リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的32

桜が満開と予報された今日、花見の場所取りの為に並盛中央公園に向かっていたツナ、獄寺、山本、由良は先に来て花見を1人で楽しんでいたヒバリ、その傍で同じように花見を楽しんでいたくるみ、なまえと出会した。憧れている人、最推しの人と空間を共有していたという事実に色んな意味で死んでしまいそうな心地でいたなまえは由良に抱きつき、心の落ち着きを取り戻していた。そんな彼女たちを横目にツナはくるみに何をしているのか聞けば、ヒバリの行動を熟知していたためいい場所を貸してもらっていたとのこと。

「じゃあヒバリさんとお花見を!?」
「うん!なまえちゃんのお願い聞いてくれたんだ!私だけだったら出来なかったよ〜。」

あはは!と朗らかに笑うくるみになんでみょうじさん?と不思議に思いつつ、やっぱり幼なじみだから度胸あるなぁ、とくるみに対して思うツナ。そんな彼らに今度はくるみから何をしているのか聞かれたので花見の場所取りに来たことを説明する。

「………………。」

ツナたちが来たことでくるみ、なまえが群れだし、更になまえが一目散に由良のもとに向かったことに腹を立てたヒバリはトンファーを構え直し、全員噛み殺そうと動いた。

「いやー絶景絶景!花見ってのはいいねぇ〜。」

と、その時、別の方から第三者の声が聞こえてきた。見ると片手にワイン瓶を持ち、顔を赤くした白衣姿の男、基並盛中養護教諭になったDr.シャマルがいた。瓶の中にはまだワインが入っていたようで、シャマルの動きにちゃぷんと中身が揺れていた。
突然の彼の登場に驚きの声を上げるツナ。幼い頃会っていた獄寺は帰れと吠える。
そんな彼らの反応には目もくれず、シャマルはツナの近くにいた由良、なまえを目に留める。

「Ciao!由良ちゃん!」
「どうも…」
「と、そこのかわい子ちゃんはお友達かな?こんなむっさい男共よりも俺と一緒にお花見しよーよ!」
「!………え、遠慮しておきます…」

名簿を見たのか何故か名前を知られていた由良は体育祭での出来事が思い起こされ、なまえを撫でる手が微かに震えているが、気取られまいと平然を装って一言返した。そんな由良に抱きついていたなまえは友人の僅かな変化にいち早く気づき、体育祭で様子のおかしかった彼女を思い返し、由良に何かしたのであろうシャマルから守るようにギュッと抱きしめる力を込め、彼からの誘いを断った。
シャマルはそんな2人、特に以前怯えさせてしまった由良を見て内心決まり悪くなり、それ以上しつこく誘うことはせずにちえ〜とおどけた様子で視線を逸らした。逸らしたその先にはヒバリの近くにいたくるみが立っていて、今度は彼女に近づいた。

「キミもカワイイね〜!おじさんと2人っきりでお花見しなーい?」
「えっ…?」

突然声をかけられたくるみは戸惑い、しかしなまえや由良の様子を見て断ろうとした。

「きゃっ…」
「わりぃーなオッサン、川崎は俺らと花見するって約束してたんだ!」
「や、山本くんっ…!」
「消えろ。」
「のへー!」
「ヒバリさんっ…!?」

くるみより早く動き、彼女を自分の方へ引っ張った山本がニカッと人好きのする笑顔を浮かべながら、しかし決してくるみは渡さないという雰囲気で言う。
更に、少し青冷めた顔で友人を守るべく前に出るようにしているなまえを見ていたヒバリが理由の分からない不快さにムシャクシャし、原因のシャマルをトンファーで殴り倒した。
急に山本に引っ張られ、自信を守るように行動する彼にくるみは嬉しさと恥ずかしさで顔を赤らめる。なまえは結果として助けてくれた行動を取ったヒバリに嬉しさで安堵し、すぐにいずれ彼がこの出来事で危険に陥ることになることを思い出し、思わず名前を呼んだ。
そして、まだ苛立ちが収まらない様子のヒバリに近づく小さな影がひとつ。

「ちゃおっス、ヒバリ。」
「赤ん坊。」
「リボーン!」

数多の死線を乗り越え、滅多な事では動じない、怖いものなどないとされるリボーンだ。リボーンは苛立つヒバリに臆することなくツナの名前を出して花見の場所取りの為に勝負をすると言い出した。当然抗議するツナだが聞き入れられず、何故かツナ、獄寺、山本、そしてくるみの4人とサシで勝負し、膝をついたら負けというルールでヒバリと対決することになってしまった。

「私は?」
「君を入れればみょうじなまえがうるさそうだ。」
「えっ…?」
「大丈夫!2人の分まで私が頑張るね!」

ヒバリならば薙刀の大会で良い成績を収める由良も数に入れると思っていた由良が不思議そうに聞けば、突如なまえを引き合いに出され、納得できないままくるみが話しかけてきた。
そんなくるみにお願いと声をかけているところで、てめーだけはぶっとばす!と突っ込む獄寺がトップバッターとなり、ヒバリとの勝負が始まった。

「いつもまっすぐだね、分かりやすい。」

静かに言い放つヒバリの攻撃を避けた獄寺は導火線に火をつけたダイナマイトをヒバリの周りに浮かせるように放る。獄寺の新技、ボムスプレッズである。ダイナマイトそのままは次々と爆発し、ヒバリはモロに爆発に巻き込まれた。と、思いきや、トンファーを振るって爆風を払い、無傷の状態を驚く獄寺に襲いかかる。咄嗟に避けようとした獄寺は膝をついてしまい、これで攻撃が緩むかと思いきや、ヒバリは慈悲などないと言わんばかりにトンファーを振り下ろした。

「!」
「次、俺な。」

キィン!と甲高い音が響き、ヒバリのトンファーをどこから取り出したのか刀に変わる山本のバットを刀に変えた山本が受け止め、軽快な様子で言う。受け止めた山本に驚いた様子のヒバリはこれならやりあえそうだな、と言う山本を休みなく攻撃する。山本はそれらを持ち前の動体視力と反射神経を使って全て刀で防ぎきり、確かに本人が言うようにやりあっているように見えた。

「僕の武器にはまだ秘密があってね。」

ニッと笑って淡々と話すヒバリの秘密という単語に疑問に思う暇もなく、突如トンファーから飛び出した仕込み鈎が受け止めていた刀に引っかかり、山本はそのままトンファーの餌食になり、滑り込んでしまった。しかしヒバリは攻撃の勢いを止めることなく倒れる山本にトンファーを振り下ろそうとした。

「油っ断大敵!」

山本を庇うように振り下ろされたトンファーを蹴り上げ、その反動でヒバリを退けたのは幼なじみのくるみだ。

「くるみ、コイツは返すぞ。使ってみろ。」
「リボーンくんありがと!」

以前預けた己の武器である拳銃を受け取り、いつでも撃てるように構える。ヒバリは面白そうにへぇ、と笑い、トンファーを振りかぶってくる。

「あっぶない!」
「赤ん坊に改造でも頼んだの?興味あるな。」
「音静かにしてもらっただけ!それ以外は恭弥くんだって知ってるよ!」

武器を握っていて両手が塞がっているにも関わらず、くるみはものともせず膝をつくことなく避けていく。少し楽しげに話すヒバリに避けつつ返し、後ろに跳躍したくるみは銃を構え、ヒバリの足下を狙って撃った。

「なまえちゃんっ!音うるさくなぁい!?」
「だ、大丈夫!」

パンッパンッと小気味良い音が響き、それは以前までの大きさが大分軽減されたものだった。これなら、となまえに聞けば、彼女は耳を押えることなく答えていて、問題が解決したとくるみは喜んだ。
しかし、余所見をしてしまったからか、撃たれた弾を難なくかわしたヒバリがトンファーを払うように振るってきた。

「わっ…ぁあっ!」

避けようとしたくるみはしゃがみこみ、膝と手をついてしまったため、負けとなってしまった。
これで残るはツナのみとなり、すかさずリボーンが死ぬ気弾を額に撃ち込んだ。

「リ・ボーン!死ぬ気でヒバリを倒す!!」

パンツ姿で強く意気込んだツナはハタキに形を変えたレオンを手にしてヒバリのトンファーとやりあう。互角かと思われたその攻防も、ツナの死ぬ気モードの制限時間である5分が終わり、通常の気弱な姿に戻ると均衡も崩れ、ヒバリの容赦ない攻撃がツナを襲ってくる。

「!ヒバリが…!」
「ヒバリさん…!」

待ってと言う間もなくツナに襲いかかってきたヒバリだったが、ツナに攻撃をする前に膝をついていた。それは誰もが予期せぬことで、ヒバリ自身驚きに目を見開いていた。
どういうことか、ツナが火事場の馬鹿力の様なもので勝ったのか、皆が不思議がる中リボーンは奴の仕業だとシャマルを指差す。

「おー痛。ハンサムフェイスに傷がついたらどうしてくれんだい。」
「シャマルは殴られた瞬間にヒバリにトライデント・モスキートを発動させてたんだ。」

トライデント・モスキート。シャマルが自身の体にかかっている333対の不治の病を1つずつ持つ蚊を操って相手をしに至らしめる彼の殺しの技だ。数々の死線を乗り越えてきた彼は酔っ払っていようと反射で出来てしまうので、ヒバリは気づかぬうちにシャマルに攻撃されていたのだ。
そんなヒバリがかかった病気は桜クラ病で、桜に囲まれると立っていられない症状が出るものだった。フラつくヒバリはそれでも立ち上がり、トンファーをしまう。

「約束は約束だ。せいぜい桜を楽しめばいいさ。」
「っ…ヒバリさんっ…!」

苦しげにそう言い残したヒバリは、自身を呼び止め、しかし何も言わない辛そうな表情のなまえを一瞥し、フラフラしながら去っていった。
思わず呼び止めたなまえはそんなヒバリの小さくなる背中を見ることしか出来なかった。


無事ヒバリとの勝負に勝ち、良い花見場所を確保出来たツナたちは後から来た京子たちとお花見を楽しんでいた。そんな中、酔っ払いながらもどこか真剣な顔つきのシャマルが由良に声をかけた。

「この前は怖がらせてごめんな。まさかあそこまで怖がるとは思わなかった、つーか…」
「………………いえ。私も動転してしまっていたから、こちらこそ、酷い態度を取ってしまってすみませんでした。」

シャマルの誠心誠意謝る姿に、あそこまで怖がる必要はなかったかもしれない、そう思った由良は眉尻を下げ、穏やかな気持ちで微笑んだ。きっと、今度はシャマルに会ったとしても怖がることなく接することが出来るだろう。そんな確信めいた考えが由良にはあった。


京子たちと会話を楽しみ、子供たちと時にじゃれていたくるみは頃合いを見て席を外した。

「や、山本くん。」
「ん?」

自分から話しかけるというのは滅多にしない為、少し緊張しながら名前を呼べば、すぐに反応を示してくれた山本に、少し寂しい気持ちを感じて慌てて打ち消した。少し間を空けて隣に座り、赤くなる顔を気にしないようにして話し出す。

「あの、さっきはありがとう。」
「さっき?」
「ほら、あの、シャマル先生が話しかけてきた時の…」
「ああ!」

合点がいった様子の山本にもう一度本当にありがとう、助かったと伝えれば、山本は歯切れ悪くいや、と答える。

「あの時は体が勝手に動いたっつーか、俺が嫌だなって思ったからやっちまったことで、助けようって感じでやったわけじゃないんだ。ごめんな。腕急に引っ張っちまって、大丈夫だったか?」
「ぜ、全然!大丈夫!」

思わぬ山本の言葉に嬉しくて弾んでしまう気持ちを必死に押し留めて首と手を振って答えるくるみにそっか!と笑って答える山本は無自覚だ。

「それにしても、川崎って結構強いのな。ヒバリと互角に渡り合える奴ってそうそういねーぜ。」
「幼なじみだからかなっ?」
「あの時は助けてくれてありがとな!俺ももっと強くならないとな…」
「や、山本くんは充分努力してるよ!」

くるみの励ましにありがとなと答えるものの、元来の負けず嫌いな性格が出て表情は固い。そんな彼に何か励ませないかと考え、声をかける。

「山本くん、恭弥くんと会った時は気絶させられちゃったでしょ?でも、今は気絶せずにいられてる。これって充分成長してるってことじゃないかな?」
「………川崎。」
「前も言ったけど、山本くんだって躓いたりする時はあるよ。それが人間なんだもの、当たり前だよ。だから、思いつめないで。辛かったら、私、聞くよ。」

恥ずかしくて顔を見ることは出来なかったが、聞いていた山本の空気が少し穏やかなものに変わった。

「ありがとな!川崎。」
「う、うん!」

いつもの明るい笑顔に戻った山本に嬉しくなってくるみも笑顔で返した。
そんな彼女の笑顔にどくり、と山本の心臓が強く脈打った。

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