リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的45

ハル、なまえはくるみが、京子はリボーンに言われて見張っていたシャマルが無事救い出し、双子を操っていたバーズも獄寺が蹴りを入れただけで気絶してしまった。
次々と現れる聞いていた3人組以外の刺客にツナが聞いていない!とリボーンに詰め寄れば、彼らは皆、骸と共に脱獄した連中のようだった。ディーノから得た情報によると、骸たち3人組と先程まで立て続けに現れた刺客は協力して脱獄したようだが、3人組以外消息不明だった事もあり、ディーノは関係なしと判断したらしい。可愛らしくだってだってと話すリボーンに誤魔化すな!と鋭いツッコミを入れるツナ。
そんな彼らの横で、由良はスマートフォンを耳に当て、コール音ばかり鳴る状態にイラついていた。

「ぐすっ…由良?」

ようやく出た相手は泣いていたのか鼻を鳴らし、出た声も少し涙声に聞こえた。由良は先程のこと、そして今聞こえた声に感情が高まり、すぅ、と大きく息を吐き、口を開いた。

「アンタ何考えてんの!?」
「ぅえっ?」
「ヒバリに寄り道すんなって言われてたでしょうが!!何ふっつーに寄り道してんの!」
「えっ、で、でもっ…」

帰り道、だから…
ボソリと、しかしはっきりと聞こえた言葉にピキリと青筋が立つ。

「まっすぐ帰らずにどこかで道草食ってたらそれは立派な寄り道だわこのアホ!いいからさっさと帰りなさい!また危ない目に遭うかもしんないんだから!」
「っ……」

怒鳴られたからか、息を呑む音が聞こえたきりなんの反応も示さないなまえに聞いてんの?と声をかけると、由良、と静かに名前を呼ばれた。

「なんで私が寄り道したって知ってるの?」
「………………。」

急に問われたことで今度は由良が黙る。気まずげに目線をさまよわせ、髪をぐしゃりと掴みんではぁ、と大きく息を吐いた。

「あー…今ラスボス戦間近的な?」
「っ……」

由良の言葉に息を呑んだなまえは大丈夫なの?と聞いてくる。それに沢田たちもいるからと答えればそうじゃなくて!と焦ったように遮られる。

「由良は、大丈夫なの?」
「……………。」

ああ、と張り詰めていた気を緩めていく。
力なく笑って、その拍子でポロリと零してしまった。

「分かんない。」

なまえが聞いた大丈夫は精神的なものなのか、怪我というものなのかは定かではないが、電話口からも滲み出る彼女からの心配する雰囲気と、話してもいいという空気に、思わず伝えてしまった。
一瞬遅れて気づいた由良はなんでもないと誤魔化そうとしたが、それより先になまえが静かに名前を呼んだ。

「1人じゃないよ。」

その言葉に静かに目を見開いた。

「由良だけじゃないんでしょ?沢田くんたちってことは、獄寺くんとか、山本くんとかもいるんでしょ?だったら頼っちゃえばいいんだよ。大丈夫!沢田くんたち嫌だなんて言わないし、由良だって知ってるでしょ?」
「うん、でも…」
「言わなくてもいいんだよ。」

戸惑う由良になまえは言葉を続ける。

「言葉にしなくても、頼る方法なんていくらでもあるよ。目線送るとか表情作るとかテレパス出すとか!だから、言おうとする必要ないよ。」

でもね、酷く穏やかな声で続く。

「由良は1人じゃないよ。頼りになる人がちゃんと傍にいるって分かってればそれで大丈夫。」

頼りにならないかもだけど、私もいるし!と明るく言われた言葉に小さく吹き出す。
込み上げてくるものを抑え込むように大きく息を吐いて、なまえ、と声をかけた。

「ありがと。」
「どーいたしまして!」

それじゃあと切ろうとするなまえをもう一度呼び止め、明日、と話す。

「明日から、また一緒に学校行こうよ。やっぱり朝はキツかった。」
「!うん!行こー!」
「じゃあまた明日、いつもの場所で。」
「うん!また明日!絶対だよ!」
「はいはい。」

そのやり取りを最後に通話を終了した由良は1つ深呼吸をして、ツナたちの方を振り返った。

「ごめん、取り乱した。」
「ああいや!全然大丈夫!」

ブンブンと忙しなく首を横に振るツナに柔く笑んで、もう一度ごめんと告げて、話に加わる。どうやら先程の刺客について話していたようで、同じ脱獄囚と聞いて驚いた由良だったが、今まで感じていた恐怖は感じられなかった。それどころか、身体も心もどこか軽くなったような、余裕があるような心地がした。

「もーいないよな。」
「いるわ。」

怯えつつ当たりを見渡すツナに何かに気づいたビアンキが答え、鬱蒼と茂る林の中に出てこなければこちらから行くと鋭く声をかける。すると、弱々しいどこか聞いたことのある声が待ってと響き、僕だよ、とその声の主がそっと木の陰から現れた。

「フゥ太!」
「フゥ太くん!」

驚いたツナ、由良が声を上げる。
木の陰から現れたのは大きなランキングブックを抱えたフゥ太で、ツナたちは驚いたが、敵ではないと分かり安堵する。

しかし、由良は引っかかる部分があった。
フゥ太の先程の声は非常に弱々しく、現れてからも一向にこちらに来ようとしない。それに伴って表情も眉尻を下げ、いつも見る子供らしい屈託の無い笑顔ではなかった。それに、とランキングブックに隠れて少ししか見えない服を見る。
同じなのだ。あの日、由良が道場に練習に行くからと送れなかった時の服と。
1週間程経っているから洗濯をしたのだとも思ったが、よく見ればところどころ汚れており、清潔なようには見えなかった。
由良の脳裏にリボーンからもらった書類に書かれてあった人質がいるという情報がよぎる。まさか、そんなはずはない。そう思って声をかけようとするより先に、ツナが声をかけた。

「良かったー!元気そうじゃんか〜!みんないるからもう大丈夫だぞ!一緒に帰ろう!」
「来ないで、ツナ兄。」
「!」

弱々しくもはっきりと拒絶する声を上げたフゥ太に、全員が驚愕する。戸惑ったように声を上げるツナに、フゥ太は目に涙を浮かべながら言った。

「僕、もう皆のところに帰れない。骸さんについて行く。」
「!フゥ太くん…」

泣きたいのを必死に堪えて話す姿に、心がギュッと締め付けられるような心地になった由良は、フゥ太にそう言わせたのであろう骸への苛立ちが沸々と募る。フゥ太は由良が何かを言うよりも早く「さよなら」と言って林の中を駆けていく。それを待ってよ!と叫びながらツナが追いかけていく。

「10代目!深追いは危険です!」
「どーなってんだ?」
「待って!フゥ太くん!沢田!」

後を追いかけようとした由良たちだったが、それは目の前を凄まじいスピードで通り過ぎていった鉄柱によって妨げられた。すぐにジャリッと地面を踏みしめる音が聞こえ、それぞれ己の武器を構えそちらの方を見た。

「鋼球…!」
「黒曜の制服を着てるってことは…」
「コイツも骸の刺客ってことね。」

獄寺、山本、由良はそれぞれ武器を構えながら帽子を目深に被った黒曜生を見据える。すぐにでもツナの後を追いたい彼らだが、巨大な鋼球を使って行こうとする道を破壊され、倒すしかない状態となった。

「さっさと終わらすぞ怪力ヤロー!こっちゃヒマじゃねーんだ!」

獄寺が啖呵を切るように言うと、相手は静かに無駄だと答え、被っていた帽子、着ていた黒曜の制服を脱いだ。

「俺には勝てん。」

そう言った黒曜生の顔を見て、全員驚き、声を上げた。

「お前は!」
「写真の!」
「六道骸!」

思わぬ刺客、いや、ラスボスの姿に全員に緊張が走る。先程まで勝てるかどうか不安で仕方なかった由良だが、今は険しい顔で薙刀を力強く握り、現れた六道骸を睨みつけていた。

「こいつが…!」
「ついに出やがったな。」
「フゥ太に何をしたの?」

ビアンキの問いに知らないと答えた六道骸はブンブンと鋼球を回し始めた。そんな六道骸に由良はギリっと歯を噛み締め、ふざけるな!と叫んだ。

「アンタが何かしたんでしょ!フゥ太くんに!」

激昂し、叫ぶ由良に反応も示さず、骸は鋼球を振り回す。その様子に苛立った由良が攻撃しようとした矢先、そばにいた獄寺が呻き声を上げて膝をついた。

「獄寺!」
「ハヤト!」

すぐにビアンキが駆け寄り、額に手を当てる。どうやら熱が出ているらしく、息を切らしている姿は苦しげだった。
獄寺、ビアンキを守るように、山本、由良が骸の前に出る。そして、骸が動いた。

「千蛇烈覇!」

その言葉と共に振り回されていた鋼球が2人の元に突っ込んでくるが、そのスピードは遅く、2人はそれぞれ横に避けた。が、何故か強い力で鋼球まで引き寄せられ、2人とも鋼球に近づいてしまう。

「がっ!」
「うっ…!」
「山本!」
「由良!」

咄嗟に由良を引っ張った山本が鋼球の全面に当たり、由良も掠る程度だが、その衝撃を受けてしまった。そのままどサリと倒れ込んだ2人に獄寺、ビアンキが声をかける。
避けていたはずの2人が攻撃を受けたことに疑問の声をあげるビアンキに、骸はこれで分かったはずだ、と告げる。

「貴様らに生き残る道はない。希望は捨てろ。」

堂々と言い放った骸に、熱でまだ動きが鈍い獄寺が立ち上がろうとする。しかしその前に、この場には似つかわしくない明るい声が待ったをかけた。

「こいつを盾にしてなかったら危なかったぜ…」
「衝撃ヤバ…」

バットを盾にして防いだ山本、同じように薙刀で防いだ由良が立ち上がる。2人の無事に安堵した獄寺、ビアンキだったが、鋼球の謎を解かなければピンチには変わりないというリボーンの言葉にハッとなる。
リボーンの言う通りだと同意した山本、由良に骸はまたしても鋼球を飛ばす。向かってくる鋼球の謎を暴くため、山本がバットで地面を擦り上げ、砂埃を巻き起こした。すると、鋼球の周りを気流が流れていることが判明し、更に鋼球の表面に掘られている蛇の模様が球に当たる空気の流れをねじ曲げ、風の威力を何倍にも増していると分かった。

「行くぞ神崎!」
「オッケー!」
「暴蛇烈覇!」

理解したからといって攻略には至らないと骸はまたもや鋼球を飛ばす。先程の鋼球を間一髪で避けた山本と由良は左右に走り出し、鋼球を投げた直後の隙を狙った。
2回投げられただけだが、鋼球の大まかな攻撃範囲を把握出来た2人は充分避けられていた筈だった。
しかし、2人の目論見は外れ、今し方飛ばされた鋼球へ回転し、更に威力を増していた。

「!山本!」
「うあああっ!!」

左右別々に走った2人だったが、どうやら骸は山本を先に狙っていたようで、回転に巻き込まれ威力を増した鋼球が山本に直撃した。そのまま近くの木に飛ばされた山本に慌てて駆け寄るが、山本は目を閉じたままだった。

「次は、お前だ。」
「!……来い…!」
「由良!」

骸は山本の前に出た由良に今度は狙いを定め、静かに告げた。由良は恐怖と、それよりも強い怒りによって震える手を強く薙刀を握る力に変え、鋭く睨みつけた。
ジャラリ、と鋼球に繋がっている鎖が鳴り、攻撃が来ると構えた時だった。

「コラァ!何やってんだ!!」
「!」
「沢田…!?」
「ツナ!!」

フゥ太を追いかけていたはずのツナが林の中から叫び、現れた。

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