リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的43

愛する野球の大切な道具であるバットを噛み砕かれ、心中穏やかでなくなった山本は自分を獲物とする黒曜生に無事勝利した。
途中、近々行われる秋の野球大会の事もあり体を庇うように動く山本を心配したツナがリボーンによって穴に落とされ黒曜生に狙われる事態となったが、そこでスイッチが入ったのか山本が自分の腕を犠牲にして黒曜生を気絶させたことでなんとか退けられた。
そんな山本、ツナを近くにあった縄になりそうなものを使って引き上げ、山本の怪我の手当をビアンキが始めたので由良も手伝いを名乗り出た。

「………………。」

山本は平気そうにしているが、見ているだけで痛々しいその怪我に顔を顰める。
意気地無し。
心の中で呟いた。獄寺の武器と違い、由良の武器は山本を助けるためにも役に立つものだった。あの時山本を追ってすぐに自分も穴の中に向かえば、ツナが危険な目に遭うことも、山本が自分の腕を犠牲にすることもなかっただろうに。
由良が自分を責めていると、リボーンから新たな情報が伝えられる。どうやら今さっき倒した黒曜生は城島犬という主要メンバーの1人らしく、獄寺が相手をした黒曜生の話していたケンと名前が一致したことで、由良の考えは正しかったと分かった。リボーンはツナに1枚の写真を渡し、見てみろと言う。自然とツナの手元をのぞき込むように近づいた由良が見えたのは、獄寺を襲った黒曜生と先程山本を襲った黒曜生の間に2人よりも体格のいい頬に傷跡がある屈強の男が映る写真だった。

「こ、これが敵の3人組…!?」
「ああ。真ん中にいるのが、六道骸だ。」

六道骸。今回の襲撃事件の主犯。
きっと、獄寺や山本を襲った2人よりも強いだろう。写真でもすぐに違うと分かるくらいなのだ、実際の強さは計り知れない。きっと、ここにいる全員で迎え撃たなければ勝てないだろう。
ぎゅう、と薙刀を握る手に力を込める。
頑張らないと。なんの為にみんなについてきたのか。このままではただのお荷物だ。
自分を叱咤した由良は1人深呼吸をして、意気込んだ。

「これでいいわ。」
「どもっス。」

山本の手当も無事に終わり、一行は先に進むことにした。山本はバットを壊してしまったことをリボーンに詫びたが、どこから取り出したのかスペアがあるからと差し出し、山本の戦力も回復した。

「しっかしこの調子なら、案外骸も簡単に倒せそーですね!」
「プププッ、めでてー連中だぜ!」

敵を甘く見ていると捉えられそうな発言を獄寺がしたことで、山本に気絶させられていたはずの城島犬が穴の中から骸は絶対に倒せないと確信を持って叫んできた。ビアンキが岩を落とし、運悪く命中してしまったことで物理的に黙らせることに成功したが、リボーンは彼の言い分も間違っていないと六道骸に関する情報を追加する。
なんでも、様々なマフィア、警察に絶体絶命の危機に陥れられてきたが、それらを全て殺してくぐり抜けてきたらしい。更に脱獄したのは死刑執行前日と言うのだから、ツナはこの人何したの!と恐怖で悲鳴に似た叫びをあげる。

「大丈夫だよ、沢田。」
「!神崎さん。」
「沢田だけじゃないし、みんな強いからさ、なんとかなるよ。」

由良の言葉に励まされたのか、青く怯えた顔がすこし和らいで、そうだよね、と安心したように息を吐いたツナに、由良も微笑み返す。
ツナに声をかけた由良だが、その実ツナのためではなく、彼女は自分のために言っていた。死刑の判決が下るというのは、それくらい罪が重い、つまり多くの人を殺したり、やり方が酷かったりと様々だろうが、つまり六道骸はただの罪人ではなく重罪人なのだ。それも殺人鬼と呼ぶに相応しい程多くの人を殺すことを厭わない人間なのだろう、リボーンの話を聞いて途端先程の意気込みも萎んでしまい、恐怖が襲いかかってきた。それを払拭するように、自分に大丈夫だと言い聞かせるように、ツナを励ます体を装って言葉をかけたのだ。

「先急ぐぞ。」

リボーンの声によって再び進み出した由良たち。だが、歩いて暫くした頃ツナから休まないかと提案があった。ちょうど休憩スペースだった場所が見え、それならそこでと少し遅い昼食タイムとなった。
皆それぞれ席に着いて落ち着いたところで山本が持ってきていた寿司とお茶を配ろうと声をかけると、横からビアンキがどきなさいと体当たりしてツナに自らが丹精込めて作った緑黄色野虫のコールドスープを差し出した。例に漏れず、ブショアァと宜しくない音と煙を立て、その色は毒々しい。
見た目と中身に飲んだら死ぬ…!と察したツナは中々受け取らず、なんとか回避出来ないか考えていると、突然ビアンキが持っていたスープがブクブクと沸騰し出し爆発した。ビアンキのポイズンクッキングかと思えばどうやら違うらしく、山本や獄寺、由良の前に置かれた寿司の弁当も次々に爆発し、全員伏せて避ける。
敵の攻撃を受けていると皆が警戒する中、耳の良い獄寺がどこからが聞こえてくる音に気づき、その出処にダイナマイトを投げた。

「ダッサイ武器〜。こんな連中に、柿ピーや犬は何を手こずってるのかしら。」

ダイナマイトの爆発によって壊された建物から現れたのは黒曜の制服を着た一人の女子生徒だった。クラリネットを抱えて座る彼女は勝ち気な表情でこちらを見る。リボーンからの情報にはないが、黒曜の制服を着て、更にこちらに対して敵意がある彼女もどうやら骸の仲間らしい。
今度こそ、やるんだ。震えながら、それを抑えるように薙刀を強く握る由良、そしてツナたちを見た女子生徒はみすぼらしい格好やらさえない顔等貶すような言葉をかけてくる。
それにカチンときた由良は反論しようと口を開くが、それより早く女子生徒が咥えたクラリネットから奏でられる音によって傍にあったお茶や弁当が次々と爆発していき、近づけない。

「私が行くわ。」
「!ビアンキさん…!」

そんな中、堂々と立ち上がり前に出たのはビアンキで、彼女は先程女子生徒が言った「男は金」という言葉に引っかかったようで、間違ってると言い放つ。
大事なのは愛だとはっきり断言するビアンキを訝しむ女子生徒に、ビアンキは続けて彼女の武器のからくりを言い当てた。女子生徒が使うクラリネットからの音波は特殊なようで、分子の運動を活発化し、物質を沸騰、爆発させるというものだった。
カラクリが分かったビアンキは大皿に乗ったポイズンクッキングを使って音波を防ぎ、女子生徒に突っ込んでいく。怯まず進むビアンキに驚く女子生徒にトドメをさすように持っていたショートケーキを構えるビアンキ。女子生徒は悲鳴をあげ、決着が着くかと思われたが、すぐに空気が変わる。

「近接戦も!得意なのよ!」
「あぐっ!」

クラリネットの上管と下管を素早く離した女子生徒は上管を持った状態で大きく振りかぶる。鎖で繋がれた下管がビアンキに直撃したことで悲鳴をあげたビアンキは倒れ込んだ。

「ビアンキさん!」
「おいっ…」
「待てお前ら。」

ビアンキがやられてしまったことで由良、山本が応戦しようと立ち上がるが、それを獄寺が静かに止めた。そして青い顔をしてもう触れたんだ、と続ける。
不思議に思う3人に、女子生徒はトドメと再び組み立てたクラリネットを咥えて音波を出そうとした。しかし、

「ひぎゃあああああ!」

それはクラリネットではなく、ポイズン化してドロドロになってしまった何かに変わっていた。
ビアンキはクラリネットで殴られた時、一瞬だが手で触れることに成功しており、触れたことによりクラリネットをポイズン化した。これがビアンキの数ヶ月前に習得した新技、千紫毒万紅である。
ポイズン化したクラリネットを咥え、息を吸う時に飲み込んでしまったせいか、倒れる女子生徒。
昼寝をしていたリボーンの邪魔にならないようにと戦っていたビアンキの理由を知り、呆気に取られるツナたち。
そんな彼らにまたもや別の声が聞こえてきた。警戒するツナたちにまあまあ落ち着いてと話す黒曜の制服を着た男はどこからかパソコンを取り出し、こちらをご覧下さいと画面を見せた。

「京子ちゃん!ハル!」

映っていた思いもよらぬ友人の姿に声を上げるツナ。
パソコンの画面では小さいからと繋いでいたプロジェクターから建物の壁に同じ画面を映し出す男。警戒しつつ、その映像を見た由良、山本は目を見張った。

「なまえ…?」
「くるみ!」

2画面に分かれた壁面に映し出された映像は京子とハルが中心になっていたが、ハルの画面の方にハルを挟むように談笑するなまえとくるみの姿があった。
何やってんのあの子は…!
咄嗟にポケットにしまっていたスマートフォンを取り出して連絡しようと操作するが、黒曜生の男に気づかれた。

「余計な事をすると、彼女たちがどうなっても知りませんよ〜?」
「っ!どういう…」
「あ!影に何かいる!」

意味深な言葉を言う男に睨みながら訳を聞こうとする前に何かに気づいたツナが声を上げる。釣られてみれば、黒曜の制服を着た細長い恐らく人間が京子やハルたちの背後に体をくねらせながら立っていた。
バーズと名乗った男によると、この影はバーズからの指示で行動する双子の殺し屋で、刑務所にいる間は拘束具をずっとつけられていた凶悪な殺人鬼らしい。
関係の無い彼女たちに何かをするつもりだと知り、獄寺がバーズに掴みかかるが、双子が揃って襲いかかろうとしており、すぐに離す。遠隔で双子たちに指示を出せるバーズが優位となったこの状況で、由良たちができるのは彼女達の無事を祈ることしか出来なかった。

「なまえっ…」

焦燥した様子で画面を見つめる由良。画面の中にいるなまえは気づいているのかいないのか、いつもよりも少し硬い表情で笑い、ハルと話していた。

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