リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的1

春。
桜が咲き乱れる中足を進めるのは、まだのりがある制服を着ているというより着られていると表現する方が正しい少女。スクールバッグの紐をぎゅうと両手で持ち、慣れない道をせかせかと足早に歩いている。かつんかつんと真新しいだろうピカピカのローファーが地面に当たる度音を立て、少女の気持ちを少し落ち着かせる。

「なまえ。」
「由良!」

なまえと呼ばれた少女が歩いている少し先、並盛橋と書かれた橋の前にいた落ち着いた雰囲気の少女が声をかければ嬉しそうに破顔させたたたっと軽い足取りで駆け寄った。
由良と呼ばれた彼女もなまえと同じ制服を着ており、その制服も真新しいものだった。おはようと挨拶しあった2人はそのまま同じ目的地に向かう。

「クラス見た?」
「まだ。でも聞いた話6年の時仲良かった子は1年で離されることはまずないって。」
「ホントに?良かったぁ。」

会話しながら進んだ先には中学校があった。入口の門には「並盛中学校」と彫られたプレートがはめられ、その側には大きな立て看板に「並盛中学校入学式」と達筆な字で書かれていた。看板の側には記念にと写真を撮る新入学生の親子や家族連れが列を作って並んでおり、笑顔が溢れていた。そんな光景を横目で見つつ、なまえと由良はこれから1年過ごすことになるクラスを見るために掲示板の方へ向かっていく。

「どうしよう。緊張してきた…!」
「まあなるようになるでしょ。今更だって。」
「で、でももし離れたりしたら…!」
「大丈夫だって。滅多にないって言われてんだし。」
「そ、そうだよね!」

緊張した面持ちで話すなまえを落ち着かせる由良だが、彼女も結構緊張している。なまえに言った言葉は彼女自身を落ち着かせるために言い聞かせたものでもあるのだ。そしていざ行かんと言わんばかりに気合いを入れて掲示板の前に立ち、自分の名前と隣にいる友人の名前を探す。

「神よ…………」
「嘘でしょ…」

その結果に2人同時に呟いた。なまえは無意識に組んでいた両手を胸に持ってきたまま呆然と掲示されたクラス名簿を見ている。由良は表に出さないもののショックは隠せず暫し固まっていた。

「滅多にないって…!滅多にないって言ったじゃん…!!」
「いやここはポジティブに考えてみよう!?逆に凄いことだよ滅多にないことを実現したんだから!」
「何も凄くありませんけど!?私にとっては地獄なんですけど!?」
「ですよね!?」

訂正。どちらもショックを隠すことなく取り乱していた。しかしここでわいわい言ったところで現実は変わる訳もなく、邪魔だなぁという周りの視線に気づいて端に寄ってこれは現実なのだと実感していた。

「ねぇどういうこと?私前世で何したの?」
「神社で加持祈祷しとけばよかった…」

どこを見ているのか分からない虚ろな目でボソボソ言うなまえと顔を手で覆って只管懺悔のような言葉を繰り返す由良。たかがクラス発表でクラスが離れただけでこの有様になるとは誰が予想できようか。
そもそもこの2人、ここまで親しくなったのは小学6年生の途中からで、それまで全く接点がなかった。たまたま席が前後になり、たまたま行動するグループが同じになり話す機会が増えたことからいつしか友人、次第にとても仲の良い親友のような存在になっていったのだ。その為、滅多にないという離される関係というのは実はこの2人に関して言えば当てはまらない状態なので今回このような結果になったのだが、ショックを受けている2人は知る由もない。

「なまえ。クラスはこの際しょうがない事として諦めよう。この1年は我慢して、頑張って徳を積んで来年から一緒のクラスにしてもらうようにしよう。」
「由良…つまり教師陣に媚びを売れと?」
「いや、たぶんクラスの連中にもというかクラス関係なく学年全体に媚びを売りに売って売り続ければなんとかなる気がする。」
「………………なるほど!」

一体何がなるほどなのか。
弁明をするならば、この時の2人は酷くショックを受けていたため脳の機能が低下しまくっていたので互いが頓珍漢な事を言っていると気づいていなかった。そして2人はこのまま互いに健闘を祈る!と言い合って自分の教室に向かった。

prev / next

[ back to top ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -