リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的40

なまえを教室に送り届けた由良、くるみは揃って自分たちの教室に入る。が、いつもなら談笑するクラスメイトたちで賑わうはずが今日は欠席が多いのかチラホラとしか人がおらず、会話する声もヒソヒソとどこか周りを気にしたように小さかった。

「よぉ!」
「!た、武くん!」
「山本…」
「はよ。」

どこか暗い雰囲気の教室に気分も下がりかけていたところに山本がやってきた。状況を理解しているのかいないのか、いつもと変わらない山本の様子に2人はホッと息をついた。

「なぁ聞いたか?昨日の晩の話。」
「聞いた聞いた。風紀委員じゃない生徒も襲われたって話だろ?」
「学年関係なしなんでしょ?」
「明日は我が身じゃない…!怖ー!」

教室のそこかしこからそんな会話が聞こえてくる。聞いてしまった由良は顔を強ばらせ、くるみは悲しげに俯き、山本は神妙な顔つきでクラスを見ていた。
そうしているうちに担任が入ってきて、全員席について出席を取り始めた。が、ほとんど欠席でクラスの半分以上空席の状態だった。ヒバリから聞いた了平の件や、先程話していたクラスメイトの会話で今まで平和だった日常がグラグラと崩壊していっているような感じがして、由良は落ち着かなかった。


結局授業は半日で終わりとなり、クラスメイトたちは皆急ぎ足で教室を出ていく。

「くるみ。」
「あ!た、武くんごめんね!今日急がないとだから!また明日、必ず会おうね!学校で!」
「おう!」

早口に言うくるみはスタスタと早歩きで教室を出ていった。置いていかれた山本を見た由良は近づき声をかける。

「今日ヒバリからなまえのこと頼まれてたからさ。」
「そっか…!俺も今日は部活ないだろうし帰るわ!またな!」
「うん。また明日。」

山本に倣って由良も今日は帰ろうかと思った。
持ってきていた薙刀を抱えて昇降口を出て、ピタリ、と足を止める。
これでいいのだろうか。
朝からずっと、様子のおかしい友人らを見て、胸騒ぎが止まらなかった。更に、授業の途中に来て早々に帰ったツナの様子も気になった。
彼は、遅刻したと思ったら携帯の電池が切れて帰ると言って本当に帰った獄寺が早退したと知るとどこかへ走っていったのだ。ツナの行動を思い出し、考える。

「獄寺を探してるんだったら、喧嘩?でも、笹川先輩も狙われたって………まさか…!」

あってほしくはない最悪の事態を考えてしまい、すぐに首を振るが、そうだとしたら辻褄が合う。

「もしそうなら、急がないと…!」

由良は自宅へ向けていた体をくるりと変え、道場の方へと急いだ。


道場に向かう途中の商店街に着いた頃、少し外れた通りの方から爆発音が数回聞こえてきた。

「………!」

もしかして、獄寺が…?
息を呑んだ由良は恐る恐る音が聞こえた通りの方に足を向け、気づけば走り出していた。

「果てな。」
「ごっ……!」

地面に座り込んでいる獄寺を見た由良は駆け寄ろうとしたが、それよりも早く獄寺が一言告げ、その直後、2人の少し先で複数回爆発が起きた。
よく見れば、獄寺に目立った外傷はなく、何故か背中だけがボロボロだったくらいでピンピンしていた。
対峙していた相手は爆発に巻き込まれたことできっと無事では済まないだろうと分かり、由良は安堵からはぁ、とひとつ大きく息を吐き、獄寺に近づいた。

「結構ヤバかったな。」
「いや今もヤバいでしょ。」
「!神崎…!」

煙草をふかして一息ついている獄寺に未成年なんだからと言うように指摘した由良。突然声をかけられた獄寺は驚いたように由良の名前を呼び、次になんでここに、と睨むようにして言ってくる。

「道場に、薙刀を取りに行こうと思って通りがかったら爆発音がきこえてきたから様子見に。」
「薙刀って…今持ってんだろ。」
「これは練習用。護身だけならいいけど、こうやって無差別に狙われてるんだから少しでも武器の性能上げとこうと思って。」

教室でのクラスメイトたちの会話や途中来てすぐに帰ったツナの様子に不安になった由良は、大会や行事等の特別な時にしか使用しない薙刀の方がまだマシなのではないかと考えていた。いつも練習用に使う今も持っている薙刀は使いやすさはピカイチだが、気合を入れるには少し物足りない。由良はいつも使っている薙刀よりも大会用に用意した別の薙刀の方が本領発揮できるようスイッチが切り替わるタイプで、その薙刀を使って家族を守ろうとしていた。
だが、どうやらその心配は杞憂だったようで、獄寺が難なく狙っていただろう相手をやっつけてしまったので少し拍子抜けしてしまった。

「獄寺君!と、神崎さん?」
「10代目!」
「沢田。」

と、そんなところに慌てた様子のツナがやってきた。由良の時と違い柔らかい雰囲気でどうしてここに!?と聞く獄寺に態度の差よ、とジト目で見る。

「いや、あの……獄寺君が、黒曜中の奴に狙われてるって噂?みたいなのがあって…」
「なっ…そのためにわざわざ!?」

そんな由良に気づくことなくツナは言葉を濁しつつ伝えれば獄寺は嬉しそうに今やっつけたとこっす!!と報告する。どうやらツナは半信半疑だったようで、やっぱり本当だったんだ!!と驚くが、返り討ちにした獄寺にすごいと思い、同時に無事に何とかなりそうだと思いホッと息を吐く。
そこら辺に転がしといたんで、と獄寺が向けた方に同じように由良とツナも顔を向ける。が、

「なっ……いない!?」
「えっ?」
「っ……」

そこに倒れてるはずの黒曜中生がどこにもおらず、3人の間に緊張が走る。獄寺の言葉を聞いた由良は咄嗟に薙刀がいつでも取り出せるようにケースに手をかけ、2人の前に出た。

「手間がはぶけた。」
「っ!」

静かな声が聞こえたかと思えば、獄寺が示したのとは別方向から獄寺のダイナマイトで怪我を負い、血だらけになった黒曜生の姿があった。彼の姿に驚き悲鳴をあげるツナ、息を呑み、固まる由良。唯一動ける獄寺がツナを守るためにダイナマイトを構えながら奴の武器はヨーヨーだと言って気をつけるよう伝えるが、ツナは怖くて動けないと正直に叫ぶ。そんな3人に容赦なく黒曜生がヨーヨーを投げる素振りを見せる。
なんとか視認出来た由良が震える手を無視して薙刀を取り出すより先に、彼女の前に動く影があった。

「10代目、逃げてください…」
「えっ……!?」
「獄、寺…!」

2人の前に出た獄寺は一言言うと、黒曜生からの攻撃に当たった胸辺りから大量の血を吹き出し倒れた。2人が必死に声をかけるも、目を閉じ、苦悶の表情を浮かべるだけで反応を示すことは無かった。
そんな状態でも敵は待ってはくれず、パシッとヨーヨーを受け止めた黒曜生はツナたちに近づき、ボタボタと血を流しながら言った。

「壊してから、連れていく。」
「っ!沢田、獄寺連れて逃げて!」
「神崎さん…!」

でもっ!と渋るツナにいいから早く!と鋭い声を飛ばす。
黒曜生の目線は獄寺や由良ではなく、ずっとツナの方を見ている。先程の言葉もツナに向けて言っていた。つまり、狙いはツナだ。それが分かった由良は恐怖で震える体を無視して取り出した薙刀を構えた。
獄寺が体を張って守ってくれたのだ、自分だってやってやる。そう意気込んで、怪我をしていても涼しい顔をする黒曜生が放つヨーヨーがこちらに飛んでくるのをよく見て、薙刀を振り払う。
キンッと高い音と同時に軌道を変えられたヨーヨーがフワリと舞う。

「!」
「神崎さん!」

直後、ヨーヨーから無数の針が飛び、由良、そして近くにいたツナに迫ってくる。せめてツナだけでも、と動こうとした由良の腕を何かがつかみ、次の瞬間、体が倒されていた。

「フーーッ…滑り込みセーフってとこだな!」

そこにいたのは下校途中といった様子の山本で、由良の腕を掴んだのも、体を倒したのも山本だった。お陰で無数の針から逃れられた。
山本に同じように助けられたツナは嬉しそうに、安心したように名前を呼び、由良は帰ったんじゃ、と声をかける。山本はそれに同意し、途中通りかかったら並中生がケンカをしてると聞き、獄寺ではないかと思って来たらしい。
山本の話にハッとしたツナが獄寺君が!と話そうとするのを山本の硬い声が分かってる、と遮った。

「こいつぁ………おだやかじゃねーな。」
「…………。」

いつも笑顔で滅多に怒らない山本の険しい表情に息を呑む。さすがの山本も怒り心頭と言った様子だった。

「邪魔だ。」

山本が睨んだ黒曜生が再びヨーヨーを投げつけるが、山本は何故か持っていた山本のバットで叩き斬った。切られた相手はなにかに気づいたような素振りをして、持っていた眼鏡をかけた。

「そうか…お前は並盛中学2-A出席番号15番、山本武…」

確認するように言う黒曜生に険しい表情のままだったらなんだと返せば、黒曜生はお前はケンの獲物、と意味深な言葉を残し、ずるずると足を引きずりながら帰って行った。直後、お巡りさんこっちです!と遠くから聞こえてきた。

「獄寺!しっかりして!」
「獄寺君大丈夫!?」
「獄寺!」

黒曜生が去っていったのを確認した3人は慌てて獄寺に駆け寄り、声をかけるが、彼は目を閉じたまま反応がない。病院に、と山本が獄寺を背負って行こうとすると、突如として現れたリボーンが待ったをかける。

「獄寺は病院よりも安全な場所に入院させるぞ。」

ついてこいと言ったリボーンに3人は顔を見合わせ、すぐに追いかけた。

「……………。」

何も、できなかった。
向かう道すがら、由良は未だ震える手を握りしめ、唇を噛んだ。

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