リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的38

夕飯を食べ終わり、歯磨きもお風呂も済ませ、髪まで乾かしたなまえは自分で自分を褒めながら冷房の効いた部屋の布団でゴロゴロとスマホをいじっていた。彼女の習慣になっている、ゲーム前の諸連絡確認だ。通知を切る前に一度連絡が来ていないか確認する彼女は一通り確認し終わり設定メニューで通知を切ろうと画面を開いた。

「わっ!」

途端震えて着信音が鳴り響くスマホに驚き声を上げつつ、バクバクなる心臓を押さえながら通話ボタンをスライドさせる。

「ちゃおっス、なまえ。暇か?」
「り、リボーンくん…」

何処ぞの課長みたいなセリフを言ってかけてきたのはリボーンだ。赤ん坊の彼はこんな時間まで起きていていいのだろうか、疑問に思うが答えてくれるとは思えずどうしたの?と聞いてみる。すると、返ってきたのは今から並盛墓地に集合な、という言葉だけで、いや今夜なんだけど、という返しも無視したリボーンは迎えを寄越すから支度して待っとけ、とだけ言うと通話を切ってしまった。

「えぇ〜…」

話についていけず、通話終了の画面を呆然と見るなまえはひとまず着替えようと寝間着から外出用の服に着替えた。


リボーンが言った迎えとはツナだったようで、家のインターホンが鳴った時は驚いた。両親がどちらも近所の親戚の家に行っていて助かった。ゲームがしたかったなまえだけ先に帰っていて本当に助かった。
一応メールとトークアプリに友達と少し話してくると連絡を入れ、ツナと共に並盛墓地に向かった。その道中で詳しい話を聞けば、なんと肝試しをするという。帰ると言うなまえだが、ツナの力が思いの外強く、結局墓地に到着してしまった。

「帰りたい。」
「でもほら!皆いるって言ってたし!」

灯りのある街や住宅街と比べ、街灯も何も無い墓地は真っ暗で、既にツナもなまえも怯えて腰が引けている。それでも気丈に振舞おうとするツナに少し頼もしさを感じたなまえはちょっとだけ頑張ってみようかな、と思い出した。

「ばぶ。」
「ぎゃああああ!」
「きゃああああ!」

が、それも一瞬で過ぎ去り、突然暗がりの中に現れた顔の下から懐中電灯で照らし出したリボーンに悲鳴を上げた。咄嗟にツナの背に隠れるようにピタリとくっついたなまえはツナとリボーンのやり取りも聞こえていないようで、涙を目にうかべてプルプルと震えている。

「みょうじさんっ!」
「ひっ!!」
「大丈夫?」
「あ…」

暫くしてツナから声をかけられたなまえは涙目で心配そうな顔のツナを見て、ようやく頭が理解し始めた。
どうやら、ツナ、ランボと一緒に矢印の方向に従って墓地を回ってゴールすればいいらしい。ただし使えるのは1本のロウソクの火だけで、スマホのライトなどは使えない。

「地獄…」
「や、やめてよ。怖いこと言うの…」
「ごめん…」

条件が厳しすぎるとポツリと零した一言に過剰に反応するツナ、ランボ。怖がりな3人組で進む足は遅く、静寂な中で聞こえてくる小さな物音ですらビクリと肩を震わせ、立ち止まってしまう。

「2人とも、一気に走って終わらせよう!」

ツナの提案にコクコクと何度も頷いて賛同したランボ、なまえはツナの合図に合わせて必死に走る。墓地で走るなど罰当たりな、と普段ならば思うが、この状況下ではそんな事言ってられない。
いつもの体力のなさ、運動神経のなさはどこへやら、なまえは息切れこそすれ、ツナにしっかりついて行った。
すると、前方に前のペアだろう獄寺とイーピンの姿が見えた。よかった、頼りになる人がいた!安心感から笑顔を取り戻したツナたちは獄寺に声をかける。

「はい。」
「っ!」
「なんすか?」
「出たぁああああ!!」
「ひゃぁあああああ!」

しかし振り返った獄寺の顔はつるんとしていて、目や鼻、口といったものが一切ついていなかった。驚いて尻もちをつくツナとツナに抱きついて悲鳴をあげるなまえ。ランボは恐怖で気絶してしまった。

「よっしゃ!」
「!」

と、そんな獄寺の後ろの方でしっかり顔がある獄寺が釣竿のようなものを持った状態で喜びの声を上げていた。獄寺はそのままやってな、イーピンと言うと、顔がない方の獄寺の顔部分からイーピンが現れた。
驚くツナに獄寺は嬉しそうに駆け寄り、何をしているのか説明した。なんでも、最初はベアで墓地を回るだけだったが、京子たち女子組がおどかす側をやりたがり、おどかす側とおどろかされる側で分かれることになった。しかし、おどかす側希望が多く、おどろかされる側はツナ、なまえ、ランボだけになってしまっていたらしい。
聞いたツナはみんな待ち伏せているのかと分かり、軽やかに同意した獄寺は失礼します!と言って去っていった。

「そんな!ちょっと待ってよ!獄寺君!」

獄寺を呼び止めるツナだったが、獄寺はそのままいなくなってしまい、どうしよう!と頭を抱える。ランボは気を失ってしまい、なまえは自身の背中に引っ付いて震えている状態だ。しかしツナとて怖いものは怖いのだ。もしこの状況でまた驚かされたら、と思うとゾッとする。

「!」

と、どこからかカランコロンと下駄の音が聞こえてきた。次のおどかし役が来たようで、ツナは知り合いだから大丈夫、落ち着けと恐る恐る振り返ると、べー!と舌を出した傘の妖怪に扮した京子がいた。可愛らしいおどかし方に安堵したツナは可愛い!とツッコミを入れ、更に反対方向から来たハルも可愛らしく作られたなまはげの着ぐるみを身に纏い、泣く子はいねがー!と叫んでいた。
2人の声に気づいたなまえも顔を上げ、お化けに扮した可愛い2人を見て少し和んで、ツナと怖がるフリでもしてみようか?と話した。
すると、とんとん、とツナの肩を叩く手があり、振り返ったツナ、釣られて見たなまえの傍には眉間に釘が刺さり、口元や鼻付近の皮が剥げて肉が見え、片目が充血し、片目からは蛇のようなものが飛び出て動いている顔のビアンキがいた。

「ほぎゃー!!」
「きゃあああああ!!」

至近距離で見てしまったツナたちは悲鳴をあげ、ツナはホントに出た!と言ってどこからそんな能力があるのか、普段では考えられないほどの速さで走っていってしまった。ツナの背中の服を緩く掴んでいたなまえはその拍子にツナの服から手が離れてしまい、一拍遅れて追いかける。

「待って沢田くん!置いていかないでぇ…!」

悲鳴をあげながら逃げるツナと、半泣き状態で情けない声で追いかけるなまえに看板に書かれた矢印を識別する余裕などなく、2人ともルートから外れた方に走っていってしまった。

「ツナ!みょうじ!そっちじゃねーぞ!」

気づいた山本が声をかけるが、聞こえていない2人はそのまま暗がりの中に消えていってしまった。

「どーしたのだ!?」
「あれ?なまえは?」
「行っちまった…」
「ありゃあ〜…」

それぞれおどかすために仮装した了平、由良、くるみも顔を出し、2人が去っていった方向を見る。
くるみは徐に携帯を取り出し、ポチポチと操作し始め、心配そうになまえ達が去っていった方向を見る由良に大丈夫だよ!と声をかけた。


ツナの後を追いかけていたなまえだが、とうとう体力が限界を迎え、立ち止まってしまい、そのせいでツナとはぐれてしまった。おまけに我武者羅に逃げていたのでここがどこだかさっぱり分からない。更に言うと、ロウソクはツナが持っていたので、手元には明かりもない。
完全に迷子となってしまったなまえは暗い墓地の中で1人心細くなり、その場にしゃがみこんだ。

「ひっ!」

不意にどこからかバサバサッと鳥が羽ばたく音が聞こえ、肩をびくつかせる。そのまま耳を押え、目を閉じたナマエは恐怖で呼吸が浅くなり、恐怖がピークに達したのか遂に泣き出してしまった。

「うぅ〜…誰かぁ…由良、くるみちゃん…沢田くん…」

情けない声で友人らの名前を呼ぶが、返ってくるのはシンとした静寂だけで、望んだ友人らの声は聞こえないし、気配も感じない。
その事実に一層恐怖が増し、涙は止まらない。

「ヒバリさぁん……ひっ!」

思いついたこの世界で最強とされる存在の、自分にとってかけがえのないヒバリの名前を呼んだ時、いきなり耳を押えていた腕を掴まれた。悲鳴を上げ、体を強ばらせるナマエよりも強い力でグッと手を耳から離されたなまえの耳に、自分以外の声が聞こえてくる。

「みょうじなまえ。何してるの、こんな所で。」
「!」

思いもよらぬ声にパッと目を開け、顔を上げたなまえの目に、呆れたような、どこか不機嫌なような表情をしたヒバリが映る。ヒ、バリ、さん。小さく呼ぶなまえにヒバリは答えないが、それがヒバリだと分かる反応で、安心したなまえはぶわりと目から涙を溢れ出し、ヒバリさぁん!と情けない声で泣き出した。

「何してるのか聞いてるんだけど。」
「肝っ試しっ、来ててっ、でもっ、皆っ、お化け役やっててっ…ビックリしてっ…そしたらっ、はぐれてぇ…!!」
「はぁ…」

手を掴まれているため、ボロボロと流れる涙を拭うことも出来ないなまえはしゃくりあげながらなんとか説明する。要領を得ない説明ではあるが、粗方状況を把握したヒバリは溜息をひとつついて、掴んでいた手を離し、そのままなまえの目尻を拭うように顔に添える。

「っ!」
「泣くか喋るかどっちかにしなよ。」
「ごめっ、なさっ…」
「喋るな。」
「っ…」

言葉は厳しいが、ヒバリの手は酷く優しいもので、驚きと恥ずかしさで涙が止まる。その様子を見ていたヒバリは止まったからか手を離し、なまえに合わせてしゃがんでいた体勢を変え、立ち上がる。そのままスタスタとどこかに歩く背中はいつか見た時と同じで、少し進んでからピタリと止まったヒバリは振り返り、早くと急かしてくる。
ヒバリの言葉の意図を察したなまえははいっ!と答えて立ち上がり、パタパタとヒバリに駆け寄った。

「ヒバリさん。」

暫く歩いてヒバリを呼んだなまえは先程までの恐怖を一切感じておらず、落ち着いた様子で話せた。

「ありがとうございます。」

心の底から安心したように微笑んでこちらを見て言うなまえをチラリと目だけで見たヒバリは、返事をすることなく視線を戻した。暗がりでも何故かヒバリの動きを見られたなまえは嬉しそうに微笑んだまま、前を向いた。
2人はそのままなまえの家に向かい、なまえは無事家に帰ることが出来た。

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