた攻撃を庇うように受け、倒れた。その攻撃は獄寺を狙っていた黒曜生、柿本千種のヨーヨーから放たれる毒針だった。
毒によって意識が薄れていく男に、ツナが名前を聞くとランチアと答えた。

「しっかりしてください!ランチアさん!」
「その名で呼ばれると…思い出すぜ……昔の、俺の、ファミリーを…」

これでみんなのもとへ行ける。そう言い残して、ランチアは意識を失った。

「散々利用しといて不要になった途端…クソッ!これがアイツらのやり方かよ…!」
「六道骸、人をなんだと思ってるの…!」

怒りを顕にする獄寺、ビアンキの横で、由良は1人拳を握りしめて静かに震えていた。
同じように黙っていたツナはゆっくりと立ち上がり、骸のところへ行こうと強い声で言った。最後の切り札を使ってしまったとツナに忠告するリボーンに、それでも行くと答えたツナ。聞いたリボーンはランチアはまだ死んではいないが針の毒が問題だと話し、ビアンキが柿本千種が解毒剤を持っているだろうと推測する。柿本千種は獄寺が対応すると決め、山本は気絶したため安全な場所へ移そうとしたところでバーズの鳥が鳴き出した。

「バーズ、ヤラレタ!バーズ、ヤラレタ!」
「しゃ、喋った…」

驚く由良を他所にその鳥はガラス張りの大きな建物に向かって飛んで行った。恐らく、骸はその建物の中にいるのだろう。アタリをつけたツナたちは建物の方向へ歩き出した。


建物内は酷く荒れていて、窓ガラスはほとんど割れていて、あちこちに破片が散らばっているし、コンクリートの壁や柱が欠け、破片がそこかしこに落ちている。
ツナたちが建物に入り、手当り次第探そうと歩いているとあるものが全て壊されていることに気づいた。

「ここもだわ。」
「階段が壊されてる…」

上の階に向かうための階段が全て破壊され、先に進めない状況だった。これにリボーンは相手のルートを絞るため、自身の退路を断つために行なったとし、骸は上の階にいると考えた。
そこから更にフロアを探すと、ようやく壊されていない非常用のハシゴが見つかった。と、後ろからパシッと何か軽いものを受け止める音が聞こえた。

「!」
「ヨーヨー使い!」

振り返れば、ヨーヨーを手にした柿本千種がいた。邪魔しに来たのか、と由良が薙刀を構えるより先に、獄寺が動き出した。

「!煙幕…?」
「ここは先に行ってください!10代目!!」
「獄寺!」

獄寺は煙幕の出るダイナマイトを投げ、相手を足止めしている間にツナたちに先に行くように言葉をかけた。心配したビアンキが獄寺の毒はシャマルが治療したが副作用が出るから、とそれでもやるのかと聞くと、意思の強い顔で当たり前だと答えられ、ツナと由良に行こうと声をかける。

「待って!獄寺、私全然元気だから私が残って…」
「だからお前は10代目の方に行くんだろーが。」
「っ…」

これまでランチアと少しやり合った程度で無傷の由良が名乗り出るが、獄寺の言葉に詰まる。

「骸がどんな奴かは知らねぇが、10代目をお守りすんのは俺らファミリーの役目だろ。俺よりお前のがピンピンしてんだ。ホントは右腕の俺がお傍にいて差し上げたかったが、今回は譲ってやるよ。」
「……………オッケ、任せて。」

獄寺の覚悟を感じ取った由良はニッと笑って答え、ツナに行こうと声をかける。渋るツナだったが獄寺のまた遊びに行こうという言葉に背中を押され、獄寺を残し、先に進んだ。


2階のボウリング場はガランとしていて誰もおらず、一行は3階に進む。3階は映画館だったようでチケットカウンターや売店のカウンターがあるロビーに、防音の為の分厚い扉がいくつもあった。
その内の1つを開けると、そこは板張りの床と少し先、スクリーンがあったであろう場所に同じように木で造られたステージがあり、そこに置かれたボロボロのソファーに誰かが座っていた。

「また会えて嬉しいですよ。」
「ああ!!君は!」

ソファーに座っていた人物を見て驚いたツナは由良、ビアンキに彼もフゥ太と同じ人質だと説明する。
しかし由良はおかしい、と顔を強ばらせる。人質ならば、助けに来たと分かれば真っ先にこちらに走りよってくるはずだし、こんなに落ち着いて話したりはしない。

「待って沢田!」
「ゆっくりしていってください。君とは永い付き合いになる、ボンゴレ10代目。」

ツナに声をかけた由良は男の言葉に警戒し、ツナの前に出る。戸惑うツナにビアンキも気づいたようで男を睨みながらこいつ、と呟いた。

「アイツが、本物だ…!」
「そう、僕こそが、六道骸です。」
「なっ…はぁー!?」

背筋が凍るような冷たい微笑を浮かべた本物の六道骸に全員警戒していると、後ろの方でパタンと扉が閉まる音がした。見れば後ろ手で扉を閉めたばかりのフゥ太が虚ろな目をして立っていた。

「フゥ太くん…!」
「フゥ太!」
「無事だったのね…!」

フゥ太の様子に気づいていない3人は口々にフゥ太の無事に安堵したように話し、近づいた。しかし今は六道骸がいる危険な場所であるので、すぐに安全な場所へ行くようビアンキが声をかけた時だった。

「っごふっ…」
「び、ビアンキさん!」
「ビアンキ!」

ドスリ、とフゥ太が何故か手にしていた三又の槍でビアンキの腹を突いた。深い所まで刺さったようで、ビアンキは口から血を吐き、倒れる。
すぐにツナと由良が駆け寄り声をかけるも、反応がない。リボーンが持っていた救急箱で手当をし始め、由良も手伝う中、ツナがフゥ太に何してるんだ!と問いかける。しかしフゥ太は言葉を返すことなく、今度はツナを襲ってきた。

「フゥ太くん!」

咄嗟に避けたツナを再び襲おうとしたフゥ太に、由良が後ろから抱き込むようにして腕を回し、フゥ太を止める。ツナがどうしたんだ、そんな物騒な物はしまえと声をかけても聞こえていないようで反応はない。

「ううう…!」
「フゥ太くん…!」

フゥ太は自身を抑えている由良を引き離そうと、無我夢中で腕を振り回し、体をひねり、抵抗した。その抵抗で由良の顔や腕にフゥ太が持っていた槍が掠り、小さな切り傷が増えていく。
いつものフゥ太の様子ではないことに困惑するツナと由良に、リボーンが静かにマインドコントロールをされているようだと話す。それを聞いて驚いた由良は咄嗟に骸を睨みつけるが、骸は微笑み返すだけだった。

「うううっ!」
「!フゥ太くん…!」
「フゥ太!」

幼いといってもフゥ太も8歳の男の子だ。子どもが必死に抵抗をする力が思った以上に強いことは弟を持つ由良が一番よく知っている。今も骸を睨んだ一瞬だけでも抜け出ようとされるので、フゥ太を止めるのにこちらも必死だ。
由良がフゥ太を引き止めている間、なんとかするのはツナしかいなかった。どーしよー!と狼狽えるツナにリボーンはどこから出したのかディーノが扱うものと同じ鞭を渡してきた。もちろんツナが使いこなせる訳もなく、どうしろって言うんだよ!とワタワタと叫んでいる。

「っ沢田!フゥ太くんじゃなくて骸を!」
「!そーか!」

フゥ太を止めている由良の言葉に気づいたツナは、鞭を持って座って見ているだけの骸に突っ込んでいく。操られているフゥ太ではなく、操っている骸本人を狙うという単純で分かりやすくも一番良い作戦だ。
やあ!という掛け声とともに鞭を振るったツナだが、使いこなせた武器でもないためコントロールが上手くいかず、骸ではなくツナの顔に当たり、更に自分の足を絡め取り転んでしまった。

「沢田!」
「ううう…!」
「!フゥ太くん…!」

ツナの元に駆け寄りたい由良だが呻き声を上げて由良から逃れようとするフゥ太に阻まれる。

「ううう…!」
「フゥ太!」
「フゥ太くん…!」

抑えられているフゥ太は更に暴れだし、フゥ太が暴れる度に由良の顔や腕、足に傷が増えていく。ツナや由良が呼びかけても唸り声を上げるだけでちっとも正気に戻らない。
由良は近くで聞いていたフゥ太の声が酷く苦しげで、悲しんでいるように聞こえ、抑え込んでいた時とは違い、フゥ太をそっと後ろから抱き締める。その間もフゥ太は暴れ、由良を傷つけていく。

「フゥ太やめろ!」
「フゥ太くん……苦しいね、辛いね、悲しいね…!大丈夫だよ…大丈夫だからね…!」
「!」

由良が優しく諭すように話す姿にツナは何かに気づいたようにハッと表情を変え、フゥ太、と静かに呼びかける。

「お前は悪くないぞ。」
「!」

ピタリ、とフゥ太の動きが止まる。ツナは続けてお前は全然悪くないんだ、と強く話す。

「みんなフゥ太の味方だぞ。安心して帰ってこいよ。」
「!あぐっ…!」
「!フゥ太くん!」
「フゥ太!」

ツナの言葉に頭を抑えたフゥ太はそのまま気を失って倒れた。抱きしめていた由良が支えたお陰で地面に倒れることは無かったが、くたりとしたフゥ太は鼻からだけでなく耳からも血を流していた。

「君たちが余計なことをするから彼、クラッシュしちゃったみたいです。」
「余計なこと…?」

あたかもツナや由良のせいでフゥ太がこうなったとでも言うような骸の口振りに、由良は怒りに震える声で呟いた。
骸はそんな由良を嘲笑うように見て、話し出す。フゥ太は誘拐されてからほとんど眠っておらず、ボンゴレ10代目であるツナの情報を得ようとしたが沈黙の掟(オメルタ)を貫かれ、話すことをせず、さらに心まで閉ざしてランキング能力を失ってしまった、と。今まで起こった並中襲撃事件は、仕方なしに手に入れたケンカの強さランキングを使ってツナやファミリーをおびき出すことにしたらしい。

「目論見は大成功でしたよ。現に彼はここにいる。」

なんて事ないように話す骸に、フゥ太をそこまで追い詰めたことに怒りを隠しきれないツナが人をなんだと思ってるんだ、と問う。

「おもちゃ、ですかね…」
「!アンタっ…」
「ふざけんな!」

骸の至極当然とでも言うような口振りに、ツナと由良は立ち上がり、それぞれ武器を構えた。

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