リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的42

ツナの家を出て、駅からバスで目的地に向かった由良たちは、黒曜ヘルシーランド前と書かれたバス停で降りた。新国道が出来たことで旧国道の通りはガランとしていて静かだが、敵はこの通りに面した一角に潜んでいるらしい。暫く歩いていると、広大な敷地の中に様々な施設が土砂によって崩壊している遊園地に似た雰囲気の場所に到着した。
思ったよりも広い土地に獄寺がこれ一帯が廃墟スか?とリボーンに聞けば、元は黒曜センターという複合娯楽施設だったらしい。

「ん?黒曜センター?」
「沢田?」

リボーンの説明に引っかかったツナが施設名を呟くとすぐにあ!と思い出したように声をあげた。どうやらツナは幼い頃に1度来たことがあるらしく、来た当時はカラオケや映画館、ちょっとした動植物園が入っていたと話した。
おそらく新国道が出来たことで客足も遠のき、改築計画が出たものの一昨年の台風で土砂崩れが起きたことで閉鎖となったようだ。
それを聞いていた由良はそういえば、と思い出す。確かに一昨年は大きな台風が来て、隣町で土砂崩れが起きたとニュースで見たことがあった。これを知った母親から気をつけろと言われたんだった。

「鍵は錆びきってる…奴らはここから出入りしてませんね。どーします?」
「決まってるじゃない、正面突破よ。」

由良が思い出していると、ビアンキがどこから取り出したのかポイズン化した桜餅を手にして錆びついて動かなくなった鍵を溶かし、門を開けた。不法侵入では、と少し怯えながら門を飛び越えて敷地内に入り、ツナ達のあとをついて行く由良は、いつでも応戦できるよう周りをキョロキョロと警戒しながら進んでいた。
昔ではあるが、来たことがあるツナが案内をすることになり、そんなツナが宙を見ながら思い出した敷地内のマップは、ゲートを入って暫く行った先にガラス張りの動植物園があるというものだった。しかし今由良たちが目にしているのはレンガが所々敷かれた地面と土砂に埋もれた普通の娯楽施設で、ガラス張りの建物はどこにもない。

「ん?何か動物の足跡だな。まだ新しい。」
「え、結構デカくない?野生の犬とか?」
「にしちゃあデカすぎるな。」

ビアンキがツナに目が節穴だと言っている頃、山本が地面につけられていた大型の動物の足跡を見つけた。それに気づいた由良が近づき、なんの動物のものかと話し合う。
2人に気づいたツナたちもやってきて、同じように足跡を見る。と、ビアンキが爪の部分に血が付着していると指摘し、ツナが悲鳴をあげて怯え、まさかまだ動植物園の動物がいるのでは?と口にするが、さすがに閉鎖して暫く経つのにそれは不自然だと思ったのか獄寺にも否定されたことですぐに考え直す。

「あら?木の幹が抉られてるわ。」

すると今度はビアンキが何かの歯型がついて大きく抉られた木の幹を見つけ、更に獄寺もそこかしこに放置されている格子が食いちぎられてる檻を見つけた。
そんなツナたちの背後からガサガサッと茂みが擦れる音がして、由良は何かいる!という獄寺の声に緊張した面持ちで薙刀を取り出し、構えた。

「!」

ガサリ、と一際大きな音を立てた茂みから現れたのは大型の犬で、鋭い牙をむき出しに開いた口を噛み付くように1番近くにいた山本に襲いかかる。が、山本は受け止め、そして気づいた。

「こいつ…既にやられてる!」

山本が受け止めたことで圧迫されたのか体内に溜まっていた血がゴパリと山本に飛び散る。山本以外の犬も全て既に殺されていたようで、獄寺や由良に襲いかかってきた犬も同じように血を噴き出し、ドサリと倒れる。本物のゾンビのようなその姿に恐ろしさを感じる余裕もなく、犬は更に増えて由良たちを襲ってくるので走って逃げた。

「ん?」

ドタバタと走っていったからか地面に負荷がかかり、ミシ、と軋む音が聞こえ、リボーンが疑問を感じる。
直後、地面からかかったびょーんと聞いたことも無い声が聞こえてきた。
と、思えば地面から何かの影が飛び出し、驚きながらも咄嗟に避けた山本が転がった地面からミシリミシリと音がし、次の瞬間

「わぁあああ!!」
「山本!」
「いらっしゃーい!」

突然ガシャーンと大きな音を立てて空いた穴に落ちていく山本。気づいた由良が駆け寄るも早く何かが素早く山本を追うように穴に入っていく。
一瞬のことで訳が分からない様子のツナたちは少し戸惑い、すぐに山本の無事を確認しに穴をのぞき込む。幸い大きな怪我はしていないようだが、山本が落ちた場所は目測で十メートル以上あり、簡単に救出は難しそうだ。しかし当の本人である山本はまいったと笑うだけで、心配して覗き込んだ由良は少し拍子抜けした。

「山本!!右に何かいる!」

と、暗闇の中に動く影に気づいたツナが山本に知らせると同時にグルル、と獣が唸る声が聞こえ、距離がありすぎて助けに行けない状況に緊張が走る。

「ガンゲーすんよ、山本武。」

と、聞こえてきたのは人の声だった。

「柿ピー寝たまんまでさ、命令ねーしやる事ねーし超ヒマだったの。そこにオレのエモノがいらっしゃったんだもんな。」

超ハッピー。
そう言って空いた穴でできた光の下に現れたのは黒曜の制服を着た男子生徒だった。獄寺を襲った黒曜生とは違う人物に、由良は思い出す。そういえば、獄寺を襲ったやつが、山本はケンの獲物と呟いていたような。つまり、今山本の前に現れたのはケンという人間だろう。
それにしては人とは違う、どこか野生的というか、動物的な雰囲気を感じる。
突如現れた黒曜生に驚くツナたちを見上げた彼は、すぐに相手するから首を洗って待っていろと言ってくる。自分が山本を倒すと豪語しているかのような姿にギリ、と歯軋りする由良。完全に下に見られている。そのことに悔しいという感情が胸を占めた。

「ハハハハハ!お前見かけによらず器用なんだな。さっきの死んだ犬の人形、すっげーリアルだったぜ!」

サムズアップして軽快に笑って言う山本に由良の黒曜生への怒りも霧散する。同時に彼らしさを感じ、安心した。
まだ遊びだと思ってる山本にツナや獄寺はそうじゃないと衝撃を受けている様子だが、2人の言葉は山本には届いていない様子だった。
相手の黒曜生も山本の返しに呆気に取られ、しかしすぐに切り替えて山本に襲いかかる。
壁を駆け上がったかと思いきや、そこから膝の屈伸だけで反対側の壁まで回転しながら横断する黒曜生に人間技ではないと驚くツナたち。黒曜生はそのまままっすぐ山本に向かって牙をむけて襲いかかってくるのを山本は咄嗟に持っていたバットで受け止める。

「バットが…!」

しかし黒曜生の咬合力の方が強く、鉄製の山本のバットをバキリと噛み砕かれてしまった。様子を見ていた由良が声を上げ、山本も驚いていた。
そんな彼らの様子をものともせず、次は喉をえぐると宣言した黒曜生に、山本は何かを理解したようで、ふー、と息を深く吐いた。

「なるほど、マフィアごっこっていうのは加減せずに相手をぶっ倒していいんだな。」

そういうルールな。
鋭い目つきになり、黒曜生を見据えた山本は静かに言い、バットを入れていたケースをそこらに放った。
それを見た黒曜生はニッと笑みを深めた。

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