リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的41

獄寺を運んだ先は了平や多くの襲われた並中生がいる並盛中央病院ではなく、並盛中学校の保健室だった。何故と聞くと、これはただの中学生による喧嘩ではないからだと教えられた。それはどういうことなのか。更に詳しく聞こうとしたところで、隼人!と廊下を走ってくるビアンキの姿が見えた。

「なぜ?どーして隼人が入院してるのがここなのよ。」
「ビアンキちゅわーん!」
「よるな!!」

ブショワァと持ってきたお見舞い用の果物からおかしな音と煙が発している籠を持ったビアンキは苛立った表情で、近づいてきたシャマルを蹴り飛ばした。目の前で起こった出来事に近くで見ていた山本、ツナは顔を青くしている。
ビアンキに近づいた由良が病院だと危険だからリボーンが連れてくるよう言ったと説明した。次いでシャマルが男は診ないがベッドは貸してやっていると付け加えた。

「だからいーじゃんおじさんとあそぼーぜ!」
「よくないわ!!」
「ボヘッ!」

シャマルを殴ったビアンキは、そのまま弟の獄寺の看病はつきっきりでするから邪魔するなら出ていけとツナたちに言い放つ。しかし、獄寺とビアンキの関係、獄寺がビアンキを見たらどんな反応をするかを全員知っていたので難しい顔でビアンキを見た。

「ビアンキさん、とにかく私たちにできること、しましょう。私も手伝います。」
「分かったわ。」

場を和ますためか笑った山本に絡んだビアンキに声をかけた由良は見舞いの品を受け取って、近くのテーブルに置いた。
いつの間にか、ツナはいなくなっていた。


ヒートアップしたビアンキが落ち着いた様子を見て、由良はいなくなっていたツナを探そうと保健室を出た。が、すぐ近くにいた。驚いた由良に気づかずにツナは耳を押さえて聞こえない聞こえないー!と言って自分には関係ない!と叫んでどこかへ走り去ってしまった。

「沢田、大丈夫なの?」
「由良か。心配すんな。」

ツナがいなくなってから、ツナと話していたであろうリボーンに尋ねればなんて事ないように言われ、戸惑う。毎度思うが、リボーンが動じなさすぎて逆にこちらが動揺してしまう。

「ツナの心配より、自分の心配しとけ。」

手が震えてるぞ。
指摘され、ピクリと反応してしまった。
初めて見たのだ。あんな酷い怪我。大会で怪我をすることはあっても、たまに遠くから見る不良同士の喧嘩でできる怪我を見ることはあっても、それはどれも遠いもので、身近に起きるものではなかった。加えて、先程対峙した黒曜生。彼は今までの不良とはどこか違う雰囲気があり、どこか恐ろしさを感じていた。

「でも…」

震える手を組んで、ぐっと握った由良はついさっき起きた事を思い出す。
怖くて動けない由良の代わりに動いたのは、今重傷を負っている獄寺だ。咄嗟とはいえ、獄寺はツナだけでなく、由良を守るために体を張ってくれたのだ。そんな彼に対し、由良は恐怖で強ばる体を何とか動かして黒曜生のヨーヨーを防いだ程度で、友人を傷つけられてすぐにヨーヨーを叩き斬った山本よりもちっとも動けなかった。何の役にも立てなかった。
それが一番悔しくて、悲しくて、辛かった。
険しい顔で自分を責めるように考える由良を見てフッと笑ったリボーンは声をかける。

「これからツナたちと敵をやっつけに行くが、由良も来るか?」
「…………行ってもいいの?」

正直まだ自信が無い。
今は動けなかった自分を責めているが、だからといってまた奴と対峙した時、恐怖を断ち切って動けるかどうかはわからなかった。
不安げに聞く由良にリボーンは当然だ、お前はツナのファミリーだからな、と答える。その答えに由良は覚悟を決めるようにぐっと唇を噛み、ふぅ、と短く息を吐いた。

「行く。」
「そんじゃ、1時間後ツナん家集合な。ついでにこれ読んどけ。」
「分かった!」

それじゃあまた!早口に言った由良は荷物を抱えて駆け出した。
向かうは先程行きそびれた道場だ。

「やらないと…!」

恐怖はまだ少しある。リボーンから受け取った紙に書かれていた事を少し読んだが、これが本当なら自分はとんでもないものを相手にしなくてはならないのだとさらに怖くなってしまう。
だが、それを消し去るように首を横に振り、震える手を握りしめて拳に変える。
今日終わらせられれば、明日からまた平和な日常が戻ってくる。またなまえが安心した顔が見られる。
そう思えば、自然と力が湧いてきて、顔の強ばりも解けていった。


道場から無事薙刀を持ってこられた由良がツナの家に行くと、何故か塀の前に張りついている獄寺がいた。

「獄寺?」
「あ?ってお前か…」
「え、何してんの?怪我は?」
「あんなもんかすり傷だ。」

驚き目を丸くする由良は堂々と言う獄寺につっこむことも出来なかった。確かにあの時獄寺は大量出血をして、倒れていたし、こちらの呼び掛けにも反応できないほど意識もない状態だった。今こうして普通に話したり動いたりしているが、かすり傷と言いきれるほどの怪我ではないことは明白だった。
それでも、獄寺は触れるなとばかりにこちらに背を向け、ツナの家を窺っている。
これが、本物なんだ。獄寺の覚悟、意志の強さを感じた由良はそれ以上怪我について触れず、代わりに何をしているのかと聞いた。

「アネキが自分も行くとか言い出してよ…」
「ああ。そういえば、ビアンキさん苦手だったね、アンタ。」
「……………。」

由良の指摘にバツが悪そうに目を逸らす獄寺。別の意味でこんなんで大丈夫か、と不安になる由良は家から出てくるツナを見つけた。

「獄寺君。」
「10代目!」

尊敬するツナに姉を警戒して入れませんでした、とは言えず、素晴らしい門柱に見とれてました!と下手な言い訳をしていたが、ツナは触れることはせず、ビアンキに顔を隠すよう説得したからと言ってきた。感動した獄寺だったが、次にやってきたビアンキがリスの着ぐるみを着た状態で来たため衝撃を受けていた。

「ビアンキさん、それだと動きにくいんじゃ…!雪合戦の時のゴーグルはどうですか?その方が見えやすいでしょうし…」
「それもそうね。」

用意してくるわ、少し待っていて。
由良の言葉に納得したビアンキが家の中に入っていった様子を見たツナと獄寺はホッと安心したように息をついた。

「神崎さん、大丈夫なの?」

不意に、ツナが聞いてきた。由良はなんと答えようか少し考え、微笑んだ。

「大丈夫。事情はリボーンくんから渡された紙を全部読んだから知ってるよ。あの時は全く役に立てなかったから、今度は頑張るね。」
「そっか…頼もしいよ、神崎さんがいてくれると。」
「褒めてもなんも出ないよ。」

こんな状況でなければ手放しで喜べたはずのツナの言葉も、目の前に迫っているだろう敵を嫌でも感じ、緊張感は拭えない。
先にツナの家に来ていた山本も合流し、わいわいと話しているとリボーンが揃ったな、と声をかける。

「骸退治に出発だ!」

その言葉に由良はケースの上から薙刀を強く握った。

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